米オラクルのラリー・エリソンCTOが、同社の年次イベントで今後のクラウド事業の行方を確約する「Oracle Cloud、6つの設計目標」を掲げました。同時に発表された基幹製品「Oracle Database 12c」の次期バージョンのポイントと共に、そこにどんな狙いがあるかを振り返ります。
2015年10月25〜29日、米国サンフランシスコで米オラクルの年次イベント「Oracle OpenWorld 2015」(以下、OOW15)が開催されました。昨年(2014年)の“クラウドに本気(クラウド元年)”宣言から一年、2015年のオラクルは「クラウドの準備は万端、もう攻めるのみ」という意気込み、そして自社も変わっていくという姿勢がありありと見て取れました。
振り返るとオラクルはリレーショナルデータベース製品「Oracle Database」で発展し、オンプレミスでは覇者的な存在でした。それ故、これまでクラウドへの取り組みは後発と見られていました。しかしここ一年で、オラクルはクラウドプレーヤーとしての存在感をグッと増しました。SFA(Sales Force Automation)、HCM(Human Captal Management)、ERP(Enterprise Resource Management)、SCM(Supply Chain Management)といったSaaS(Software as a Service)型のクラウドアプリケーション分野では、Salesforce.comに次ぐ世界シェア2位の地位まで昇ってきています。
OOW15の基調講演では、同社会長兼CTOのラリー・エリソン氏が「クラウドへの転換とオラクルの方針」を熱く語りました。オラクルは、“全ての顧客を安全かつ確実にオンプレミスからクラウドへ導く”とする2025年までのビジョンについて、「顧客の事情を理解したオラクルにしか提供できない仕組みを持って実現する」ことがクラウド事業の方針だとし、OOW15では、それを実現する製品やサービスをたくさん発表しました。今、クラウドが世界を変える真っただ中にあること。そしてクラウドによって、顧客もライバルも自社もこれまでのやり方のままでは立ち行かなくなる可能性を強調しました。
コンピューティングも電気や水道、ガスのように、ユーザー自身が発電したり、水道管やガス管を整備したりする必要はなく、使いたいときに必要なだけ使えればいい。それに気が付いた企業からどんどん変革していっている──ということです。このSaaSビジネスは、これまでオラクルの顧客ではなかった中堅中小規模の企業を獲得できており、その割合は7割に上るそうです。
SaaSアプリケーションのビジネスを加速させるためにプラットフォームである「PaaS(Platform as a Service)」が必要であり、プラットフォームビジネスを行ったことでインフラストラクチャである「IaaS(Infrastructure as a Service)」として必要なものを理解できた──とエリソンCTOは説明します。それはハードウエア(SPARCプロセッサーやExadataなど)も、Oracle Databaseも、Javaもその一環です。グローバル規模で“クラウドの全て”を提供できる数少ないオールラウンドクラウドベンダーとして、クラウド一直線でまい進する姿勢を見せたということになります。
革新的なアイデアと行動力を武器に駆け上がるスタートアップ企業は、最初からクラウドコンピューティング技術の“いいところ”を効果的に使い、信じられないスピードであっという間にサービスを立ち上げます。
対して、オラクルの多くの顧客は、本番システムをオンプレミスで稼働させているが故、クラウドのメリットを理解しつつも、同様にというわけにはいきません。「ミッションクリティカル」と呼ばれる高信頼性、高可用性が求められる環境ならば、なおさらでしょう。
そのため、オラクルが提供するクラウドサービスは、オンプレミスと同様の「究極の性能」を目標にしています。そのクラウド対応の準備が、今回のOOW15でいよいよ「完了した」ということを示したわけです。
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