HPのOpenStack商用版が出荷開始へ、その差別化ポイントはコスト効率、先取り機能、技術力

日本ヒューレット・パッカード(日本HP)は2014年10月28日、HPのOpenStackディストリビューション商用版の受注・出荷を、11月25日に開始すると発表した。日本HPの説明に基づき、HP Helion OpenStackの詳細を紹介する。

» 2014年10月28日 17時59分 公開
[三木 泉,@IT]

 日本ヒューレット・パッカード(日本HP)は2014年10月28日、HPのOpenStackディストリビューション商用版(製品名は「HP Helion OpenStack」だが、以下では「HP Helion OpenStack商用版」と呼ぶ)の受注・出荷を、11月25日に開始すると発表した。同社はすでに無償版(「HP Helion OpenStack Community」と同社は呼ぶ)を提供しているが、商用版提供に合わせて、無償版を対象とした有償サポートサービスも提供開始する。本記事では、日本HPの説明に基づき、HP Helion OpenStackの詳細を紹介する。

「さまざまな点で安価」をアピール

 HP Helion OpenStack商用版の最初のバージョンであるv 1.0は、Icehouseをベースとする。商用版では、今後OpenStackプロジェクトによる6カ月ごとのメジャーリリース後6週間程度を目途に、これに対応したアップデートを提供する。また、メジャーリリース対応版提供後、約3カ月を目途に、バグフィックスなどのためのアップデートを提供する。つまり、アップデートサイクルは約3カ月ということになる。次のリリースとしては、Juno対応版を年内に提供予定としている。

 HP Helion OpenStack商用版は、使用権とテクニカルサポートを含めた1年単位のサブスクリプションモデルとなっている。価格は、1日9時間×週5日のテクニカルサポート付きサブスクリプションが1物理サーバー当たり12万9000円、そして年中無休の24×7テクニカルサポート付きサブスクリプションが1物理サーバー当たり23万6000円。他のOpenStackディストリビューションではサーバーのCPUコア当たりの価格体系がよく見られるが、こちらは物理サーバー当たりというのがポイント(コントローラノードはサブスクリプション不要)。後述する付加機能、バンドル機能を考え合わせると、他社に比べ非常に安いとHPは主張する。

HP Helion OpenStack商用版のサブスクリプション料金と無償版のサポート料金

 商用版における付加機能についてのHPの基本的な考え方は、「OpenStackの最新メジャーリリースに正式に含まれてはいないが、HPが主導する新プロジェクトの成果を、いち早く製品機能として取り込む」ということのようだ。例として、Neutronの分散仮想ルータ、素の物理サーバーへのOpenStackのインストールを自動化するIronicの組み込みを挙げることができる。

 また、HP Helion OpenStack商用版では、自己完結的な(他社製品を組み合わせない)構成の選択肢を増やしている。まず、ストレージとしてはCinder、Swiftを含むほか、HPの仮想ストレージアプライアンス「HP StoreVirtual Virtual Storage Appliance」(以下、HP StoreVirtual VSA)」もバンドルされる。HP StoreVirtual VSAは、同社のサーバー製品の一部に無償提供されているが、これがOpenStackに含まれることで、当初から商用製品を導入せずにOpenStack環境を構築する選択肢が増える。HP StoreServ 3PARについては、Cinderプラグインが含まれる。また、ネットワークでは、前述の分散仮想ルータ機能により、Neutronの拡張性を高めるとともに基本的なSDN機能を実現。商用SDN製品を組み合わせる必要性を減らしている。LogstashやKibanaなど、OpenStack運用で人気の高いオープンソースソフトウェアもバンドルしている。

HP Helion OpenStack商用版にバンドルされている主な機能

VMware vSphereとの連携も

 HP Helion OpenStackは、DebianベースのHP独自LinuxであるhLinux上で、ハイパーバイザーにKVMを採用したOpenStackディストリビューション。商用版では、 VMware ESXiにも対応する(なお、HP Helion OpenStackは、ESXiを直接管理するわけではなく、vCenter経由で管理する。このため、VMware vSphereのライセンスが必要)。「HP EON」というコンポーネントにより、HorizonのメニューからESXi上のゲストOSを容易に管理できるという。

 すなわち、現在テクニカルサポートの対象となるハイパーバイザーはhLinux上のKVM とVMware ESXi。KVM上ではCentOS、Debianの動作が保証されるほか、商用LinuxのUbuntu、Red Hat Enterprise Linux(RHEL)、そしてWindowsに関しては、HPとしての動作検証とサポートを提供する。当然ながら、ESXi上では、そのサポートするOSが使える。HP Helion OpenStackでのゲストOSとして、レッドハットによるサポートを前提としてRHELを使いたい場合は、hLinux+KVM上でなく、ESXi上での利用を推奨するという。HPは将来、Hyper-Vを含む他のハイバーバイザーへの対応、物理コンピュータの管理も進めていきたいという。コンテナのサポートについては、現在Kubernetes設定ツールのベータ版を提供中。

HP Helion OpenStack商用版が現在サポートする構成と今後の予定

技術ノウハウやサポート力を「売る」

 日本HPの執行役員 テクノロジーコンサルティング事業統括 兼APJ OpenStack Professional Services担当ディレクターの有安健二氏は、今回の商用版提供開始に備え、「HP Helionプロフェッショナルサービス」のアジア太平洋地域が発足していることを説明した。OpenStackエンジニアの不足は世界的に問題となっているが、HPではアジア太平洋地域で数十人のエンジニアを確保。日本国内に限っても、おそらく最も充実した人員構成だろうという。同サービスの拠点は東京、シンガポール、北京に配置。OpenStackインフラを国際的に展開する顧客に対応できる体制にしているとする。

 これまでHPは、OpenStack導入に関し、アセスメントや基準策定、検証支援といった事前支援を提供してきたが、今後は設計、構築、移行、そしてストレージ構築やクラウドバックアップ、ファイル共有などに関する支援を本格化するという。当然ながら、同社の既存テクノロジーコンサルティングサービスと連携した活動を進めることになる。

 日本HP クラウドビジネス統括本部 統括本部長の春木菊則氏は、すでに多くのシステムインテグレーターが、パブリッククラウドよりもコスト効率の高い選択肢として、HP Helion OpenStackの導入に関心を示していると話した。一般企業における導入に関しては、直販および大手システムインテグレーターとの連携で、支援していく。HPはOpenStackベースのクラウドサービスを、北米で過去3年間にわたり運用している実績があり、その経験が、他のOpenStackディストリビューションに対する差別化につながっているという。

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