ネットアップは2015年6月30日、2016年度事業戦略を説明した。このなかで同社は、「売り上げにつながらなくても顧客を助ける」取り組みを進めていくと強調した。
「ストレージについてはいろいろ言われてきたが、過去3年間で国内売上は2倍になった」。ネットアップの代表取締役社長、岩上純一氏は2015年6月30日、同社の新年度事業戦略発表の場で、こう話した。
ネットアップは単一のOSに基づくユニファイドストレージ製品シリーズの「NetApp FASシリーズ」を中核に据えてきた。FASシリーズのOSである「clustered Data ONTAP」は、複数のきょう体を横に並べ、スケールアウトができる構造だ。また、スケールアップ、あるいはコントローラーの強化は、ディスクシェルフとデータをそのままで実行できる。さらに、このOSには「FlexArray」という、他社のストレージを配下に接続して、これらを論理的にまとめ上げる機能もある。clustered Data ONTAPをベースにした製品では、相互間で共通のデータ管理機能、例えばデータの遠隔複製などが使える。
そのうえで、フラッシュのニーズに対しては、FASシリーズをオールフラッシュ化した製品と、「NetApp EFシリーズ」を提供。一方で、ネットアップがこの1、2年力を入れているのはクラウドへの対応だ。Clustered Data ONTAPの機能を、Amazon Web Services上で仮想アプライアンスとして利用できる「Cloud ONTAP」、さらにこれに加えてクラウドサービスのオブジェクトストレージなどへのバックアップが行える「AltaVault」を提供するようになった。
岩上氏は、2015年以降にネットアップが取り組んでいるテーマは、「クラウド(データ)の仮想化」だと説明した。つまり、企業の社内、巨大クラウドサービス、一般クラウドサービスの間で、ニーズに応じたデータの最適な配置がいつでも行えるような、またデータ管理基盤を提供していくことだという。
日本では、社内ITシステムのクラウドサービスへの移行を急ぐ傾向が、米国などに比べて強い。だが、クラウドサービスを本格的に使っていくつもりでも、ITリテラシーの高い企業が取り組んでいるのは、クラウドネイティブなアプリケーションも含む、新たなエンタープライズアーキテクチャーの確立だという。日本におけるネットアップは、これを支援する、顧客に信頼されるパートナーになるために、努力しているとする。
そのために、これまで顧客の業務を理解でき、データ管理とともにアプリケーションまでを提案できる営業システムエンジニアを増強し、ハイタッチの活動を強化してきたといい、今年度も営業SEを20%増員するという。また、今年度はハイブリッドクラウドを推進し、データセンターアーキテクトという職種を新設する。
「自社の売り上げにつながらなくとも、顧客企業のIT担当者が、社内に貢献できるような提案をしていく。弊社は国内で、『働きがいのある会社』ベスト10に5年連続ランクインしており、米国ではトップを争っているが、こうした取り組みも国内企業に積極的に紹介している。また、顧客のためになることをやるという文化が、働きがいのある会社であることにもつながる」(岩上氏)
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