アクセンチュアは、Fintech投資に関する最新調査結果を発表した。アジア太平洋地域でのFintech投資は、2015年1〜9月で約35億ドルに達した。日本でのFintech投資も同期間で既に約4400万ドルに達している。
アクセンチュアは2015年11月25日、金融テクノロジー(Fintech:フィンテック)投資に関する最新調査結果「Fintech Investment in Asia-Pacific set to at least quadruple in 2015」を発表した。それによると、アジア太平洋地域でのFintech投資は、2015年1〜9月の9カ月間で約35億ドルに達し、2014年の約8.8億ドルから急伸した。
日本でのFintech投資も同期間で既に約4400万ドルに達しており、2014年度の5500万ドルに迫る。分野別にみると、決済業務が40%で最も高い比率を占め、次に融資業務の24%が続いており、従来銀行が独占していた領域での投資が大半を占めている。
同調査によると、2015年10月1日時点での投資件数は122件で、2014年の117件と比べて順当な伸びを見せた。投資金額では、2014年の8億7900万ドルに対して2015年は9カ月間で34億6400万ドルと、中国で相次いだ国内外向けの大型案件により、大幅に増加した。
同調査では注目すべき案件として、中国を本拠とするアリババグループホールディングスと関連会社「Ant Financial Services Group」によるインドのモバイル決済プラットフォームである「Paytm」への出資や、P2P(Peer to Peer)およびB to Cのオルタナティブファイナンス投資プラットフォームを開発する「Ping An Insurance Group」傘下のベンチャー企業「Lufax」による資金調達を挙げている。
日本でも、国内とアジア向けにP2P決済プラットフォームを構築する「エクスチェンジコーポレーション(ExCo)」による資金調達など、決済サービス分野でのFintech投資が見られるとしている。さらに、クラウドやブロックチェーン技術(ビットコインでも採用されている分散型記帳の仕組みと仮想通貨、暗号化された金融資産取引を支える技術)の分野についても、大きな関心が寄せられている。例えば、東京に拠点を置くクラウド会計・給与計算サービス「Freee」は、銀行口座とクレジットカードを自動同期させる自動オンライン会計ソフトの開発に向けて資金を調達した。また、日本を拠点とするビットコイン取引所「bitFlyer」は2015年、シードおよびシリーズAラウンドによって資金を調達した。
近年金融機関は、Fintechを業務効率化や当局規制の変化、新たな通貨への対応に活用しようとしている。アクセンチュアは、ブロックチェーン技術が、スタートアップ企業や銀行、投資家が注目する分野になると予想している。ブロックチェーンは単体の技術として、銀行やクレジットカード会社、クリアリングハウスが協力することで、安全で迅速な清算処理や、カウンターパーティーリスク削減、取引所要期間短縮による資本の最適化を可能とする。
またアクセンチュアは、Fintechに関する別の注目分野として、金融機関でのクラウド活用を挙げる。クラウド導入の機運が高まるにつれて銀行は、パブリッククラウドに格納可能なデータと、プライベートクラウドに格納すべきデータの選別を進めている。銀行は機密性の高い顧客データをプライベートクラウドに格納することで規制当局の要件を満たすと同時に、パブリッククラウドによる効率性や柔軟性、オンデマンド機能、コスト削減などのメリットを享受することが可能になる。この状況はFintech領域のスタートアップ企業にとって、クラウド関連の新しいサービスを提供する好機となっている。
さらに近年、大きく報道されている大規模な情報漏えいの影響もあり、2016年はサイバーセキュリティに対する投資が大幅に増加するとアクセンチュアは予測する。
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