2015年10月30日に内閣官房内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)と在日米国商工会議所(ACCJ)が、学生や若手社会人に向けて開催したイベント「サイバー・ハロウィン キャリアトーク」の講演リポートをお送りします。
2015年10月30日、内閣官房内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)と在日米国商工会議所(ACCJ)が共催する「サイバー・ハロウィン キャリアトーク」が開催された。NISCや、米マイクロソフト、米フェイスブックらACCJ加盟企業に所属するセキュリティエキスパートたちが登壇し、学生や若手社会人に向けて、サイバーセキュリティ分野のキャリアに関する講演を行った。
開会あいさつを行った在日米国大使館一等書記官のキンバリー・バー氏は「サイバーセキュリティのキャリアフィールドは爆発的に拡大しており、セキュリティエキスパートの必要性は増すばかりだ」と述べ、セキュリティ分野の将来を担う若者たちに期待を込めた。
初めに登壇したのは、米マイクロソフト 上席サイバーセキュリティ戦略研究員のカヤ・シグリック氏。学生時代は国際関係論が専門で、ITやサイバーセキュリティに携わるようになったのは米マイクロソフト入社後だという同氏は、「サイバーセキュリティ分野にはさまざまなキャリアパスがあり、テクノロジ畑出身でなくても活躍の場がある」と述べた。とりわけ現在は、「専門知識を『翻訳』して関係者とコミュニケーションできる力」を持つ人材の重要性が増しているという。
シグリック氏は、近年のサイバーセキュリティ分野では、企業間、あるいは官民連携による標準策定やベストプラクティスの共有がますます重要になってきていると指摘。自社や政府におけるセキュリティポリシー策定などに携わってきた自身の経験も踏まえながら、「このような協力体制を築くためには、企業のエグゼクティブや政府関係者など、必ずしもテクノロジに精通していない人たちに、専門的な情報をかみ砕いて説明できる人材が求められる」とした。
また同氏は、2000年代前半以降のインターネット利用者の急速な増加や、地理的分布の変化に触れ、サイバーセキュリティ分野における国際協力の重要性についても主張した。「2025年には世界のオンライン人口は50億人を超えるともいわれる。データ量の増大やテクノロジの変化が何をもたらすのかはもはや予測できない。各国の政府や関連機関が国際的に協力し、情報共有や標準の策定を行っていく必要がある」(同氏)。
続いて講演を行ったインテルの常務執行役員、平野浩介氏は「IoTビジネスとそのキャリアパス」というタイトルで、IoTが生み出す可能性のあるキャリア機会について解説した。平野氏によれば、IoT関連のキャリアには「ビジネス志向」と「技術志向」の二つの方向性が考えられるという。
「IoTは夢のある技術だが、ビジネスとして成立するかは別問題。持続的なビジネスモデルの考案やコンサルティングなどには、ビジネス志向のプロフェッショナルが必要だ」(平野氏)。同氏によれば、IoT関連では「技術的な実現性」を検証するPoC(Proof of Concept)はよく行われているが、「ビジネスとしての持続性や投資対効果」を確かめるPoCは不十分であることが多く、ここに専門人材が入り込む余地があるという。
また、平野氏は台湾のレンタサイクルサービスである「YouBike」を例に挙げながら、「数百万人の会員を抱え、日に数十万件ものトランザクションが発生するようなサービスを運営するには、1社では追い付かない」とし、パートナー企業とのアライアンスを構築するスキルの重要性についても述べた。
一方、技術面では、コネクテッドデバイスが引き起こす「データ量の爆発」への対応に活躍の機会があるとした。平野氏によれば、2040年には44ゼタバイト(約470億テラバイト)にも達するといわれる膨大なデータに関連して、さまざまなキャリアが考えられるという。
「データセンターにおけるビッグデータ処理に加え、いわゆるエッジコンピューティングとよばれる端末側でのデータ処理技術に携わる道、あるいは、標準化やバンド幅の拡張に貢献するなど、通信技術に関わる道もある」(平野氏)。また、こうしたデータを有効活用するためのサービスの構築や、SDx(Software-Defined anything)などのインフラ構築に携わる技術者にもニーズがあるという。
さらに、セキュリティに関していえば、「これらEnd-to-Endの全ての分野でセキュリティが求められる」と述べ、そのキャリアの幅広さを強調した。
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