「OpenFlowの父」が語るVMware NSXの今後、オープンソース、最高の判断と後悔Martin Casado氏が、今だから話せること(2)(2/3 ページ)

» 2016年04月26日 05時00分 公開
[三木泉@IT]

ユビキタスなSDNに進化するVMware NSX

――ちょっとだけ技術的な質問をさせてください。2つのNSX、つまりNicira由来のNSXと、ヴイエムウェア由来のNSXの統合は、どのように進んでいますか?

Casado氏 どちらのNSXについても、大半の開発作業は過去4年の間に進められてきました。これを元に、「Transformers」と呼ぶ新たなアーキテクチャを構築していて、今年中にリリースします。リリースのタイミングは公開していませんが、もうすぐです。ベータ版を使っている顧客もいます。これが、VMware と他のハイパーバイザーを単一のコントローラーでサポートする、統合製品になります。

参考:

カサド氏に聞く、VMware NSXはどこまでオープンか

――その製品が出ると、VMware NSXは本当の意味でマルチクラウドであり、ユビキタスなSDNを実現する製品といえるようになるわけですね。

Casado氏 Big Switch Networksから来てもらったGuido Appenzeller(グイド・アッペンツェラー)氏が、マルチクラウドに力を入れています。Transformersを使うことで、Amazon Web Services(以下、AWS)、Microsoft Azure(以下、Azure)、VMware ESXiにまたがった接続ができるようになります。これは完全分散のコントロールプレーンです。AirWatchもサポートしていますから、モバイルデバイス、Azure、AWS、自社データセンターを、全て(同一の仮想ネットワークに)つなぎ込めるようになります。

 エンタープライズITは、メインフレームからクライアントサーバに移り、統合が進みました。その後、モバイルデバイス、Internet of Things、複数のクラウドサービスといった、多様性の時代を迎えています。顧客は多くの場合、自社のデータセンターを運用しながら、AWSやAzureを併用し、SaaSも使うようになりました。

 これらを全てつなぐものが必要です。ヴイエムウェアはこれを提供できる最適な立場にいます。特定のハードウェアや特定のクラウド、OS、アプリケーションに縛られていませんから、全てをつなぐことができます。NSXはそのための中核技術です。

――以前、キャンパスネットワークへのSDNにも興味を持っていると聞きましたが、今年実現しそうですか?

Casado氏 キャンパスネットワークについては、ビジネスを構築することが難しい部分があると感じています。キャンパスネットワークのビジネスをした人たちは、ネットワーク製品があまり頻繁に入れ替えられることはなく、販売サイクルも複雑なことを知っています。確かに多くの金融機関などから、VMware NSXをキャンパスネットワークに適用してくれという要望を受けています。しかし、そうした顧客も既存のスイッチベンダーとの関係などがあり(、簡単に導入するわけではありません)。私はいずれ、キャンパスへのSDN適用が進むと信じています。ただ、いつになるかは分かりません。

 私が研究開発予算を持っているとしたら、データセンター向け製品に資金を集中させます。結果として大きな収益につながることが分かっているからです。小さな市場に投資したり、投機的なことをするのは、いい考えではありません。従って、自社の販売面での主な対象であるデータセンターとSD-WANに集中します。

――SD-WANですか? ViptelaやVeloCloudが製品を出している意味での?

Casado氏 いえ、企業の支店を全社データセンターにつなげるユースケースに興味を持っています。まだ発表したわけではありません。

――では、例えば今年末には、VMware NSXの主なユースケースはどうなっていると思いますか?

Casado氏 先ほど言った、支店や遠隔拠点の接続は新しい展開です。ただ、主なユースケースは、データセンターにおけるセキュリティと自動化であり続けると思います。マルチクラウド間の分散暗号化通信は、非常に多数の顧客に活用してもらえる、新しい分野だと考えています。ただし、これもセキュリティと自動化のユースケースであることには変わりありません。

――とてもエキサイティングですね、Casadoさん自身も関わり続ける必要があるじゃないですか。

Casado氏 たからこそ(ヴイエムウェアを去るのは)とてもつらいのです。でも、これからもコミットしていきますよ。自分の子供のようなもので、学校に通う年齢になっても、たまには送り迎えをしなくてはと思っています。

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