東京高等裁判所 IT専門委員として数々のIT訴訟に携わってきた細川義洋氏が、IT訴訟事例を例にとり、トラブルの予防策と対処法を解説する本連載。今回も正式契約なしに着手した開発の支払いをめぐる裁判を紹介する。ユーザーの要請でエンジニアを常駐して設計まで進めた開発案件、「他社に発注することにした」はアリ? ナシ?
IT訴訟事例を例にとり、トラブルの予防策と対処法を解説する本連載。前回は、ユーザーとベンダーの間で、見積もり合意も正式な契約もないまま作業を開始したプロジェクトが中断した判例を取り上げた。
今回も、ベンダーが正式な契約書のないまま作業した例を紹介する。同じような事例で恐縮だが、それだけこういった紛争が多いということだ。
見切り発車で開発に着手しても、最終的にユーザーから発注をしてもらえれば問題はない。しかし、ベンダーが作業着手していることを知りながら(あるいは容認しながら)、ユーザーが別のベンダーに発注してしまう事例もある。
自社に発注があるものと信じて、人を投入し、時間もお金も掛けて作業をしてきたベンダーからすれば「ユーザーの裏切り」とも思える行為だが、ユーザーは「正式な契約を結んでいないのだから、自分たちに責任はない」と開き直る。
こういう場合、ベンダーは泣き寝入りするしかないのだろうか?
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