アナログテレビ(VHF帯)の跡地の1チャンネルから3チャンネルを利用する新しいデジタル放送「i-dio」はどのようなサービスなのか。視聴の方法などを解説する。
2016年3月1日に新しいデジタル放送「i-dio(アイディオ)」のプレ放送が東京・大阪・福岡で開始されたことをご存じだろうか。
i-dioは、2011年7月に終了したアナログテレビ放送電波(VHF帯)の跡地を利用する、スマートフォンやカーナビなどの移動体端末向けのマルチメディア放送である。アナログテレビ電波帯の1チャンネルから3チャンネルに相当する「VHF-LOW(V-LOW、帯域は18MHz)」を利用する。ビデオや音楽などを放送するものではなく、データパケットを放送するもので、放送を視聴するには専用のチューナーが必要となる。
ちなみに、4チャンネルから10チャンネルは自営通信(災害対策用)、10チャンネルから12チャンネルの「VHF-HIGH (V-HIGH、帯域は14.5MHz)」はNTTドコモのグループ会社であるmmbiが提供しているスマートフォン向け放送「NOTTV(ノッティーヴィー)」が利用している。ただしNOTTVについては、2016年6月30日に終了することが発表されている(「『NOTTV』サービス及び『モバキャス』サービスの終了について」参照のこと)。
NOTTVの場合は全国単一のマルチメディア放送であったが、i-dioの場合は全国7エリアのマルチメディア放送会社が地域ごとの特性に合わせた放送を行う。なお2016年3月に放送を開始したのは、「関東・甲信越」「近畿」「九州・沖縄」の3エリアのうちの一部である(「放送エリアマップ」参照のこと)。「北海道」「東北」「東海・北陸」「中国・四国」の4エリアについては、2016年3月時点では開業準備中となっている。
なお「i-dio」という名称は、「放送メディアが持つ、普遍的なidentity」「通信メディアが持つ、革新的なidea」という二つの要素を持ったメディアであるということにちなんで付けられたという。
i-dioを視聴するには、i-dio Wi-Fiチューナーもしくはi-dioチューナー内蔵のスマートフォン「i-dio Phone」か、自治体向けに提供されている防災ラジオ「VL-1」が必要になる。車載用のi-dioチューナー「TunerBox」の発売も予定されている。2016年3月時点では、i-dio Wi-Fiチューナーは一般向けには販売されておらず、無料モニターに応募して入手する必要がある(無料モニターについては「i-dio Wi-Fiチューナー無料モニター」参照のこと)。
i-dio Wi-Fiチューナー単体では視聴できず、スマートフォンに専用アプリをインストールして、チューナーとスマートフォンをWi-Fiで接続する必要がある(i-dio Phoneはi-dioチューナーを内蔵しているため、専用アプリのみで視聴可能)。iPhone向けに販売されているWi-Fi接続のワンセグテレビチューナーと同じような仕組みである。
i-dio Wi-Fiチューナーにはバッテリが内蔵されており、カタログ上は約6時間の連続使用が可能である。充電はmicro-USB経由で行う(満充電まで約6時間)。なお充電中、利用環境によっては充電器からのノイズによって受信感度が低下することがあるようだ。充電中に受信がうまくいかない場合は、充電中のUSBケーブルを抜いてみるとよい。
現在、i-dioで放送されている番組は、地域によって異なる放送会社が配信するものの、「TS ONE(音楽やニュース)」「Amanekチャンネル(車載端末向け音楽、情報)」「i-dio Selection(ジャズやクラシック、傑作の音楽)」「i-dio Creators Ch.(オリジナル映像)」の4チャンネルは共通して提供されている。これに近畿地方では「KANSAIチャンネル」、九州・沖縄地方では「Qリーグチャンネル(九州・沖縄のFM各局の人気番組)」が加わることになる。
各チャンネルでは、AM/FMラジオと同様、時間帯によってさまざまな番組が放送される。音楽だけでなく、動画配信や電子クーポンなどと組み合わせたサービスも予定されているということだ。放送は高音質で、音楽チャンネルの「TS ONE」では、AAC形式/320kbpsで放送を行っており、2017年には96kHz音源にも対応するとしている。なお放送の録音・録画は行えないようだ。
i-dioの視聴は、NOTTVと異なり、基本的には無料である(一部有料課金のサービスを行うことを検討中)。アプリのインストール時に性別や生まれた年などの入力・登録が必要になるものの、契約の必要はなく、インターネットへの接続も不要だ。
i-dioを視聴するには、前述の通り、i-dio Phoneを購入するか、専用のチューナーが必要になる。現時点では専用のチューナーは市販されておらず、無料モニターに応募してチューナーを入手しなければならない。将来的にはi-dioチューナーが販売されることになると思われるが、現時点ではすぐにチューナーが入手できず、視聴のハードルは高い。
またスマートフォンとi-dio Wi-Fiチューナーを接続する手順がiPhone(i-dio Wi-FiチューナーをWi-Fiアクセスポイントとして接続)とAndroid(Wi-Fiダイレクトで接続)で異なるなど少々面倒で、視聴可能になるまでに1分ほどかかる点など、不満に感じている人も多いようだ。今後、チューナーやスマートフォンアプリが改善されることで視聴環境が向上するものと思われるが、普及までの課題は多そうだ。
■更新履歴
【2016/03/23】「注意が必要なのは、micro-USBで充電を行っている間は、i-dio Wi-Fiチューナーが受信状態にならないことだ。」としていましたが、仕様上は充電しながら受信することも可能であるということです。それに合わせて記事を修正しました。
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