とある小さなWeb制作会社を舞台に、クライアントからのさまざまなブラック案件を、Adobe Creative Cloud 2014を使って解決していくストーリー。ムチャ振りするクライアント、安請け合いするメンバー、それに振り回される制作者。果たして、無事にブラック案件を駆逐できるのか!?【最終回の話】連載のこれまでを振り返り、プロのWeb制作現場におけるCCアプリの使い分け方についてまとめてみる。サンプルコード/PSDもあるので実際に試してほしい。
本連載「ブラック案件駆逐法」ではこれまで、プロのWeb制作現場が急を要する場面をいくつか想定し、プロ向けのWebサイト/アニメーション作成ソフトウェア群「Adobe Create Cloud 2014」(以下、Create Cloud)のポテンシャルを引き出すテクニックについて、以下のように紹介してきた。
連載で紹介する案件についてはフィクションだが、筆者は実際に1日くらいの時間で制作を行わなければならない場面にしばしば遭遇し、Creative Cloudとその周辺のテクノロジを活用して乗り切っている。
連載中に提供を予定していたサンプルコードですが、筆者のGitHubから素材を含めてダウンロードできます。PSDファイルも含まれますので、今回紹介するExtractでもお試しください。
なお、本連載で紹介されている「Climbing lovers Jewelry」は筆者の会社が輸入代理をしている実在の商品です。
Creative Cloudソフトウェア(以下、CCアプリ)の守備範囲は多岐にわたっていて、一部機能については重なっている部分も多いので、今回はプロのWeb制作現場におけるCCアプリの使い分け方についてまとめてみた。参考にしてほしい。
使い分け方についてまとめる前に、Web制作現場のワークフローに関わることとして、一つ紹介しておきたいことがある。連載中にも、個々のCCアプリは続々とアップデートされていたが、この9月にそれらがまとめてアナウンスされた。その中でも目玉といえるのが「Project Parfait」(以下、Parfait)がCreative Cloudに統合されたことだろう。
これまでは連載第1回目から、基本的に、デザイナーがプロ向けの画像制作ツール「Adobe Photoshop CC」(以下、Photoshop)で制作したWebデザインカンプのPSDファイルを基にしたWeb制作のワークフローを紹介してきた。
PSDファイルをWebサイトにする際に有効なWebサービスとしてParfaitを紹介してきたが、そのParfaitがCreative Cloudに統合された意味は大きい
これからは任意のPSDファイルをアップロードするのではなく、Creative Cloudのオンラインストレージ「Creative Cloud Files」に置かれたファイルに対してParfaitの機能、「Extract」を実行するという形になる。
Creative Cloud Filesの画面にはExtractという機能が追加されたアナウンスが表示されている。ファイルはドラッグ&ドロップしてアップロードしたり、ローカルのファイルを専用のアプリを通じて同期をかけたりすることで、Extractを利用できるようになる。
ファイルをクリックするとExtractの機能をすぐに利用できる。インターフェースも日本語化されており、いままで取っつきにくかった方でも利用しやすくなった。
実は、この統合はCreative Cloud自体の大きな進化を意味していると筆者は考えている。
というのも、単体のWebサービスであればCCアプリとの連動に限界が見えてくるが、Creative Cloudはアプリケーションの設定情報や、モバイルアプリケーションとのデータ連係など、さまざまな機能を仲介する役割も担っている。Parfaitがここに統合されたということは、この機能が他のCCアプリから利用可能になるという考えもできるようになる。
筆者はParfaitの時からすでに実案件でこの機能を利用しており、いまはチームのデザイナーにも利用してもらっている。ファイルが更新されたときに、アセットのサイズや位置が変わっても、クリック一つでExtractできるという体験は、実際にやってもらえればその魅力が分かると思う。
さて、冒頭で述べた通りCCアプリの守備範囲は多岐にわたっていて、一部機能については重なっている部分も多い。そこで、いくつかのWeb制作のカテゴリ/用途から、どのCCアプリがそれに適しているのか、対応しているのかを表にまとめてみた。
筆者の認識不足があるかもしれないが、このような認識の下に用途によってCCアプリの選定を行っている。
連載第3回で紹介したように、コーダーがいない場面では「Adobe Muse CC」が有効となるが、それ以外は、基本的にコーダー向けのツールだ。
「Adobe Edge Code CC(Preview)」(以下、Edge Code)はレスポンシブ対応が△になっているが、コーダーのスキル次第の部分もあるのでそのようにした。サイト定義は「Adobe Dreamweaver CC」(以下、Dreamweaver)のようなさまざまな設定をできるものもあれば、Edge Codeのようにフォルダーを指定してそれを「プロジェクト」として扱うといったシンプルなものでも○にした。
もし、仕様が未確定であったり、仕様の変更が流動的に起きそうな場合や、CCアプリがどれとも決められないときは「取りあえずDreamweaverで」だ。
また、連載第2回で紹介した中にはアニメーションを制作するツール、「Adobe Edge Animate CC」(以下、Edge Animate)と「Adobe Flash Professional CC」(以下、Edge Pro)がある。
Flash Proはswfという形式のFlashムービーを作るツールだが、CreateJSを利用したアニメーションにも対応している。これはHTML5のCanvasを用いたものだ。対してEdge AnimateはHTMLの要素そのものを動かすものになる。
使い分けを考えると、Edge AnimateはHTMLにインタラクティブ要素を付加したり、動くWebページを作るのに適しているのに対し、Flashはムービー単体で通用するようなものを作るのに適しているといえる。
筆者はEdge AnimateをjQueryで作るようなアニメーションの制作に使っており、FlashはCreateJS書き出しをしたものをソーシャルゲームの演出制作に活用している。
10月4〜8日の間、米国ロサンゼルスで、「Adobe MAX 2014」が開催される。これはCreative Cloudの提供元であるアドビシステムズが総力を結集して世界中のWebデザイナーやクリエーターにメッセージを発信するイベントだ。メッセージの在り方はいろいろあると思うが、そこにアプリケーションのアップデートや新機能のプレビューが含まれることは確実だとみていいだろう。筆者も当日は現地へ飛び、さまざまな情報をお伝えする予定だ。
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