レッドハットは2015年3月19日、国内で同社のコンテナ戦略を説明し、具体的な取り組みを発表した。「Red Hat Enterprise Linux 7.1」および「Red Hat Enterprise Linux 7 Atomic Host」を提供する一方、「認定コンテナエコシステムプログラム」の提供により、国内独立系ソフトウエアベンダーによる自社アプリケーションのコンテナ化を支援していく。
レッドハットは2015年3月19日、国内で同社のコンテナ戦略を説明し、具体的な取り組みを発表した。新製品としては、「Red Hat Enterprise Linux 7.1(以下、RHEL 7.1)」および「Red Hat Enterprise Linux 7 Atomic Host(以下、Atomic Host)」を発表。また、新たな取り組みとして、「認定コンテナエコシステムプログラム」の提供により、国内独立系ソフトウエアベンダー(ISV)による自社アプリケーションのコンテナ化を支援していくと発表した。
現在のレッドハットにとって、「コンテナ戦略」とは「Docker戦略」にほぼ等しい。一般企業が、Dockerを活用してコンテナ環境でアプリケーションを運用するための、包括的な環境やツールを提供することが目的だ。同社のプラットフォーム製品全般に、Docker活用を積極的に支援する機能を組み込むことで、「一般企業がDockerを使いたいなら、レッドハットのプラットフォーム製品(あるいはサービス)で環境を構築すべき」というイメージを定着させたいと考えている。
Windowsベースの業務アプリケーションを提供しているISVに対しては、「Dockerという、今後のデファクトスタンダードとなるアプリケーション配信手段を活用して、アプリケーションのクラウドネイティブ化を進めませんか、レッドハットがお手伝いしますよ」と働き掛けることができる。こうして企業向けアプリケーションのエコシステムを作り上げられれば、同社のプラットフォーム製品を一般企業が採用する理由を、さらに増やすことができる。
レッドハットの一貫したアプローチは、オープンソースプロジェクトで主導的な役割を果たしながら、これをエンタープライズレベルの製品・サービスとして、サポートとともに提供することにある。
Dockerに関しても、このやり方を完全に踏襲している。レッドハットは、Dockerプロジェクトにおいて、米Dockerに次いで2番目のコントリビュータであり、Dockerコンテナのオーケストレーション機能を開発しているKubernetesプロジェクトでは、これを主導する米グーグルに次いで2番目のコントリビュータだという。同社は、Docker関連技術の開発に深く関与しながら、自社の製品・サービスで、その利用を支援していこうとしている。
今回発表されたAtomic Hostは、Dockerコンテナ環境としての役割に特化させるべく、RHELを軽量化したもの。Kubernetesを利用することで、Dockerのオーケストレーションもできる。Atomic Hostは物理・仮想のどちらの環境でも稼働でき、アプリケーションやアプリケーションコンポーネントを、高い集約率で運用できる。特に仮想化環境では、一般的なLinux仮想マシンで複数のコンテナ化アプリケーションを動かすだけでも、集約率を高められるが、Atomic Hostの仮想マシンを採用すれば、物理サーバーのリソースをさらに効率的に活用できる。
「コンテナが仮想化を駆逐するという人もいるが、仮想化はコンテナと異なるレベルのアイソレーション(分離)を可能にする。当社は、仮想化が要らなくなることはないと考えている」と、米レッドハットのプラットフォームマーケティング担当シニアディレクターであるマーク・コギン(Mark Coggin)氏は説明した。いずれにしても同社は、物理・環境の双方で、Docker活用の多様な選択肢を提供できるようになった。
なお、Atomic Hostは、RHELのサブスクリプションに含まれる。従ってユーザー組織は、時と場合に応じてRHELとAtomic Hostを使い分けることができる。
さらにレッドハットは、PaaS基盤製品/サービスのOpenShiftで、DockerとKubernetesに対応しながら、コンテナ化アプリケーション構築・運用に必要な機能を包括的に提供していく。また、「Red Hat CloudForms」「Red Hat Satellite」といった管理製品で、Dockerコンテナを管理対象として追加していく。Satelliteでは、コンテナ化アプリケーションの社内レジストリ(カタログ)を作成する機能も提供するという。
一方、レッドハットはISV向けのパートナープログラム「Red Hat Connect for Technology Partners」を提供開始した。
このプログラムの参加企業は、Dockerベースのコンテナ化アプリケーションの構築と保守を容易に行えるツールとリソースを集めた「Red Hat Container Development Kit(CDK)」を利用できるという。構築されたアプリケーションは、レッドハットのプラットフォーム上での動作に関する認定を受けることができる。認定されたアプリケーションは、レッドハットが運営するコンテナレジストリ(カタログサービス)に登録され、レッドハットのコンテナ運用プラットフォーム製品を利用するユーザーが、安心して選択・利用できるようにするという。
レッドハット日本法人は、国内に約1000社いるといわれるISVの少なくとも半数に対し、これらのISVが提供している業務アプリケーションのコンテナ化、あるいはコンポジット化の手伝いをしていくという。このため、ISV専任の部隊を作るとしている。
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