データセンターに訪れる“新たなステージ”の話SDN時代の幕開け(2)(2/3 ページ)

» 2016年04月11日 05時00分 公開

ストレージにも変革が訪れる

 さて、ここからはストレージに目を向けてみよう。ここまで説明してきたように、エンタープライズITの世界におけるサーバリソース管理のアーキテクチャが2000年から2010年にかけて劇的な進化を遂げたのに対して、ストレージ領域の歩みは非常に緩やかだった。

 ストレージ市場は年間200億ドルの規模を有する巨大な市場だが、そこで主に用いられていたテクノロジーは「Storage Area Network(SAN)」と「回転式ディスク」による標準的なアプローチだった。市場の大手であったEMC、ネットアップ、HP、IBM、デル、日立データシステムズ、富士通などは、7200RPM/10000RPM/15000RPMといった“回転数の向上“による段階的なハードウェア性能の向上と、「重複排除」「スナップショット」「クローン」「冗長化」「ディザスタリカバリー」といったソフトウェア要素による差別化などで競争を続けていた。

 これらの市場大手によるストレージ戦争は、毎年わずかなシェアを奪い、奪われを繰り返すいわば“塹壕戦”の様相を呈していた。

フラッシュストレージの登場

 こんなストレージ戦線の均衡は、IOPSの劇的な向上をもたらし、かつ価格破壊を引き起こした「フラッシュストレージ」の登場により崩されることになる。フラッシュストレージを市場変革の次のトレンドとして捕捉したベンチャーキャピタルの支援を受けたスタートアップが、その勢力を拡大し始めたのだ。

 これらのスタートアップの中でも初期のプレイヤーは、高価で高性能なフラッシュストレージと、安価でコストパフォーマンスが良い回転式ディスクをデータの性質ごとに使い分ける新たな「ハイブリッドアーキテクチャ」に賭ける道を選択した。その代表格がニンブルストレージであり、同社がハイブリッドストレージ市場のけん引役として躍り出るとともに、既存大手ベンダーは自社製品の開発、もしくは競合スタートアップの買収という形でそれぞれのラインアップを拡張することでそれに対抗した。

 また、他の何社かのスタートアップは、「オールフラッシュアレイ」というさらに大胆な賭けに出た。ピュア・ストレージなどがこのカテゴリーに該当するが、ここで重要なのはこうしたアプローチの種類ではなく、パフォーマンスを劇的に改善しつつ、容量当たりのコストも削減するという新たな世代のアーキテクチャが続々と登場した点にある。

ストレージにVMごとのポリシーを適用

 過去10年間における莫大な投資によりIOPS性能が向上する一方で、ストレージの世界とサーバ仮想化の世界には「LUN(Logical Unit Number)対VM」という根本的なミスマッチが存在していた。すなわち、ストレージにおける管理単位が従来通りのLUNであったのに対して、サーバ仮想化における管理単位がVMに変化したということだ。これに対して、始めは1つのLUNに対して複数のVMをプロビジョニングすることが標準的な手法となったが、その影響で仮想化環境におけるバックアップやリカバリー、マイグレーションといったストレージ運用が煩雑化してしまった。

 この問題を解決するためにヴイエムウェアが2015年にリリースしたのが「VMware vSphere Virtual Volumes(vVOLS)」だ。vVOLS APIに対応することで、ストレージ製品はVM単位の管理を実現できるようになった。現在では多くのストレージベンダーがvVOLSを活用できる製品を開発している。データセンターにおけるストレージシステムをVM単位で管理できるようになったことは、SDDC実現のためのもう1つの重要なステップとなった。

ストレージ戦争の余波――コンバージドからハイパーコンバージドへ

 ところで、サーバ仮想化の広範な普及は、ストレージなどの隣接するインフラ領域にも多大な影響を与えると共に、もう1つの反応を引き起こした。「コンバージドインフラ」の登場だ。中でも特に市場の支持を得たのは、ヴイエムウェア、シスコ、EMCによるコラボレーションであるVCEだった。

 「サーバハードウェア、仮想化ソフトウェア、ストレージおよびネットワークを統合したシステム」というVCEのコンセプトはユーザーに支持され、3社のジョイントベンチャーである同社は、5年のうちに10億ドル規模の売り上げと、フォーチュン500企業の75%に採用されるまでに成長した。

 このVCEの成功に続くべく、Nutanix、Simplivity、Atlantis Computingといったスタートアップや、ヴイエムウェア自身による「VMware Virtual SAN (VSAN)」などのハイパーコンバージド型システムが登場した。ストレージ共有型のコンバージド型システムをさらに発展させ、ストレージ内蔵型サーバを採用し、ストレージ仮想化技術を使うことで単一のストレージプールを実現するものだ。こうしてスケールアウト型のローコストサーバとローカルストレージに仮想化ソフトウェアをパッケージしたコンバージドアーキテクチャは、新たなマーケットを創出することに成功したのだった。

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