このように、システムインテグレーションをアジャイルかつ高品質に変革するためには、インフラ運用のプログラム的な操作が欠かせません。しかし従来のサーバーやスイッチ、ストレージなどは、装置を目の前にしてコンソールから操作する必要がありました。ネットワーク越しに操作できる装置であっても、個々の装置を個別に操作しなければなりませんでした。そのためインフラをスピーディに整備したくても、できない現実がありました。
例えば、「他のサーバーから隔離されたネットワークに、4コアCPU/16GBのメモリを持つサーバーを2台接続し、それぞれ500GBの共有ディスクをマウントして、1台にはJavaとTomcatを、もう1台にはPostgreSQLをインストールしておいてください。ついでに日次でディスクバックアップもしておいてください」――こうした要求は、皆さんの職場でもよくあるのではないでしょうか。
このためには、他のシステムとの兼ね合いを調整しながら、さまざまな装置にさまざまな設定を施さなければなりません。設計から構築、検証までかなりの手間と人手が掛かり、プログラム的な操作をしたくてもハードルが高いものとなっていました。
しかしクラウド時代においては、この様相が一変します。クラウドとは、「共用の構成可能(configurable)なコンピューティングリソース(ネットワーク、サーバー、ストレージ、アプリケーション、サービス)の集積に、どこからでも、簡便に、必要に応じて、ネットワーク経由でアクセスすることを可能とするモデルであり、最小限の利用手続きで速やかに割り当てられ提供されるもの」と定義されています。
参考リンク
クラウド利用者の要求に応じて必要なリソースを必要なだけ素早く簡単に提供するために、クラウドは最初から全てのリソースをソフトウエアを通じて操作できるように作られています。この「全てのコンピューティングリソースをソフトウエアを通じて制御する技術やそのアーキテクチャ」がSDx(Software Defined Anything/Software Defined Everything)と呼ばれているものです。
また、このうちインフラを構成する主要部品である「サーバー、ストレージ、ネットワーク」をソフトウエアで制御する技術は特にSDI(Software Defined Infrastructure)ともいわれており、SDC(Software Defined Compute)/SDN(Software Defined Network)/SDS(Software Defined Storage)から構成されています。
以下では、SDC、SDN、SDSを順に紹介しましょう(なお、SDxやSDIなどの言葉は明確に定義されているものではないため、文脈によって微妙に意味が異なる場合があります。本稿ではこのように定義する、とご理解下さい)。
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