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» 2015年03月02日 10時00分 公開

NTTコム、GMO、楽天が語る「僕らがOpenStackを使う理由」特集:OpenStack超入門(5)(2/3 ページ)

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最先端の機能をサービスにラインアップ――GMOの場合

 次に登壇したのは、インターネットサービスプロバイダーであるGMOの事業本部クラウド戦略チーム マネージャー 藤原優一氏、同 郷古直仁氏だ。同社では、各種サービスで、複数のバージョンのOpenStackを使いこなしている。

右から郷古直仁氏、藤原優一氏

三木 GMOは、日本国内の最古参OpenStackユーザー企業といえます。どのようなケースで採用したのでしょう?

藤原優一氏

藤原 GMOでは、さまざまなサービスでOpenStackを利用しています。まず、ドメイン取得代行やホスティングサービスを提供する「お名前.com」で、VPS(Virtual Private Server、仮想専用サーバー)サービス向けの環境に導入、2012年3月には一般向けにサービスを開始しました。おそらく、国内初の事例ではないかと思います。

 次に、「ConoHa」というVPSを提供開始しました。ConoHaは、スタートアップ企業などの比較的小規模で、かつ簡便にインフラを調達してサービスを立ち上げようと考える人たちをターゲットとしたVPSサービスです。現在は、これらに加えて「GMOアプリクラウド」というソーシャルゲームサービス専用のITインフラサービスも提供しています。

GMOのサービスと、それぞれがベースにしているOpenStackのバージョン、提供機能 ターゲットニーズに即した機能拡張はもちろんだが、バージョンが上がるごとに、OpenStackでできることを追求しているようにも見える。GMOでは、この他にも「テンテン」というOpenStackを利用したお名前.com同様のドメイン取得代行サービスをベトナムで提供している

三木 それらのサービスでOpenStackはどのような使い方をしているのでしょうか? 目的によって使い分けているのですか?

藤原 お名前.comのVPSでのOpenStackの使い方はシンプルなものです。このサービスではOpenStackの4番目のリリースである「Diablo」を採用していて、ボタン一つで簡単にWebサーバーが用意できます。このサービスを開始した後に提供したConoHaでは、スタートアップ企業のようなユーザーを想定していたこともあり、ネットワーク機能を拡充する目的でNeutronを採用しました。IPv6(Internet Protocol Version 6)にも対応しています。

 その後にリリースしたGMOアプリクラウドでは、過去の運用実績から「サーバーやネットワーク以外の機能をOpenStackベースのサービス基盤上で提供しても大丈夫」と社内で判断したことから、「ブロックストレージ(OpenStack Cinder)」「オブジェクトストレージ(OpenStack Swift)」を使ったサービスメニューも追加しています。また、これらの機能を操作するAPIも公開しています。

三木 OpenStackの新リリースが出るたびに、それらを使いたいからサービスを作っているようにも見えます(笑)。

藤原 このように順に説明していくとそのように見られがちですが、いずれも企業戦略やマーケティング部門からの要求をまとめたら、OpenStackの機能と合致していたというのが実際です。マーケティング部門が必要としているものは、つまりは顧客が思っていること、要求していることに他なりません。その機能がそろっていたのが、たまたまいずれもOpenStackだったのです。

三木 GMOアプリクラウドではAPIを公開しているということですが、この仕組みは、誰が、どういうメリットを受けるのでしょうか?

藤原 従来、GMOアプリクラウドのさまざまな機能の操作を行うには、GMOが独自開発していたUIのコントロールパネルを使う必要がありました。例えばサーバーの負荷が上がった場合には、人間がUI経由でサービスポータルにログインして、手動でサーバーを増やさなくてはなりませんでした。

 この部分をAPIとして公開すれば、プログラムを介してサーバー状態を監視できるようになります。また、プログラムを介して自動でサーバーを増やせるようにもなります。自社サービスのAPIを公開することでGMOアプリクラウドのユーザーは効率良くサーバー管理ができます。これがメリットです。

 ただし、API公開の恩恵を受けるためには、前提としてプログラミングスキルが必要です。ITエンジニアが多数在籍するようなゲーム会社では現在、ITインフラ構築・運用エンジニアだけではなく、アプリケーション開発エンジニアもITインフラを管理したいというニーズがあります。ソーシャルゲームサービス専用のGMOアプリクラウドでAPIを公開したことには、そのような理由がありました。

郷古直仁氏

郷古 実際にはOpenStackを採用する前からGMO独自のAPIを提供していたのですが、あまり利用されませんでした。OpenStackのAPIを提供するメリットは、既にさまざまな連携製品がある点でしょう。それらを使い、全てを自前で構築するのではなく、コミュニティの成果を共有し、相互連携を容易に実現する「エコシステム」を作れるのがメリットです。APIだけでなく、さまざまな対応ツールで自動化できることも大きいと思います。

三木 日本国内最古級のユーザーとしては、OpenStackをどう見ていますか?

郷古 われわれは「どうすれば利用者に“面白い”と感じてもらえる機能が用意できるか」を考えてきました。OpenStackを採用しているサービスも同様です。そのような視点に立つと、クラウドやITインフラ運用に対するOpenStack開発コミュニティの思想が、OpenStackのソースコードから見えてくるのが興味深いですね。

 例えば、ネットワーク機能についていうと、サーバー構築・運用エンジニアがネットワークスイッチの領域も操作できるわけですから、ネットワーク機能についても勉強しなくてはならなくなったということです。逆にネットワーク設計/運用エンジニアも、今後IaaSインフラを扱うにはOpenStackのようにネットワーク構築機能を内包するIaaS基盤ソフトウエアを避けて通れなくなります。ITエンジニアとしては、リリースや開発マイルストーン、ソースコードなどによってOpenStackコミュニティが示す思想と、それがもたらすパラダイムシフトはとても面白いと思います。

三木 GMOでは、今まで随時OpenStackを使ったサービスを提供してきたわけですが、現在、何か課題はありますか?

藤原 さまざまなサービスでOpenStackを提供していますが、幸いにもほとんどトラブルはありません。OpenStackは非常に安定していて、速いペースで開発が進んでいます。これからもどんどんOpenStackを構成する技術に踏み込んでいきたいと思います。

 課題を挙げるとすれば、GMOではOpenStackを採用するサービスの立ち上げに時間がかかっている点です。これは、OpenStackの新しいバージョンが出ると、一からサービスを再構築しているからなのですが、コンポーネントごとにアップデートして構築できれば、サービスの拡張性が高くなると思います。

三木 OpenStackに対する今後の技術的な展望はいかがでしょうか?

藤原 OpenStackは基本的に自助努力で改善と開発を進めるコミュニティ文化を持つOSSソフトウエアです。ですから、自社のITエンジニアだけで安定稼働を続けるためには、万一のトラブルにも自力で対処できるよう、社内に一定の開発リソースが必要なことは間違いありません。不測の事態や障害発生時には自力で対応する必要がありますが、それよりもメリットの方が大きいと考えています。世界中のITシステム設計・開発・運用エンジニアたちが作り上げたノウハウをそのまま取り込むことができ、かつカスタマイズ性も高く、独自のサービスを提供したい場合は最適なプラットフォームだからです。ぜひ皆さんもOpenStackを使い、コミュニティを盛り上げていきましょう。

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