エンジニアがエンジニアとして生き残るためには、ビジネス的な観点が必要だ。ビジネスのプロである経済評論家の山崎元さんがエンジニアに必要な考え方をアドバイスする本連載。今回は社会人になってから大学院に通学したり、資格をたくさん取得したりするのはキャリアアップに有効か、また転職時に採用担当者からどのように見られるのか、などを「辛口」に解説する。
エンジニアが社会で生き抜くための考え方やノウハウを伝授する本連載。前回は、役職の役割と、エンジニアが管理職を目指すべき理由を解説した。今回のテーマは、「MBAなどの高い学歴や資格は、エンジニアのキャリアアップに役立つのか」だ。MBA、ビジネス系大学院というと自分たちとは関係がないと思う人もいるかもしれないが、IT系の資格全般にも当てはまる話なので、一つの考え方として参考にしてほしい。
近年、企業に勤めながら大学院に通学する人を多く目にするようになった。
筆者は、数年前まである国立大学の経営学部の社会人向け大学院で、資産運用に関する講義をしていた。いわゆる「MBA(経営学修士)」を取得できる大学院だ。受講生は金融関係の企業に勤める方が多かったが、中には技術職でありつつ専門とは別分野のビジネス知識を求めている方もいた。いずれにせよ「MBAを取得してキャリアの幅を広げよう」という希望を持っている受講生が多かった。
社会人を受け入れる大学院は、ビジネス系の学科ばかりではないが、本稿ではビジネスパーソンにより関係が深い、ビジネス系の大学院について書くことにする。
理系の学部・学科の出身者が多いエンジニアにとって大学院は、文系の学部出身者よりも身近な存在だろう。理系の学問は、専門によっては、せめて修士課程まで進んでいなければ一通りの専門知識を得たといえない分野がある。修士課程、博士課程と進み、大学などに職がある友人をお持ちの方も多いのではないだろうか。
さらに、理系出身者には経済学や経営学などに対する強い憧れが見られるように筆者は感じることがある。「ビジネスで成功するには、ビジネスに関わる学問知識が有効に違いない」と考える人がときどきいるのだ。
しかし、経済学・経営学といった学問は、技術職にとっての理系の学問知識ほど直接役に立つ知識にはなりにくいのが現実だ。
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