米スキューチェインのカスタマーデベロップメントリード、トラビス・ギギー氏は、ブロックチェーン技術を活用した未来の商取引や貿易の在り方を実現しようと試みている同社の取り組みを紹介した。
現在、海外企業と何らかの取引を行う際には、「オープンアカウント」もしくは「信用状」という二つの方法がある。だが信用状取引には、「複雑で時間がかかり、しかもコストも高いという問題があった」とギギー氏。一方オープンアカウント取引にも、金銭の流れが見えないといった問題があり、銀行にはあまり好まれなかった。
「皆が不満を抱いていた」というこの状況を、スキューチェインはブロックチェーン技術を用いて解決したいと考えているという。つまり、ブロックチェーンを活用した「電子信用状」によって信用を担保し、何らかのシグナルを受け取ることをトリガー(=チェーンへのキーの追加)にして、公開鍵にサインされた状態で資金の移行を実施する仕組みだ。スキューチェインは、これを「BRACETS(Blockchian based Release og funds that Are Conditionally Key-sigend and Triggered by Signals)」と呼んでいる「モノの移動に伴う支払いを紙なしで、信用状よりも安価に、速く、簡単に実現する。安価で確実かつスピーディで、しかも透明性のある取引が実現できれば、売り手も買い手も銀行も、三方が幸せになる」(ギギー氏)
しかも、この仕組みではGPSやセンサーからの情報もトリガーとして活用できる。支払いのファイナンシングや、ジャストインタイムの在庫ファイナンシング、複数レイヤーにまたがるファイナンシングといった複雑な取引もプログラミングによって実現でき、全体として資金調達のコストも下げられるという。
ギギー氏は、スキューチェインのビジネスとは別に、「blockice」というイニシアチブの立ち上げ、コマース向けブロックチェーンの応用に取り組んでいる。「この数十年間、何度も試みられてきた『デジタル資産の移転』が、ブロックチェーンによってようやく可能になる」(ギギー氏)
本特集の次回は、銀行によるロボアドバイザーの取り組みについてのインタビュー記事をお届けする。
「Finance(金融)」と「Technology(技術)」を足した造語である「FinTech」。その旗印の下、IT技術によって金融に関わるさまざまな業務や処理を利便化し、ビジネスの拡大を図る動きが国内金融業界から大きな注目を浴びている。大手銀行からスタートアップまで「FinTech」という言葉を用い、新しいビジネスを展開するニュースが相次いでいる。言葉が氾濫する一方で、必要な技術について理解し、どのように生かすべきか戦略を立てられている企業は、まだ多くないのではないだろうか。本特集では金融業界がFinTechでビジネスを拡大するために必要な技術要件を浮き彫りにし、一つ一つ解説していく。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.