組織の重要な資産の一つである「データ」を支えるデータベースシステム。本特集ではハード面からデータベースシステムを最適化、高速化する手法を紹介。今回はフラッシュストレージの使いどころを探っていく。
組織の重要な資産の一つである「データ」を支えるデータベースシステム。特集ではハード・ソフトの両面からデータベースシステムを最適化、高速化する手法を紹介。データベース管理者が主導してデータ資産の価値を高める方法を考える。
今回は、そもそもフラッシュストレージを使うことで、データベースのパフォーマンスが改善するかどうか、その判断指針や注意点を二つの取材を基に整理する。
データベースシステム全体のチューニングとして、バッファやキャッシュサイズに関するパラメーターの調整、SQLチューニング、サーバーを構成するハードウエアコンポーネントの速度を調整する方法などがある。だがCPUの能力が高まり、メモリも大容量が搭載できるようになった現在では、ストレージI/O性能がボトルネックとなっている。その解決策として注目されているのがフラッシュストレージだ。@ITではこうした技術動向をくみ、データベースシステム高速化におけるフラッシュストレージの役割を紹介してきた。
本稿では、このトレンドを踏まえ、ヴァイオリンメモリ システムエンジニア本部長 森山輝彦氏へのインタビューと、2015年8月5日に開催されたネットアップによるフラッシュストレージに関する勉強会(ネットアップ システム技術本部 コンサルティングSE部 コンサルティングシステムエンジニア 岩本知博氏が解説)で得た情報から、適用の成功例や効果、選定時の注意点などを整理していく。
米国の市場調査会社、IDCによると*、グローバルでのフラッシュストレージ市場は、「2013年から2018年にかけて、46.1%という高水準で成長する」と予測されている。
* 『Worldwide All-Flash Array and Hybrid Flash Array 2014-2018 forecast and 1H14 Vendor Shares』(IDC、2014年11月発行、#252304)による。
こうした急成長の背景として挙げられるのが、「フラッシュストレージの低コスト化」だ。このトレンドは国内においても当てはまる。ストレージベンダー ネットアップの技術者である岩本氏は、同社の市場調査資料を基に、「2017年にはフラッシュストレージとハードディスクとのGバイト当たり単価は逆転する」と予測する(下図)。
この予測は、あくまでTLCとハードディスクドライブ(SAS)の価格比較であり、「SLCなどの価格はここまでは下がらない」。2018年以降も、ハイエンドエンタープライズシステムで多く採用されるSLC、MLCなどのGバイト当たり単価は緩やかに低下するものの、単純比較ではSASよりは高価な状況が続くと予想されている。
それでも、エンタープライズシステムへのフラッシュストレージ適用では、Gバイト当たりの容量単価だけではなく、サーバー集約やソフトウエアライセンス費削減などを含む「総コスト」で比較した場合には、優位なケースが増えつつあるという(詳しくは後述する)。つまり、総コスト面で考えると成果が見込めるケースが増えていることから、「次のストレージ選択の要件でフラッシュストレージを前提に検討する企業が増えている」(岩本氏)。
これを受けて、オールフラッシュストレージを検討・選択する企業も着実に増加しつつある。従来はフラッシュが高価だったことから、要所でのみフラッシュを使うハードディスクと「ハイブリッド型」のストレージ構成が主流だった。ただ、この場合、ハードディスクのデータを参照/更新する際にI/O待ちが生じることがあるため、不定期に処理負荷が高まったり、レスポンスが低下する“スパイク”が発生したりすることに課題があった。
無論、オールフラッシュにすればこうした課題は解消できる。だが、ユーザー企業にとっては「予算」という大きな制約がある。よって“苦肉の策”としてハイブリッド構成を採ってきた例が多かったのだが、フラッシュストレージの価格がこなれてくれば、この制約もなくなる。
これを受けて岩本氏は、「2017年以降、ハイブリッド構成を採用するメリットはなくなる。現段階からオールフラッシュストレージの選択を検討していくべきだ」と指摘している。
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