エンジニアとしてのピークは案外早く訪れる。後になって後悔しないように、早いうちから準備をしよう。
ビジネスパーソンは、キャリアプランを持つべきだ。エンジニアも例外ではない。
ここでいうキャリアプランとは、数年から十数年くらいの時間軸における将来の働き方の大まかな見通しのことだ。将棋でいう「読み筋」のようなもので、必ずしも現実がその通りになる必要はない。「毎年、毎年、将来数年の見通しが変化していく」といった形で、心の中に将来像がある状態を持っているといい。
キャリアプランニングが必要な理由は、人材価値を作るためには年単位の時間がかかるからだ。
ビジネスにおける人材価値は、(1)ある仕事ができるという「能力」と、(2)その能力を現実に使った「実績」の2つで構成されている。能力を養うにも、何らかの仕事をするためにも、年単位の時間が必要だし、現実に仕事を通じて、そのためのチャンスを得なければならない。
こうした事情は、いわゆる文系のビジネスパーソンも、エンジニアも変わらないはずだ。むしろ、エンジニアの方が、身に付けた知識やスキルが仕事の能力に直結する分、分かりやすいのではないか。
キャリアプランニングは、高校、大学(大学院を含む)といった高等教育の段階から実質的に始まっている。ただし、この段階では、将来どういった職に就いて何をするのかについて、具体的なイメージがない人の方が多いと思うし、多くはそれでも構わない。
ただし、医師、会計士など特定の職に就きたいと思い立った人は、学校まで戻って、専門的な教育を受け直さなければならないことがある。この場合、自分が希望する学校に入る可能性と、そこで時間を使うことの影響とを、あらためて考え直さなければならない。
現実に、多くのビジネスパーソンを見ると、学生の段階では将来の職の選択について具体的なイメージを持っていないことの方が多い(筆者もそうだった)。たいていは、いくつかの会社を受けてみて、「まあまあこれでいいか」と思う会社および仕事からスタートする。もちろん、将来の職に最初から確固たるイメージを持って入社する人もいるが、その予定が狂うことも大いにある。
しかし、職の決定についていつまでも迷っていられるわけではない。人材価値獲得の重要な要素である「実績」を作るために好適な年齢があるからだ。文系ビジネスパーソンの場合、それは30代前半の数年間だ。
30代前半は、ビジネスパーソンとしておおむね能力のピークであると同時に、組織から見てチャンスを与えやすい年齢だ。
一つには、この時期を仕事を覚えた状態で迎える必要がある。仕事を覚えるのに2年と見て、30歳マイナス2年で28歳がコース選択締め切りのめどだ。
また、人材価値に対する大まかな評価は、30代半ばまでには、おおかた固まる。大企業の場合、現実的に組織内での出世に差が付くのは、40代になってからかもしれないが、個々の人材に対する大まかな評価は30代半ばで大体終わっていることが多い。もちろん、その後の仕事ぶりの差や、評価の運も影響するが、大まかな人材のクラス分けはこの時点で終わっており、その後の大きな逆転はまれだ。そして、この時点でのクラス分けは、転職市場での人材価値にも影響する。
キャリアプランニングにあって、「28歳」と「35歳」をめどとして意識する必要があるのは、28歳までに職を選択しなければならないし、35歳くらいまでには何らかの具体的な仕事の実績を持って、大まかな人材価値を形成しなければならないという意味だ。
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