次に、ネットワーク転送の性能を見ていきましょう。ここでは、Iperf*を使用し、同一ゾーン内でのバーチャルマシン同士の転送速度を測定しました。
* Iperf https://iperf.fr
VM | ゾーン内転送速度 | 制限 |
---|---|---|
ICDF light.S1 | 2Gbits/sec | 特になし |
EC2 t2.micro(ap-northeast-1c) | 4Gbits/sec(約10秒まで) | 10秒経過後はしばらく約60Mbits/secに制限 |
IDCFクラウドのゾーン内伝送は2Gビット/秒に固定されていました。EC2のマイクロインスタンスでは4Gビット/秒まで出るのですが、10秒ほど続けると制限がかかり、その後はしばらく約60Mビット/秒で通信することになりました。
低価格帯のマシンでも高い転送速度が保たれるようなので、複数のバーチャルマシン間でファイル共有やクラスタリング、レプリケーションなどを行う際の指標になりそうです。
外向きのネットワークについては速度の計測をしていませんが、AWSと比較すると利用料金が安めに抑えられています。IDCFクラウド無料枠の3Tバイトを基準にざっと計算すると、EC2のData Transfer Outで6万円強(ELBを経由すると約2500円追加)に相当します。
定額オプションの3万円についてはAWSで上記の半分、S3やCloudFrontのパブリック配信と比較すると2〜4Tバイト程度の転送に相当します。
なお、他の国内IaaS系クラウドサービスと比較すると、この辺りはケースバイケースとなるようです。
構築するシステムの特性に応じて使い分けるといった利用法も考慮するとよいでしょう。
コンピューティングサービス評価の最後に、利用者側での動作検証はできませんがHA(High Availability)機能があります。
こちらも筆者が同社の技術担当者に確認したところ、ここはVMWareのHA機能をそのまま使用しているとのことでした。物理ノードに障害があった場合には、自動的に他のノードで仮想マシンが継続します。
自分のサーバーがHAで物理ノードを移動する際の挙動を確認したい場合は、VMWare ESXi+vSphere環境を用意することで検証も可能です。
記事作成後に、フュージョン・アイ・オーの「ioMemory」を利用できる「highio.5XL128」タイプが追加されました。参考までに、ほぼ同条件でベンチマークした結果を次のgistに公開しています。
ベンチマーク結果を見ると分かるように、ファイルシステム(XFS)で200から300万、rawでも3万以上のIOPSと、ちょっと驚きの性能が出ています。Amazon EC2で同種のタイプが5ドル/時間(オンデマンド)であるのに対して、370円/時間と割安です。
ここまでで、IDCFクラウドの概要と価格および性能について評価してみました。新規にIaaS系クラウド上にシステムを構築する場合、用途や想定する転送量によっては他社サービスより大きくコストを下げて運用できそうです。
次回はMackerelとの連携と、CloudStackのAPIを介してChefでシステムを構築してみる例を紹介します。
アプリケーション開発・デプロイのため、プラットホーム構築や構成管理の自動化をテーマに活動。ChefなどInfrastructure as Codeの活用を中心としたオープンソースプロジェクトにコントリビュータとして参加。主な著書に『Chef活用ガイド』(KADOKAWA・アスキーメディアワークス刊)がある。
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