官公庁による活動が目立つオープンデータ。実は、一般企業でも面白い展開が考えられる。活用の可能性、検討時の留意点を整理しておこう。
前回の記事では、オープンデータがどのようなものか、何を目指していてどんな可能性があるのかを俯瞰してきました。
オープンデータは政府だけのものではなく、企業も含めた大きなビジネスのトレンドです。そこで、企業活動に与える影響や、取り組む際の留意点などについて解説します。
オープンデータが企業活動に与える影響は大きく2つあります。1つは、前回の記事にもあったように、政府などからオープンデータとして公開されるデータを活用し、自らの事業やサービスを高度化することです。もう1つは、企業自らがオープンデータ化を推進することで、ビジネスや事業の展開や強化を図ることです。
実は、後者はオープンデータというキーワードで語られることは少ないのですが、非常に重要であり、ここでは後者にフォーカスして述べたいと思います。
企業が自社の保有するデータをオープンデータとして公開する目的は、
の3つに分類できます。
以下、それぞれについて事例を交えて具体的に紹介します。
データが蓄積されていても、それを最大限に生かせるような解析技術が自社内にあるとは限りません。そのような中、データを公開し、外部で解析技術を募るようなイノベーションが以前から取り組まれています。もっとも有名な事例としては、カナダの鉱山会社であるGoldcorp、米国のレンタルビデオチェーンであるNetflixなどが挙げられます。
倒産の危機に瀕していたGoldcorpでは2000年3月、保有する鉱山、約5500エーカー(東京ドーム約480個)分の緯度経度、深さなどの地質データ約400MBを自社Webサイトで公開し、「Goldcorp challenge」として、賞金/賞品を設定し、金の採掘場所を公募しました。
この公募情報はすぐに世界中に広まり、公募期間中のWebサイトアクセス総数は約47万5000件に上りました。結果として、52チームから110の提案があり、提案に基づき採掘したところ、1996年と比べ2001年の産出量は約851%増加、コストは約84%削減されました。地質学者だけでなく数学者やコンサルタントなど、さまざまな人々から技術を活用したことで、採掘技術や採掘場所探索の効率化が促進されたと考えられます。
昨今では、オープンデータによる技術開発コンテストなどを支援するWebサイトも立ち上がっています。例えば、データサイエンティストのコミュニティ「Kaggle」、まざまなコンテストを主催している非営利財団「XPRIZE」のようなサイトなどです。
2010年設立の米Kaggleは企業の依頼により技術開発コンテストを提供し、企業と技術者を結び付けています。企業は手数料と賞金を準備して、機械判読可能なデータを提供することで、さまざまな専門性を持つ人々の技術を安く得ています。
また、SNSアカウントで参加可能という手軽さやランキングによる結果の明確性などは技術者の魅力となり、登録者は2014年7月22日現在、約19万人に上ります。小売業のDunnhumbyが賞金1万米ドルで行った、購買履歴から再来店率などを予測するコンテストでは、2カ月で277チームが参加し、従来の約2倍正確な予測が可能となりました。
これまで企業でKaggleにおいて開催したコンテストは148件で、そのうち20件が2014年7月6日時点で開催中です。
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