ABテストを利用したサイト改善の限界にぶつかっている人たちに向けて、リクルートグループ内で実践している改善ノウハウをお伝えする連載。今回は、中古車販売サイト「カーセンサー」を例に「検討フェーズ」を軸とした個別最適化やビッグデータ分析の有効な生かし方について解説する。
前回の『カーセンサー、ゼクシィのサイトが取り入れている「アダプティブUX」とは何か』までで、ABテストによる改善の有効性と限界、そしてその限界を超えるための「アダプティブUX」の考え方について紹介した。ここからの2回では、実際にリクルートマーケティングパートナーズのサービスにおいて実現しているアダプティブUXの具体的事例を紹介していこう。
今回は、まずカスタマーの「検討フェーズ」を軸とした個別最適化について紹介したい。
前回も触れたように、リクルートマーケティングパートナーズは、進学(リクナビ進学)、結婚(ゼクシィ)、自動車購入(カーセンサー)といった、いわゆるライフイベント領域をサービスドメインとしている。これらの領域はいずれも、下記の理由により、「カスタマーの検討期間が長期にわたる」という特徴がある。
カスタマーはすぐに意思決定するのではなく、数カ月から場合によっては1年以上かけて検討を進めていき、意思決定を行うのである。当然、最初から最後まで同じ行動を取るはずはなく、検討のフェーズによって、カスタマーの行動もニーズも次々に変わっていくことになる。そこに、フェーズに合わせた個別最適の可能性がある。
「カーセンサー」を例に取ると、自動車購入の検討期間は平均3カ月程度といわれるが、その中でも下記のように大きく三つくらいの検討フェーズに分かれている、ということが、カスタマー調査や行動分析から見えてきた。
例えば最初のフェーズに対しては、記事コンテンツやカタログサイトなど、個別のページを用意しているものの、こちらの希望通りにユーザーがそれらのページに訪れてくれるとは限らない。むしろ、どんな検討フェーズのユーザーであっても、トップページや物件一覧ページなど、同じようなページに訪れるのが現実である。おそらくこれは、どのサイトでも似たような状況であろう。
そこで、サイトに訪れたカスタマーの検討フェーズを何らかの形で判定し、個別に最適な導線設計を行うことが必要になる。
前回の記事で、ABテストを繰り返すと、「刈り取り」に特化したサイトになっていく、ということを書いたが、検討フェーズによるアダプティブUXは、こうした「刈り取り」型から一歩踏み出すためにも非常に有効となる。
ABテストによるサイト改善は、ユーザーの検討フェーズを考慮せずに、全ユーザーを対象に「その訪問におけるCVRをいかに高めるか」を狙うのに対し、検討フェーズに合わせた個別最適化ができれば、検討フェーズが浅い人に対しては、無理に短期的な訪問CVRを狙わず、検討フェーズを進めるような後押しをすることで、長い目で見たアクション最大化を狙うことができるのである。
言い換えれば、通常のサイト改善が「訪問ベースでのCVR向上」を志向するのに対し、検討フェーズによるアダプティブUXは「UU(ユニークユーザー)ベースでのCVR向上」を志向するといえる。
次ページでは、カーセンサーにおける検討フェーズによるアダプティブUXの具体的事例を二つほど紹介しよう。いずれも、先述した三つの検討フェーズがベースとなっている。
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