「世界最小の表紙」を作る技術でデータ分析が高速化する?ナノサイズの彫刻

塩粒以下のサイズで雑誌の表紙を制作できると、いずれデータ分析を高速化できる? IBM Researchが今年も面白い成果を発表している。

» 2014年04月28日 16時22分 公開
[鈴木聖子,@IT ]

 米IBMは2014年4月25日、子供向けの米科学雑誌『National Geographic Kids』がIBMの技術を使ってナノサイズの表紙を制作し、ギネス・ワールド・レコーズで「世界最小の雑誌の表紙」に認定されたと発表した。この表紙は米首都ワシントンで開かれた科学工学フェスティバルで26〜27日の両日、顕微鏡を使ってIBMなどのブースで披露された。

左がNational Geographic Kidsの表紙、右がIBMが制作したナノサイズの表紙。実際には11×14μメートルサイズだ

 発表によると、IBMではセ氏1000度まで加熱できるナノサイズのシリコンチップをカンチレバーの先端に取り付けて、鉛筆の先端の10万分の1の大きさの「彫刻刀」を開発。熱と力を加えることでポリマーの表面の基板物質を削り取り、パターンを描けるようにした。蒸着させる物質の量をコントロールすれば、3Dプリンタのような複雑な3Dパターンを、ナノサイズで作り出すことが可能だという。SwissLitho社と共同で制作している。

 National Geographic Kidsはこのチップを使ってポリマー上に極小のパターンを描き、2014年3月号の表紙のミニチュア版を制作した。出来上がった表紙の大きさは11×14μメートル。これは、塩粒1つに2000枚を収められる大きさだという。

 IBMがこうした研究に投資する理由は、電界効果トランジスタ(Field effect transistor:FET)の開発にこの技術が利用できるためだ。半導体の設計・製造技術を高めることで、クラウド環境のエネルギー効率向上やビッグデータ分析の高速化に役立てることが目的だ。年内にはグラフェンのような素材を使ってトランジスタデザインのプロトタイプを開発する研究に着手する予定だという。

制作メンバー。右からSwissLitho社のSimon Bonanni氏、IBMのMichal Zientek氏、Armin Knoll氏、Colin Rawlings氏(IBM Researchのflickr投稿画像より)

 National Geographic Kidsはこれまでにも、「世界最長の足跡の列」「世界最大の縫いぐるみのコレクション」「世界最長の靴の鎖」など8分野で世界一のタイトルを獲得していた。

 IBM Researchは、2013年には「世界最小の映画」を公開して話題を呼んでいた。

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