Tableau、Qlik SenseなどのセルフサービスBIツールは日本でこそ流行るテキサス・レンジャーズの例でも分かる

「セルフサービスBIツールは日本で流行らない」は大間違いだ。そのことは、この種のツールが何を目指しているかが分かればはっきりする。

» 2014年12月02日 13時00分 公開
[三木 泉,@IT]

 「セルフサービスBIツール」「アジャイルBIツール」「データビジュアリゼーションツール」「データディスカバリツール」。いろいろな呼び方がなされるが、どれもしっくりこない(本記事では便宜的に「セルフサービスBI ツール」と呼ぶ。ちなみにガートナーは、「データディスカバリツール」と呼んでいるようだ)。いずれにせよ、こうした製品がソフトウェアの1ジャンルとなりつつある。

 代表格は米Tableau Softwareの「Tableau」と米Qlik Technologiesの「Qlik Sense」。これらのツールは、データから、ビジネスの状況を読み取り、改善のヒントを見出すためのソフトウェアツールという意味では「BIツール」だが、主な利用者は経営幹部や管理職ではない。ビジネスの「現場」に関わる人々、およびこうした人々を支えるビジネスアナリストだ。

 現場の人々が利用者だというのには2つの意味がある。1つは、現場のマネージャーやスタッフが、セルフサービスBIツールで作成されたダッシュボードにより、自分たちのKPIを、場合によってはリアルタイムに近い形で確認でき、情報をドリルダウンして改善が可能なポイントを見出し、アクションを起こすことができるという意味。もう1つは、現場の人々自身が、こうしたツールを使って、複数のデータソースからの情報を自ら探索し、分析して、ビジネスパフォーマンスの改善につなげるという意味だ。後者は、今のところExcelなどのスプレッドシートを駆使して、自分たちの業務に関するデータを管理し、分析しているが、苦戦しているようなケースに当てはまりやすい。

 セルフサービスBIツールは、データを視覚化する機能に優れており、表よりもグラフをデフォルトとすることで、現場の人々のアクションにつながりやすいものにしている。

 2つのいずれの意味でも、いままで慣例や経験、勘で実行されてきたビジネスプラクティスが本当に効果をもたらしているのかを確認し、効果がなかったのなら、どこを改善すべきかを探るために、こうしたツールを使うことができる。業種によっては、ビジネスが進行している最中に、(試行錯誤であっても)結果を改善するための手を打ち、さらにこうした取り組みの履歴を事後にまとめて分析し、確度を高めていく活動を支えることができる。

 いい例の1つに、米国の野球チーム、テキサス・レンジャーズにおけるチケット販売促進活動がある。Tableauが2014年9月に開催した「Tableau Conference 2014」で、マーケティング担当者が話したところによると、これは最大の収入源であるチケットセールスに、マーケティングが直接関与する取り組みの一環だという。

 レンジャーズでは、各試合のチケットの販売データを、チケット販売システムから直接吸い上げ、チケットセールス部門とマーケティング部門がTableauのダッシュボードでその推移をリアルタイムに共有している(販売データの更新は15分単位)。同チームでは、特定ブランドの飲料を持ってくれば割り引くなどのキャンペーンを実施しているが、こうしたキャンペーンの効果についても常時確認できる。ある試合の売り上げが目標に遠く届かない見通しになったとき、2つの部門で会議し、年に数試合を対象にしか実施しないと決めている最後の手段、大幅値下げを実行するかどうかを決める。過去の同様な例を参考に、値下げ実施の最適なタイミングを計ることができるし、その効果もまた、リアルタイムで確認できる。

「硬直的な事業運営の日本企業では使われない」?

Tablauのユーザーたちが自ら語った、セルフサービスBIツールの活用例をまとめました

 筆者が2014年11月末にインタビューしたQlik Technologiesのビジネスアナリティックスストラテジスト、ジェームズ・リチャードソン(James Richardson)氏は、同社のセルフサービスBIツールQlik Senseについて日本で説明したところ、(組織における上下関係のはっきりした、)硬直的な事業運営をしている日本企業では、あまり使われないのではないかと(複数の記者に)言われたと話した。

 筆者の考えは逆だ。「カイゼン」「ゲンバ」といった言葉は米国にも輸出され、広く知られている。カイゼンはもともと製造業の生産品質や作業効率の向上活動だが、日本国内では、様々な産業、職種で、創意工夫に富む活動をしている現場の人々がいる。こうした人たちが、自分たちの創意工夫の価値を確認し、何らかの補完を行って効果を高める活動を、セルフサービスBIツールは支援できる。

 日本では流行らないと考える人は、「BIツール」という言葉から受ける従来のイメージを引きずってしまっているのではないか。TableauやQlik Senseは、BIツールではあっても「経営ダッシュボード」ではない。現場が業務改善やパフォーマンスの最大化のために、データを効果的に活用できるようにすることを目的としたツールだ。

 Tablauのユーザーたちが、Tableau Conference 2014で自ら語ったセルフサービスBIツールの活用例を、IT INSIDER No.36「新世代BIツールで、データをビジネスに生かした9つの実例」にまとめました。お読みいただければ幸いです。

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