2015年2月3日、4日に「OpenStack Days Tokyo 2015」が開催。本稿では、OpenStack Foundation、COOおよび共同創業者のマーク・コリアー氏による基調講演の模様とミランティス・ジャパン、レッドハット、日本HP、KVH、vArmour Networks、伊藤忠テクノソリューションズ、TISの展示ブースを紹介する。
今年で、日本では3回目を迎えるOpenStackに関するカンファレンス「OpenStack Days Tokyo 2015」が、2015年2月3日、4日に開催された。来場者数は昨年の3倍となる3000名を記録し、うち初参加者が8割近くに上るなど、OpenStackへの関心が年々高まっていることがうかがえた。
本稿では、基調講演の模様といくつかの展示ブースを紹介する。
基調講演に登壇したのは、OpenStack Foundation、COOおよび共同創業者のマーク・コリアー氏だ。
OpenStackプロジェクトの始まりは、2010年7月のことだ。「当時はコア開発者が25名いる程度の小さなコミュニティで、OpenStackの中核(コア)となる仮想マシン制御ソフトウエア『Nova』、そしてストレージ制御ソフトウエア『Swift』の開発が進められていた」とコリアー氏は振り返る。
もっとも、メンバーは少なかったがグローバルでの注目度は高かった。「OpenStack Summit」の第1回を開催すると、日本を含む世界各国から参加者が集まったという。現在、コミュニティメンバーもカンファレンス参加者も飛躍的に増え、巨大なコミュニティへと成長しつつある。
「OpenStackは人であり、コミュニティだ。みんなで協力してソフトウエアを開発し、どう使うかを考え、ベストプラクティスを共有する。それがOpenStackの魅力であり、多くの人を引き付ける要因になっている」。
一方で、コミュニティの急拡大は一つの課題をもたらした。それは、異なる背景を持つメンバーが増えたことで、ニーズが多様化したことだ。これは良い結果をもたらす一方で、プロジェクトの主たる方向性を見失いがちにする。
「そんなときに立ち返るのが、ミッションステートメントだ」。そう述べたコリアー氏は、5年前にOpenStackで何を目指し、何を達成し、どこへ向かうべきかを文言に残していることを明かした。その文言は、次の通りだ。
To produce the ubiquitous Open Source Cloud Computing platform that will meet the needs of public and private clouds regardless of size, by being simple to implement and massively scalable.
(パブリッククラウドおよびプライベートクラウドの規模にかかわらず、それらのニーズを満たすべく、導入が容易で大規模な拡張性を備えたユビキタスなオープンソースのクラウドコンピューティングプラットフォームを作ること。)
ミッションステートメントを遵守しながら、さまざまなコミュニティメンバーの多様な要件を吸収するには、どうすればよいのか。それには、「OpenStackクラウドの共通基盤であるコアに一層注力し、安定性と小型化を目指すことが鍵だ」とコリアー氏は言う。
「OpenStackは、Novaというコアを中心に、ストレージ制御の『Cinder』や『Swift』、データベースをサービス提供する『Trova』、HadoopやSparkなどをOpenStack上で実現する『Sahara』、DNS as a Serviceの『Designate』などのプロジェクトが発展してきた。これらのプロジェクトは『統合リリース(Integrated Release)』として相互運用が保証されている。そして、その周りには統合リリースになる可能性のある関連プロジェクトが無数に存在する。これらを総称して、私は『Nova and friends』(Novaと仲間たち)と呼んでいる。つまり、Novaというコアが堅牢化されれば、それと連携して動く統合リリースも安定する」。
そう提言するコリアー氏は、「コアを安定させ、統合リリースを含む各プロジェクトがミッションステートメントに沿った開発を進められるようサポートすることで、OpenStackはさらに進化できる」と述べる。
OpenStackコミュニティは、これまでミッション実現に向けた取り組みを続けてきた。その努力により、OpenStackを採用するパブリック/プライベートクラウドは徐々に増えている。特に、プライベートクラウドは「ビジネスの戦略的要素として捉える企業もある」とコリアー氏は言う。
例えば大手銀行のWells Fargoは、自社ニーズに合った自由なベンダー選定をかなえながら、同時に「Open API経由でアプリケーションに必要なリソースをプロビジョニングしたい」というアプリケーション開発者のニーズも満たすことができ、柔軟で弾力性の高い基盤を構築できるとして、OpenStackを評価しているという。
もちろん、課題は残されている。
例えば、ミッションステートメントにある「導入の容易さ」について、コリアー氏は改善の余地があるとし、docs.openstack.orgの見直しや昨年発表された「OpenStack Marketplace」の推進によって解決を目指しているという。OpenStack Marketplaceは、OpenStack対応のアプライアンスやサービス、価格などを一覧できる他、クラウドサービスがどのような製品やAPIで構成されているかも確認できるWebサイトだ。各製品の構成を分かりやすく示すことで、選定や意思決定を支援する。
また、同じくミッションステートメントにある「大規模な拡張性」についても非常に難しい課題とし、コミュニティでの情報共有の推進に取り組んでいると話す。
コリアー氏は今後について、OpenStack FoundationではOpenStackの在り方の再考、コアの再定義と小型化、ダウンストリーム製品のテストによる相互運用性の改善と情報公開などの展望を示した。「また、各プロジェクトが製品化や運用面でどの程度の成熟段階にあるか、他のソフトウエアとの相性はどの程度かといった情報をタグ付けなどで明示できるような仕掛けを検討中だ。これにより、OpenStackの経験値が浅いユーザーも、安心して取り組めるようになると思う。これは今年中に開始する予定でいる」
今年のOpenStack Summitは、5月のバンクーバーに続き、10月26〜30日に東京で開催される。「日本でのOpenStack Summitは初めての開催になる。OpenStackは多くの人の参加と貢献を歓迎する。今日会場に来てくれた方々と、また東京で会えるのを楽しみにしている」(コリアー氏)
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