ネットワーク仮想化ソフトウェアのミドクラは、2014年10月3日(中央ヨーロッパ時間)、OpenStack Summit Parisの開催に合わせ、同社の製品「MidoNet」のオープンソース化を発表した。
ミドクラは2014年11月3日(中央ヨーロッパ時間)、MidoNetの全コードをオープンソース化、新規に立ち上げたオープンソースプロジェクトのサイトにおいて無償提供を開始した。採用するライセンスはOpenStackと同じApache 2.0。
このオープンソースプロジェクトには、8x8、ビットアイル、ブロードコム、Canonical、Cumulus Networks、Eucalyptus Systems、富士通、IDCフロンティア、KVH、Mellanox Technologies、Mirantis、NIMBOXX、Quanta、レッドハット、Solinea、Stratoscale、SUSE、Zetta.ioなどが参加している。
ミドクラは、オープンソースMidoNetに管理ツール「MidoNet Manager」を付加した製品を「Midokura Enterprise MidoNet」の名称で、同社によるサポートとともに提供する。
ミドクラの共同創業者兼会長である加藤隆哉氏は、オープンソース化の狙いを、「ストレージソフトウェアにおけるCephのような存在になりたい」と説明する。
その意味は次のようなことだ。ミドクラのMidoNetはNicira NVP/VMware NSXと競合する存在。データセンターにおけるSDN(Software Defined Networking)に焦点を当てている。VMware NSXはOpenStackにも対応しているものの、VMware vSphereユーザー組織での導入が進んでいる。これに対し、MidoNetはVMware vSphereにも対応しているが、OpenStackユーザーに広く採用されることを目指している。
現在のところ、OpenStackにはネットワークの事実上の標準と呼べる製品/技術がない。大規模なOpenStackベースのITインフラ構築を目指す組織や、そうした組織のOpenStack構築を支援するITベンダー/システムインテグレーターは、異口同音にこの点を口にする。一方、ストレージではCephが急速に支持を獲得、デファクトスタンダードといっていい存在になっている。
Cephは、中立的なオープンソースソフトウェアとして試され、その機能や拡張性が評価されてきた(なお、Cephの開発元である米Inktankは2014年4月末、米レッドハットに買収されている。Cephは継続して、オープンソースソフトウェアとして提供されている)。加藤氏はこれにならい、MidoNetをオープンソース化することで広く使ってもらい、その技術を評価してもらうことで、事実上の標準になりたいという。また、大規模な既存ITベンダーでなく、SDNに特化したスタートアップ企業ならではの中立性により、ベンダーロックインを回避したい組織に適する選択肢になれる、と加藤氏は話す。オープンソース化は、これらの組織にとって、将来にわたり安心して使える保証にもなるという。
MidoNetプロジェクトに参加を表明している組織は、MidoNetを自社の製品やサービスに組み込んで提供しようとしているところが多い。「これは、単なる名前の羅列ではない」(加藤氏)。これらの組織は、バグフィックスなどで貢献してくれるだろうという。
SDNの世界は動きが速いだけでなく、政治的になりがちだ。こうした世界で、日本発のスタートアップ企業が、製品/技術自体の価値によって幅広い支持を獲得できるだろうか。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.