DNSの世界には、インターネットの他のサービスにはあまり見られない「委任」という仕組みが存在する。それは一体どうしてだろうか?
DNSに委任という仕組みが必要な理由は、柔軟で確実な分散管理を行うためである。
インターネットの初期、ホスト名とIPアドレスの関係は1つのテキストファイル(HOSTS.TXT)で管理され、その情報を皆で共有する形で名前解決が行われていた。しかし、インターネットを構成する組織や機器の数が増えるに従い、このデータを1カ所で管理することの限界が認識され、ツリー構造と委任による分散管理を可能にする仕組みとしてドメイン名とDNSが作られた。
DNSのツリーの根元となる部分をルート(root、“.”で表される)と呼び、最初の分岐が.jpや.comなどのTLD(Top Level Domain)、2段目の分岐がexample.jpなどのSLD(Second Level Domain)という形でつながっていく(図1)。
このツリーは、さまざまな組織によって分散管理されている。それぞれの組織は、親となるドメインからそのドメインの一部(サブドメイン)の管理を任される形となる。これを、サブドメインの「委任」と呼ぶ。ツリー構造の中で考えると、ある分岐から先の運用を委任先の組織に任せることになるわけである。
サブドメインを委任されると、そのサブドメインを含む以降のツリー構造を管理者が自在に管理することが可能になる。逆に、親のドメイン管理者は委任したサブドメインに関する情報の登録を子に任せることができ、ドメイン管理の負荷を分散できる。
委任されたドメイン名は、委任先の管理者が責任を持って管理・運用する必要がある。インターネット利用者が該当するドメイン名の情報を得られるようにするために、委任先の管理者はそのドメイン名の権威DNSサーバーを適切に運用し、正しく情報を提供しなくてはならない。
このように、DNSは「委任」というキーワードでドメイン名のツリー構造を多段階に分散管理する仕組みである。ドメイン名を使いたい利用者がそのドメイン名を管理できるという点で便利なモデルとなっている。
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