福田 今70億人が地球にいて、そのうち20億人がインターネットを使ってます。で、一生のうちに面と向かって会える人の数はどれくらいかというと、最大で5000人くらいなんだそうです。
総裁 オフラインだとそうなりますね。
福田 で、そうなるとね、無駄なやつに会っている時間は1秒もないんですよ。実は僕、まあまあ暇なんです。暇になるように働き方の設計してるんです。つまり、興味ない人には会わない。
よくある「ご尊顔を拝してご意見を賜りたい……」っていうのには一切会わない。そういうのに会っても、「何かいいアイデアありませんか」ってなって、僕がアイデアを出すと「ありがとう、じゃ次はいついつに……」ってなるんです。でも、ちょっと待ってほしい。気軽に出しているように見えるけれど、このアイデアを出すために僕がどんだけ遊んで、どんだけ投資してきたか分かっているのか、と。アイデアに対する対価がない限り、次はない。
総裁 コンサルやアイデアに金を出すって概念がない人が多いですからね。
福田 あと、「おもろい、おもろい」って言ってくるお前が一番おもろないわー、っていうのもありますね。飲み会なんかの締めに「福田さん、今度一緒におもろいことやりましょうやー」っていう人がいるけど、ないないないない。
総裁 一人でずーっと企画をあっためて、こっそり作ってくるやつの方が面白いですね。それに、ほんまに面白いことやってる人は、自分がやってることが面白いことかどうか不安でしょうがないはずだもの。
福田 似たようなものでもう1つ、「Win-Winの関係でやりましょう」っていうやつ、あれも苦手。「俺、これちょっと欠けてるかもしれません」「ここ弱いんで」っていうヨワヨワな関係ならありだけれど、「あんた、Winやったらそれでええがな、一人でやってーな、こっち巻き込む必要あるんかいな、お前実はWinやないやろ」って思いますね。
総裁 「もうかる話持ってきましたー」って、そんなのアフィリエイトくらいだから。
福田 だから、最小実行人数は「1」。自分一人でもやるっていうのが大事。いろんな異議が来ても、それでも一人でやる、その決意を固めてやらないとよくない。
総裁 スティーブ・ジョブズ的ですけれど、一人で最終的な決定をして、一人でもやるっていうくらいリーダーシップがないと、いいものって作れないですよね。
福田 エンタメ業界、クリエイティブ業界で「この人は絶対、偉いリーダーになれないな」っていう人の特徴は、いつまでたってもフォントとかポスターの位置とか、そういうのにうるさい人。これ、ダメなんです。
総裁 マイクロマネジメントでやるか、完全にボトムアップかの違いですよね。人の仕事のやり方によるというか。
福田 僕、「スタートレック」のカーク船長ってだめだなって思うんですよ。あれ、船に1000人も乗ってるの。部下だって結構たくさんいるわけ。なのに「あの星がちょっとやばい」ってスポックが言い出すと、「副長は残っていろ、俺が行くからって」って船長が行く。1000人規模の組織の長がそれはいかんでしょ、と。
総裁 でも、スティーブ・ジョブズとか、あと任天堂の岩田(聡)さんとか、めちゃめちゃ細かいじゃないですか。Wiiが出たときの岩田さんのインタビューがめちゃくちゃ面白かったのを覚えてます。
「Wiiの特徴って何ですか」って聞かれて、いきなり「CPUの配線が90nmプロセスなんですよ」とか、Bluetoothの周波数がこうとか細かい話をする。そういうマイクロマネジメントでやっている社長と、サントリーのような「好きにしなはれ」っていう社長と、どっちがいいんでしょうね。
福田 細かいこともできる人が大きなビジョンも持てたときに、大きなことができるんやろね。
総裁 たぶん会社の方針、カルチャーでしょうね。下が強くてまとまってない会社ほどトップが強くないといけないと思うし、まとまってる会社ならトップがそんな強くなくてもいい。
みんなが濃くてみんながジャイアンだと、ジョブズのような人じゃないとやっていけないけど、みんな従順で賢かったら、トップが鷹揚(おうよう)でもそこそこうまくいく。「あっち行きなはれ」っていわれたら現場が自ら考え、判断し……サントリーとかそうですよね。「好きにしなはれ」でハイボールができちゃう。
福田 僕、自分で会社を作ったときに「上場しない」って決めたんですが、それは「全部、僕が関与するよ」という前提があったから。小さな会社で、クオリティ高いものを作って、みんなに高い給料を払って、ちゃんと休みたい、それで回っていくのがいいよねって思っています。だから「スタートレック」の船長にはなれないです(笑)。
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