さて、ツールには3つの分類があると分かっていただいたところで、どのようにツールを選定すればよいのかについては、誰もが悩むところだと思います。その理由はいくつかありますが、その中でも大きな理由の一つが、「違いが分からない」ということです。
ツールを単純に機能で比較しようとした場合、ほとんどの人は、
以上の3点しか確認しません。
その結果どうなるかというと、“機能が多くて安いもの”となってしまいます。ではどうすれすればいいのかというと、実はそんなに難しい話ではなく、次の2点を確認すれば、“はずれ”を引く確率は格段に下がります。
一つずつ、説明します。
システムを調達する際は、多くの場合、「やりたいこと」がイメージできているために、「やりたいことがどのように機能に実装されているのか」を確認しようとします。販売する側もそれを見てもらうために、「きれいな」デモデータを作って、「いかにデータを更新しやすい機能を実装しているか」「いかに見やすいインターフェースを備えているか」を見せようとします。
IT資産管理において、「やりたいこと」というのは、例えばハードウエアの管理やソフトウエアの管理、もう少し具体的に言えば、リモートコントロールであったり、管理に必要なスペック情報などの入手であったりすると思います。この他、ライセンスの過不足数の確認、棚卸しの効率化なども挙げられるでしょう。
しかしながら、これらの管理や確認方法、その目的の達成方法などが本当に具体的にイメージできている人は決して多くはありません。たいていは、ツールのうたい文句の機能を確認し、「なるほど、管理というのはこういうものか」と、ツールの機能から管理方法や確認方法などをイメージしている人がほとんどです。それでは、目的が後付けとなってしまいます。
大切なのは、管理目的を達成することです。そのために確認すべきこととは、ツールの機能の有無そのものではなく、その「機能を利用するために必要なものは何か?」を理解することです。
では「機能を利用するために必要なもの」とは何でしょうか? それは、その機能を利用するためのベースとなる正しいデータです。そして、そのデータは「誰が」「どのように」作るのかを確認することです。
どんなに便利な機能でも、データがなければ何の役割も果たすことはできません。例えば、目的を達成できるようなライセンス管理の機能を備えているとして、
ここで1と3に対して、ツールベンダー側が、どれだけ具体的で現実的な手順を示してくれるかがポイントです。ここでの答えが曖昧だったり、非現実的な手順しか出てこなかったりするようであれば、そのツールは導入すべきではないと判断すべきです。
この質問に対して納得のいく回答が得られた場合には、次に、そのツールを利用している顧客に実際に話を聞いてみます。
自社の管理目的を達成するために有益なツールかどうかを確かめる最も良い方法の一つは、同じ管理目的のためにそのツールを導入しているお客さまを紹介してもらい、直接話を聞くということです。これは、顧客との関係性を作ることがうまくいっていないツールベンダーにとっては、最も嫌な要求になります。
この要求に対して、「どんなツールを使っているのかは、お客さまが言いたがらない」とか「どんなツールを使っているかを言うのは、セキュリティ上問題がある」などと言って顧客を紹介しないベンダー担当者がいますが、これは「逃げろ!」のサインです。顧客との関係性をうまく築けていない(=ツールに満足している顧客が少ない)ということの証左ですので、少なくともこういうことを言う担当者はすぐに避けた方が賢明です。
同じ管理目的を持つ顧客を紹介してもらった場合には、必ず直接、当該顧客に以下の6点を確認してください。
ここまで確認できれば、そのツールはある程度期待できるものだと考えることができます。また、ベンダー担当者が「コンサルティングや成熟度評価の経験がある」という場合にも、具体的にコンサルティングをしたお客さまを紹介してもらうことが、それを裏付ける最も有効な方法ですので、試してみてください。
筆者も、お客さまから「ツールベンダーがプレゼンに来るのだが同席してもらえないだろうか?」と言われることがよくあります。ツールが組織に合致するかどうかを判定する上で、ツールにフラットな立場のコンサルタントにプレゼンに同席してもらい、ポイントを質問してもらうのは非常に有効です。ツールベンダーの中には、「コンサルタントが同席する」と聞くとプレゼンを取りやめるところもありますので、無駄な時間を削減する有効な方法にもなります。
なお、今回は参考までに、インベントリツールやSAMシステムを調達する際に求めることを推奨する機能をまとめた「SAM BIBLE SAM支援システム構築推奨機能Ver.2.10」をダウンロード提供しますので、ご興味がありましたらご参照ください(3ページ、末尾のダウンロードボタンをクリック)。
ツール導入について、最後は海外のツールと日本のツールの違いについて、少し触れておきたいと思います。
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