ブロックチェーン技術ベンチャーが注目を集める中、IT大手らも共同で技術開発プロジェクトを立ち上げる。TLinux Foundationが発表した「Open Ledger Project」ではブロックチェーン技術を基に、分散型台帳フレームワークをオープンソースで開発する。
Linux Foundationは2015年12月17日、ブロックチェーン技術に関する新しい共同開発プロジェクトを発表した。商取引を支える堅牢な業界向けアプリケーションやプラットフォーム、ハードウエアシステムの構築を目指すという。さらに、分散型台帳(分散レジャー:Distributed Ledger)フレームワークをオープンソースで開発し、その開発者を育成するとしている。
Linux Foundationによると、このプロジェクトには、米IBMや米インテル、米ヴイエムウェア、アクセンチュア、シスコ・システムズ、J. P. モルガン、ロンドン証券取引所グループ、R3の他、日本企業では富士通や三菱UFJフィナンシャルグループなど、主に日米欧のITや金融に関する合計20社が早期から関与しているという。
Linux Foundationは「OpenDaylight」や「Let's Encrypt」プロジェクトなどと同様の「Collaborative Projects」の一つとして、ソフトウエア開発プロジェクトのホストとして複数組織によるソフトウエア開発プロジェクトの運営を支援している。プロジェクト参加組織の多くがすでに、ブロックチェーン技術を応用した業界向けアプリケーションに関する研究開発活動に投資しているという。
こうしたP2P型の分散で信頼性のある取引や台帳記録などを実装しようという機運はビットコインに端を発している。ビットコインの基になったとされる論文では「ブロックチェーン技術」という署名の仕組みと「プルーフオブワーク」という、合意形成の仕組みが用いられている。分散レジャーはこうした仕組みで用いられる分散型の取引台帳のことを指す。分散レジャーの利点は、ものの追跡や取引を、大規模な中央サーバーやデータベースシステムなどを使わずに実装可能にする点にある。
Linux Foundationのプレスリリースでは分散レジャー技術の応用例として「企業は商品とその支払い状況を簡単に管理でき、メーカーはOEMや監督機関と生産記録を共有して、製品のリコールを減らすことができる」と示されている。
こうした技術に大手ITベンダーが触手を伸ばす理由としては、この技術を応用することで、顧客管理、台帳管理といったシステムの仕組みそのものを、P2Pネットワークの中に分散できる利点などが考えられるだろう。企業から見ると中央サーバーへの投資を削減できる可能性がある。先の記事で紹介したテックビューロのブロックチェーン技術実装「mijin」も、「2018年までに金融機関システムのインフラコストを10分の1未満に削減すること」を目標に掲げている。
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