2014年11月21日に開催された第6回OpenAMコンソーシアムセミナーでは「認証関連の社会動向とOpenAMの適用事例」というテーマで、認証技術のトレンドやOpenAMの最新機能、導入事例などが紹介された。その様子をリポートしよう。
「OpenAM」は、米サン・マイクロシステムズが開発していたシングルサインオン(SSO)を実現するオープンソースソフトウェア(OSS)、「OpenSSO」の後継製品だ。オラクルによるサン・マイクロシステムズの買収でOpenSSOコミュニティの存続が危ぶまれていたが、OpenSSOの開発者たちによって起業された米フォージロックにより、現在も活発な開発が継続されている。
OpenAMコンソーシアムは、このOpenAMの日本におけるユーザー企業やプロバイダー企業に対し、安心してOpenAMを継続利用してもらうことを目的として2010年に設立されており、毎年2回のセミナーを開催している。
本リポートでは、先日開催された6回目のOpenAMコンソーシアムセミナーの中で行われた講演の内容について取り上げよう。
今回のセミナーでは、OpenAMや認証関連の技術に詳しい4人の登壇者により、OpenAMの導入事例や機能の紹介がされた。また、認証関連の世界的な動向の解説や、OpenAMの最新機能を使ったクラウドサービスへのSSOのデモなども行われた。
最初に、Kantara Initiative理事であり、OpenID Foundation理事長でもある崎村夏彦氏が「IDMからIRMへ。変わるアイデンティティーの地平」というテーマで基調講演を行った。その中で、IDM(IDentity Management)の歴史を振り返りながら、これから本格化すると思われるIRM(Identity Relationship Management)について解説した。
従来のIDMは、パスワード忘れに伴う社員の作業時間のロスやコールセンター業務の負荷を削減するといった、コストダウンと生産性の向上を目的としていた。しかし、近年は売り上げや顧客満足度の向上も目的に加えた「戦略的なIRM」へとシフトしていく動きが高まっているという。
IRMとは、人やモノのリレーションを管理することを表す新しい概念であり、これを用いてユーザーエクスペリエンスを向上させることで、新しいビジネスが創造できると考えられている。
例えば、自動車と人、スマートフォンを連携するIRMのシステムを導入した場合、スマートフォンにこれから移動する目的地をセットして自動車に近づくと、自動的に自動車のエンジンがかかり、自分に合った座席の位置や傾きに調整され、カーナビゲーションには目的地までの経路情報がセットされる、といったことが可能になる。
こういったIRMのサービスは、既に海外では実用化されている。例えばあるホテルの予約サービスでは、インターネットでホテルを予約しておくと、Bluetoothを搭載したスマートフォンがホテルの部屋のキーの役割を果たし、ロビーでチェックインをせずに部屋に入ることができる。
米シスコシステムズのホワイトペーパーによると、このようなモノと人のアイデンティティの数は、2020年までには500億個までに上り、インターネットは人やモノを組み合わせたIoT時代へと大きく成長すると予測されている。飛躍的に増えるIDとリレーションに対し、要求されるスケーラビリティとユーザビリティを満たすシステムをどのように構築するかが今後の課題だ。
OpenAMは、同氏が解説したIRMを実現する上でも利用され始めている。例えば、ヨーロッパの自動車メーカーでは、顧客と自動車を結びつけさまざまなサービスを提供するシステムの認証のために、OpenAMを採用している。カスタマーポータルと車内に内蔵されたタッチパネルのデバイスを通したシームレスな2段階認証により、自動車のオーナーは自身に特化した情報やエンターテインメント、ナビゲーションなどを車内で利用することができる。
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