サービス名称や料金体系、利用方法や管理レベルなどが複雑に見える「Oracle Cloud」。今回は、データベースに携わるITエンジニアなら理解しておきたい「Oracle Cloud Platform」の中の「データ管理」サービスを整理します。
前回の記事では、オラクルのクラウド戦略や最近追加された新サービスについて触れました。今回は、その中でもデータベースに関するサービス群について整理していきます。
「Oracle Cloud Platform」のPaaS(Platform as a Service)ポートフォリオの中で、データベースに関するサービス群は「データ管理」のカテゴリに位置付けられています。これまで提供されていたサービスには、クラウドで利用できるOracle Databaseである「Oracle Database Cloud Service(以下、Database Cloud)」やバックアップサービスである「Oracle Database Backup Cloud Service(以下、Database Backup)」がありました。
2015年7月からはクラウドで「Oracle Exadata」が利用できる「Oracle Database Cloud - Exadata Service(以下、Exadata Service)」や「Oracle Big Data Cloud」が新たに追加されています。本稿を読み進める前に、呼称や内容などを整理しておきましょう。
オラクルが提供しているクラウドサービスやソリューションは広範に及びます。「IaaS(Infrastructure as a Service)」「PaaS」「SaaS(Software as a Service)」「DaaS(オラクルではDesktop as a ServiceではなくData as a Serviceを指します)」というように下から上まで(インフラからミドルウエア、サービスまで)カバーされており、プライベートクラウドやマネージドクラウドも含まれます。そのクラウドサービス全体の総称が「Oracle Cloud」です。
「Oracle Cloud Platform」はOracle Cloudが提供するサービスの一部です。Oracle Cloudが名称変更したものではありません。主にOracle CloudのPaaSやIaaSに位置するサービスから構成されており、ここにはERP(Enterprise Resource Planning:統合基幹業務)システムやHRM(Human Resource Management:人事管理)システムのようなSaaSは含まれません。とはいえ、SaaSはOracle Cloud Platformの上で稼働するサービスであるため、「どこまでが何か」と定義や切り分けを考え出すとややこしいですよね(そう思うのは筆者だけでしょうか)。
呼称や内容と併せて、まずはOracle Cloud Platform全般の料金体系を確認しておきましょう。
Database Cloudなどの「データ管理」サービスの料金体系は、「Metered(従量制)」と「Unmetered(定額制)」の2種類が用意されています。
従量制では事前に1年間有効の利用権を購入し、基本的に時間単位で課金されて消費していく仕組みです。iTunesカードのようなプリペイド式と考えると理解しやすいでしょう。利用権を使い切ったら追加購入もできます。基本的には時間単位で課金されるものの、CPU数やライセンスの種類によっては課金を消費するペースが異なります。一方、定額制は契約期間を設定し、期間中の月額料金を前払いして利用します。
継続的に利用することが決まっているサービスであれば定額制、どこからどこまでのサービスを利用するか決めかねているときは従量制がよさそうです。というのも、従量制では利用権(プリペイド額)の範囲内であれば利用するサービスを切り替えたり、追加したりすることが可能だからです。
この料金体系や利用方法について、オラクルでは「SaaSの場合は利用するサービスが明確だが、PaaSでは不明確なことが多い」ということを想定しているといいます。確かにSaaSだとERPや人事管理など業務が特定されるので、目的がはっきりしていますが、PaaSの場合は、その上で将来的にどのようなワークフローを回すかまでは明確でない場合もあるでしょう。
しかし、どのクラウドサービスでシステムを構成するかを考えると選択肢は多岐にわたります。「データベースをどう使うか」「バックアップも併せてOracle Cloudを使うか」などの検討要素がありますから、最適な形を見つけるまでは試行錯誤を必要とする可能性があります。
さて、ここからはデータ管理サービスについて整理していきましょう。
「Oracle Cloudでデータベースを使う」とき、どのようなサービスの選択肢があるのでしょうか。前回と同じ記者説明会で、日本オラクル クラウドテクノロジー事業統括 Cloud/Big Data/DISプロダクトマーケティング部 部長 佐藤裕之氏が解説しました。
データベースのサービスとしては「Database Cloud」と「Exadata Service」があり、下図の通り、それぞれを大まかに「規模」と「サービスレベル」で選ぶことができるようになっています。
実際にはこれらに加えて、Database BackupやBig Data Cloudを組み合わせることになるでしょう。
「Database Cloud」サービスは現在提供中の二つのサービスと将来追加される一つのサービスに分けられます。
現在提供中のサービスはスキーマ単位で利用できる「Database Schema Service(以下、Schema Service)」とデータベースインスタンス単位で利用できる「DBaaS(Database as a Service)」です。今後はこの二つに加えて、「プラガブルデータベース(PDB)」が利用できる「PDB Service」も追加になるようです。PDBは、「コンテナー」とともにOracle Database 12cで盛り込まれた概念です。スキーマなどの独立性を保ったまま統合が可能なデータベースの単位で、運用管理の単位であるコンテナーの上で自由に仮想的に統合したり移動したりといった運用が可能です。
種類が多くて混乱しそうですが、違いは規模と選択肢の幅です。実際にはOracle Cloudの管理画面からインスタンスを作るときに選ぶもので決まります。
「Schema Service」と「PDB Service」は一つのスキーマないしデータベースインスタンスを月単位で使用する定額制です。管理レベルはオラクルがデータベースを監視し、稼働状況を担保する「Managed Service」のみ、製品のエディションは「EE(Enterprise Edition)」のみと固定になっています。
一方のDBaaSではもう少し選択肢が広がります。データベースのインスタンスを月単位の定額制か時間単位の従量制で使用します。製品のエディションや管理レベルが「Managed Service」の他、DB管理操作が自動化できる「Automated」や自動化ツールが使えない「Virtual Image」が選べます。なお「Automated」も「Virtual Image」も、利用者には管理者権限が付与されます。
Database Cloudサービスでできることはオンプレミスにも対応するものがありますが、佐藤氏は「オンプレミスに比べてOracle Cloudならコストは35%削減、プロビジョニング工数は95%削減できるのがメリット」と説明します。というのも、Database Cloudサービスでは、既存のプロビジョニングのステップ数を大幅に簡素化しています。オンプレミスの環境では、プロビジョニングに約90ステップが必要ですが、Oracle Cloudでは5ステップのみ。時間にして30分程度で済みます。
「Database Cloud」よりも大きな規模で利用できるのが「Exadata Service」です。これは、オラクルのエンジニアドシステムズである「Oracle Exadata」をクラウドから利用できるサービスです。ソフトウエアスタックだけでなく、ハードウエアもオラクル技術で統合された環境をサービスとして利用できます。OCPU(Oracle CPU:Oracle CloudにおけるCPUの単位)ごとに月額料金が分かれており、「Quarter Rack」で14万米ドルからという料金体系になっています。
Oracle Cloudは急速にサービスの選択肢が広がってきました。今後オラクルはクラウドでどのような選択肢を出してくるでしょうか。
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