アドビシステムズは、2014年10月8日(現地時間)に開催した「Adobe MAX 2014 Sneak Peeks」で、13の新技術を披露。一番盛り上がったのは、写真の時間を変えるという夢のようなエフェクトだった。
アドビシステムズ(以下、アドビ)が米国ロサンゼルスで2014年10月8日(現地時間)まで開催していた年次カンファレンス「Adobe MAX 2014」。基調講演については、記事「全ての人をモバイルクリエイティブの世界へ誘う9つの無料アプリとCreative SDK」を参照していただきたい。
Adobe MAXの2日目の夜は、「Sneak Peeks」という開発中のプロジェクトのプレゼンテーション大会がある。例年、ここではPhotoshopを中心としたプロダクトの機能を開発しているエンジニアが、その機能をプレゼンし、司会者とコメンテーター(だいたい芸能人が務める)のツッコミを受けるといった形で進行する。
ここで紹介される技術は最終的に没になるものもあるが、Adobe MAX 2012で公開された「デブラー」という手ブレを後から消す機能は、現在のPhotoshopに実装されている。
本稿では、Sneak Peeksの中からWeb開発に関わるプロジェクトを中心に見てみることにする。紹介できないものについてもYouTubeでデモ動画が公開されているので合わせてご覧いただきたい。
タブレットを使ってプロジェクトのフレームワークを作っていくことができるアプリケーション。指先だけでさまざまなオブジェクトを描画できるので、素早くワイヤフレームを制作できる。また、Creative Cloudと連携できるので、アップロードした画像などを読み込んできて利用できる。アドビはかつて似たようなモバイルアプリを作っていたが、今回はCreative SDKを用いて、より使いやすい形に進化させたようだ。
PSDファイルをWeb上で編集できるようになるサービス。PSDファイルは、すでにWeb上で要素を解析したり、サーバー上でエフェクトを適用したりすることができるようになってきている。これは、さらにレイヤーの構造を入れ替えたり、簡単な編集をブラウザー上で行えるようにしたものだ。
作ったファイルはそのままダウンロードしてPhotoshopで作業を続けることができるようになっている。
これは、新しい波形編集のあり方を提案するデモンストレーションだ。
ビーコンを利用して位置情報とクリエイター向けSNS「Behance」に投稿されているアートワークをひも付けるというもの。展示会などで利用できそうだ。
写真のかすみを取り除くフィルター。手作業ではなかなか除去できない写真のかすみを自動で取り除くだけではなく、かすみを追加して濃霧を表現することもできる。
Adobe Edge Inspect CCをさらに進化させたようなマルチデバイスデバッグ環境。編集結果が全てのデバイスに即座に同期され、デバッグコストを劇的に改善できる。Edge Inspect CCの後継として、あるいは別の形でもいいので早期のリリースを期待したいプロジェクトだ。
粘土をこねるようにして行う3Dモデリングのやり方を、2Dで実現したようなプロジェクト。Flash Proでも似たようなことはできるが、パスや頂点を気にせず、自由に造形を楽しめるようになっている。
今回のデモの中で一番盛り上がったといえるのが、このTimeOfDay。あらかじめプログラムにさまざまな風景の時間変化を学習させてあり、読み込んだ素材写真がどのタイプの風景にマッチするかを検索。その結果から時間変化のカラー情報を適用してあたかもその写真の時間軸を調整したように見せるフィルター。デモ動画を見ていただくと分かるが、絵画にも適用可能である。
Illustratorのブレンドをさらに便利に拡張したかのようなシェイプ配置アルゴリズムの紹介。デモしているのは何とアドビのインターン学生であった。
作成したシェイプをブレンドのようにして配置できるが、シェイプの形や配置パターンを後から変更できるようになっている。また、配置のパターンは入れ子にできるので、複雑な幾何学模様を驚くほど簡単に作り上げることが可能になっている。
写真に3Dモデルを追加できるデモ。写真からパースや光源を計算し、配置した3Dモデルをレンダリングして合成できる。また、アニメーションにも対応している。
Flash Proのような描画ができるIllstratorの新しい線ツールのデモ。
動画制作において、インタビューなどでコメントがない部分をカットするジャンプカット時に、画面がスキップしたような効果が出てしまうことがあるが、これを回避するソリューション。
Photoshopをより簡単にマスターできるように、新しいUIをテストしているというデモ。肥大化したアプリケーションは機能が深いところへ沈んでしまって、なかなか使いこなせないものだが、必要な機能に素早くアクセスできるよう、さまざまな工夫がなされていた。
Sneak Peeksで目立っていたのは、既存ツールをより使いやすく、学習しやすくするデモが多くなっていたことだ。もちろん、「Defog」「TimeOfDay」のように夢のようなエフェクトも名物となりつつあるが(そして、それについて騒ぎたい人も多いが)、実際に制作に関わっている人からすれば、普段使っているツールがブラッシュアップされていくことの方が、仕事に対する効果は大きくなることだろう。
Web制作に関しての既存のCreative Cloudのブラッシュアップについては別のAdobe MAX 2014リポート記事で紹介する予定だ。
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