これはまるでアートイベント? これまでのセキュリティイベントとはちょっと違う雰囲気で行われた、情報セキュリティの祭典「31C3」の様子をリポートします。
2014年12月27日から30日にかけて、今年もドイツ・ハンブルグでカンファレンスという名の祭典、「31st Chaos Communication Congress(31C3)」が開催されました。2年前にリポートした29C3と比べてどれだけ進化を遂げているのか、その模様を紹介します。
技術、政治、料理……何でもありのカンファレンス「CCC」が、今年もドイツ最大の港町ハンブルグにて、2014年の年の瀬に開催されました。
CCCは「Chaos Communication Congress」の略称です。2年前の29C3の模様は前回のリポートをご覧いただければと思いますが、31回目となる今回は当時の手作り感満載の雰囲気を少しだけ残しつつも、しっかりとシステム化され来場者がスムーズに会場内を行き来できるよう、細部まで配慮された快適なカンファレンスへと進化を遂げていました。
29th Chaos Communication Congress(29C3)リポート:HTTPSはもはや安全ではない? 刺激的な討論もなされたヨーロッパのセキュリティ祭り(@IT)
http://www.atmarkit.co.jp/ait/articles/1303/12/news094.html
会場にはいたるところに電飾が施されており、来場者の目を楽しませてくれますが、要所には案内板が数多く設置されており、かなり広い会場内でも迷わないよう工夫が施されていた点に驚きました。こういった細かい設備の充実は、2012年12月に開催された「29C3」からの大きな改善点です。
チケットを提示し入場した先で最初に目を奪われたのは、ハッカーブースへ続くトンネルでした。そこはさながら、往年のSF映画のようなエントランスに仕上がっています。
さらにその奥へ進んだ先で目に飛び込んできたものは、広大で幻想的なハッカーブースでした。まだ開場したばかりにもかかわらず、来場者――何らかの分野のハッカーたち――はこのフリースペースに早速陣取って、さまざまな活動を始めており、各チームの研究結果を発表したり、ネット上で自らの考えを発信したり、2日目から始まるCTF(Capture The Flagの略で、ハッキング技術コンテストのこと)の準備を始めたりと、その光景も往年のミッションコントロールセンターを思わせるものでした。
カンファレンスだけではなく、参加者らにとっては「このブースで何をやるか」もメインイベントとなっているのがCCCの特徴です。
31C3は、前回からさらに大きなセッションルームを一つ増やし、全部で四つの会場で平行してセッションが行われました。四つのホールは下記のように、合計でおよそ5700人もの参加者を収容できる大規模な会場に進化していました。
当日券の販売もあるためチケット販売数からは正確な来場者数を特定できませんが、今回は4日間を通じて1万人弱の参加者が来場していたと思われます。
ハッカーブースをはじめ、セッションやCTFに頭をフル回転させる一方で、来場者の疲れを癒やすブースがたくさんあるのも面白いところです。
前回同様、ドリンクカウンターでソフトドリンクやお酒が買えた他、フードコーナーに並んだ屋台で食べ物を入手することもできました。テラスには大きなバルーンがあり、中に入ると花びらが舞っているという幻想的な空間にも癒やされました。この他にも、「好きなコーヒー豆を選び、ハッカーたちによるこだわったドリップ方法でおいしいコーヒーが飲める」といったアクティビティが増えており、4日間、深夜まで続くセッションの疲れを感じさせないような工夫が各所にちりばめられていました。
セッション内容のレベル感としては、ばらつきはあるものの、さまざまなカテゴリの技術的な情報を得ることができました。セッションのカテゴリとセッション数を下表にまとめています。
「セキュリティ&ハッキング技術」として、情報セキュリティ分野を主題とするセッションが一番多く、さらにその他のカテゴリについても、ハードウエア関連セッションでは回路解析やバイナリ解析、社会&政治関連セッションでは情報セキュリティ関連法規、コンピューターサイエンスでは最先端技術の紹介や暗号技術の再入門など、どのカテゴリにも情報セキュリティ関連のコンテンツが用意されており、この分野を重視していることがうかがえました。情報セキュリティについて、幅広い知見を得るには最適なカンファレンスといえるのではないでしょうか。
今回も刺激的なセッションがたくさんあったので、ここではその中でもライトなものを紹介したいと思います。
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