サイバーエージェントが次世代ネットワークにCisco ACIを選んだ理由「Cisco Data Center Forum 2014」リポート(1/2 ページ)

シスコがSoftware-Defined Networking(SDN)ではなく、Application Centric Infrastructure(ACI)によるデータセンター改革に取り組む理由と、サイバーエージェントがACIを採用した理由とは何か?

» 2014年04月28日 18時00分 公開
[齋藤公二インサイト]

 シスコシステムズ(以下、シスコ)は4月16日、次世代データセンター向けソリューションを紹介するイベント「Cisco Data Center Forum 2014」を開催。3月に発表したクラウド連携基盤「InterCloud」の最新動向や、ネットワークをポリシーベースで管理するアーキテクチャ「Application Centric Infrastructure(ACI)」を解説した。

 最終セッションでは、ACIのユーザー事例としてサイバーエージェントの担当者が登壇。「ACIを知ったとき、これしかないと思った」と明かし、同社がSoftware-Defined Networkingソリューションではなく、ACIによるデータセンター改革に取り組む理由を明かした。

参考リンク

企業とパートナーが作る世界最大のクラウド「InterCloud」

 フォーラムではまず、米シスコシステムズの開発・セールス担当プレジデント、ロバート・ロイド(Robert Lloyd)氏が、「シスコのデータセンタービジョン」と題し、現在のクラウドをめぐる状況や、3月に発表したInterCloudの最新動向を紹介した。シスコのクラウドサービスに対する取り組みは、WebExのWeb会議をはじめ、ビデオコラボレーション、Merakiのネットワーク管理やWiFiソリューション、統合型製品UCS(Unified Computing System)、セキュリティ、仮想デスクトップなど多岐にわたっている。

ALT 米シスコシステムズの開発・セールス担当プレジデント、ロバート・ロイド(Robert Lloyd)氏

 「われわれが提供するクラウドサービスの他にも、企業が独自に作るプライベートクラウド、Microsoftなどのパートナーが提供するパートナークラウド、AWSなどが提供するパブリッククラウドなどがある。シスコでは、こうしたさまざまなクラウドが連携した環境をハイブリッドクラウドと呼んでいる。それを実現していくのがInterCloudだ」(ロイド氏)

 InterCloudは、さまざまなクラウドサービスをAPIで連携させるためのOpenStackベースのプラットフォームだ。シスコのクラウドサービスを中心にするというより、プロバイダーと協力しながら、パートナーやユーザーがコラボレーションを行うための基盤「InterCloud Fabric」として提供する。データそのものは自社内や国内にとどめながら、世界各国のクラウドと連携することができるようになるという。

 「世界最大のクラウドとなることを目指している。70〜80カ国から500〜600のパートナーが参加するバートナー中心のクラウドモデルだ。特徴は、ベンダーによる囲い込みが無いこと、あらゆるハイパーバイザーから接続できるようになること、エンドツーエンドのセキュリティが提供されること、統合されたワークロード管理とガバナンスが可能なことなどだ」(ロイド氏)

ALT シスコが考えるクラウド環境の進化

 構成としては、ユーザーのクラウド環境からは「InterCloud Fabric Business Edition」を経由して、EC2 APIを使ってAWSと連携したり、AzureのAPIを使ってMicrosoft Azureと連携したりする形となる。さらに、クラウドプロバイダーやシスコのクラウドサービスと連携する場合は「InterCloudプロバイダー向けプラットフォーム」を経由することになるという。

インフラ全体を統合管理する新しいアプローチ「Cisco ACI」

 続いて、グローバルデータセンター/バーチャライゼーションセールス シニアバイスプレジデントのフランク・パロンボ(Frank Palumbo)氏が登壇。発売から5周年を迎えたUCSの実績やCisco ACIを解説した。UCSの実績としては、すでに3万社以上に採用され、x86ブレードの世界シェアでは2位、データセンター関連の年間売上で20億ドル以上を稼ぐ主力製品に成長した。競合のx86サーバー事業が軒並み売上を落とす中、唯一、前年比増を遂げたという。

ALT 米シスコシステムズ シニアバイスプレジデントのフランク・パロンボ(Frank Palumbo)氏

 「5年前にコンバージドインフラストラクチャを投入し、他社が追随した。5年先を行っていたということだ。なぜわれわれが市場で勝てたか。それは、ビジネスのアウトカムを示し、ビジネスの価値を変えてきたからだ」(パロンボ氏)

 UCS新製品としては、オールフラッシュを採用したInvictaを4月末から日本で発売することも紹介した。Invictaはデータの高速化と増加という要求に対応するものだという。

 また、データセンター管理の次の進化となるのが、Cisco ACIだ。ACIは、物理、仮想、ソフトウェア、ハードウェアを問わず、ネットワークインフラ全体を統合的に管理するための新しいアプローチを採用する。ACIを構成するのは、APIC(Cisco Application Policy Infrastructure Controller)と呼ばれるポリシーコントローラーと、ポリシーを適用してネットワークを管理するためのNexus 9000スイッチ。また、多数のパートナーと連携して、ファイアウォールやロードバランサーなど、L4〜L7のサービスについてもAPICから管理できるのも特徴だ。

 「マルチプラットフォーム、マルチハイパーバイザーで、イーサネットにつながる環境であれば、AIXやSPARC、メインフレームもベアメタル(物理環境)も管理対象になる。ポリシーの設定と展開をインフラに任せることができるので、シンプルに安全にインフラ全体を管理できるようになる」(パロンボ氏)

 具体的には、ポリシーを「アプリケーションネットワークプロファイル」として設定しておき、プロファイルを書き換えることでインフラ全体を管理する。ポリシーコントローラーは分散しており、ソフトウェアによるオーバーレイと違って、遅延がなく、容易にスケールさせることができるという。

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