レッドハットがOpenStackのIcehouse版を国内発表差別化よりも利用環境を整備

レッドハットが同社OpenStackディストリビューションの新版、「Red Hat Enterprise Linux OpenStack Platform 5」の国内におけるサブスクリプション・ライセンス提供を同日に開始すると発表した。同社にとっては、クラウド技術の利用環境をどう整えていくかがテーマだ。

» 2014年07月24日 09時18分 公開
[三木 泉,@IT]

 レッドハットは7月23日、同社OpenStackディストリビューションの新バージョン、「Red Hat Enterprise Linux OpenStack Platform 5(RHEL-OSP 5)」のサブスクリプション・ライセンス提供を同日に開始すると発表した。

 プレスリリースは新機能を挙げているが、これらは基本的に、RHEL-OSP 5のベースとなっているOpenStackの新リリースIcehouseが持つ特徴。機能で差別化するディストリビューションもあるが、RHEL-OSPでは逆に、インストーラなどに工夫を加えているほかは、独自の機能を抑えている。

 これは、「OpenStackのコードが実質的にフォークしてしまうのを避けるため」とレッドハットのクラウド・仮想化製品事業部 事業部長 土居昌博氏は話す。OpenStackで採用されているApache 2ライセンスでは、コードの改変や派生コードをコミュニティに戻す義務はない。だがレッドハットでは自社で開発したOpenStackコードを基本的にすべてコミュニティに提供しており、コントリビューション数、チケットクローズ数(実質的にバグフィックス数を示す)が他の企業・組織を大きく引き離して最多であることは、このことを示しているという。

利用環境をどう整えていくかがテーマ

 では、ディストリビューションとしてどう差別化を図るのか。レッドハットではサポート、そして関連製品の統合的な提供を強調している。

 RHEL-OSP 5ではサポートライフサイクルが3年間に延長された。OpenStackの動きは速く、6カ月単位で新しいリリースが出る。「するとこれまでのリリースは放っておかれる形になる」(土居氏)。RHEL-OSP 5ではバックポートを含めたコードのメンテナンスが、3年間にわたって保証されることになる。

 RHEL-OSP 5は「Red Hat Enterprise Linux 7(RHEL 7)」をベースとした製品だ。一方でRHEL 6を使い続けたいというユーザー組織のために、RHEL 6対応版を、数週間後に提供開始するという。ちなみに、そもそもRHEL-OSPは、既存のRHELユーザーがクラウド基盤の構築を進める際には自然な選択肢となるし、RHELのセキュリティや堅牢性に関する機能を活用できるというメリットがある。

 関連製品についての1つのいい例は、OpenStackユーザーの間で人気のある分散ストレージのCephを提供する、Inktankの買収だ。「使いものになる」ことがはっきりしてきた製品を、RHEL-OSPと組み合わせて安心して使えるようにし、OpenStackの普及を促そうとしている。

個々の組織の目的に適した選択肢を提供することが、OpenStackの中・長期的な普及のためにも重要とレッドハットはいう

 レッドハットが別途提供しているマルチクラウド連携/運用管理ツールの「CloudForms」も、実際の利用場面では役に立つと、土居氏は強調する。一般的な企業では、OpenStackだけでクラウド基盤を構築することは、ほとんどない。従来型のアプリケーションはVMware vSphereによる仮想化環境で、すでに運用されているケースが多い。OpenStackは当初、これと共存する形で広がっていくはずだ。Webサーバや「クラウド型」の新しいアプリケーションがOpenStackに載り、既存アプリケーションとの連携で使われていく。こうした利用シナリオでは、混在環境を一元管理できるCloudFormsが大きな役割を果たすという。

 また、RHEL 7およびPaaS基盤製品のOpenShiftでサポートするDockerフォーマットは、「クラウド型」アプリケーションの流通形式として期待されている。RHEL-OSPはこの動きを支えるプラットフォームとして、利用されるケースが増えてくるだろうという。

 一方で、クラウド型アプリケーションへの移行は考えておらず、既存のVMware vSphere環境のコストダウンを図ることを主な目的とするユーザー組織には、同社の仮想化運用製品「Red Hat Enterprise Virtualization(RHEV)」を推進していく。

RHEL-OSP 5の価格体系

 RHEL-OSP 5は、OpenStackディストリビューションに、ホストとしてのRHELを組み合わせた製品で、2ソケットサーバ1台単位のサブスクリプション価格が設定されている。

 サブスクリプションの内容は「コントローラノード」「コンピュートノード」で、コンピュートノードにはゲストOSとして無制限にRHELが使えるライセンスが含まれている点に違いがある。また、コントローラノード、コンピュートノードのそれぞれに、 「プレミアサポート」(土日を含めた24時間体制のサポート)、「スタンダードサポート」(平日9〜17時)の2つのサポートレベルが選択できる。

 参考価格は「コントローラノード」(スタンダードサポート)が27万9400円から、コンピュートノード(スタンダードサポート)が44万8400円から。

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