最新の第6世代CPUのPCではWindows 7のサポート期限が短縮されるはずだったがキャンセルされ、元のサポート期限に戻った。だがCPUの種類によってはサポートされないOSもある。Windows 7/8.1のサポート期限を今一度まとめておく。
本記事は当初「最新CPUはWindows 10でのみサポート、Windows 7/8.1のサポートは早期打ち切りに」というタイトルで公開しておりましたが、Skylake搭載PCに対するWindows 7/8.1のサポート期間が変更されたので、その内容を反映して記事を更新しています。
Windows OSにはその提供時期に応じて「サポートライフサイクル」の期間があらかじめ決められており、その期間が過ぎるとセキュリティパッチなどが提供されなくなる。そのためユーザーは、サポートが終了するまでに次のOSへ移行するなどの対策を講じる必要がある。
サポートライフサイクルには、製品が発表リリースされてからほぼ5年間の「メインストリームサポート」期間と、サポート終了までの5年間の「延長サポートフェーズ」の2つのフェーズがある。延長サポートが終了すると、以後はパッチなどが一切提供されなくなり、安全にPCを使うことができなくなる。
具体的な延長サポートの終了時期は、Windows 7が2020年1月14日、Windows 8.1が2023年1月10日となっていた(Windows 8はWindows 8.1にアップグレードすることが条件)。現在Windows 7や8.1を利用しているユーザーや企業は、このサポート期限方針に基づいて、次期PCへの移行やリプレース時期などを計画していただろう。
ところが2016年の1月になって突然、ある特定のCPU(Intelの第6世代CPU、開発コード名Skylake)を使ったPCシステムに対して、この方針を変更し、サポート終了を「2017年7月17日までに短縮する」という発表が行われた。
この時点で、Skylake CPUやそれを使ったPCは販売開始から既に半年ほど経過していたため、該当するPCは、導入したばかりなのにサポート期間終了までわずか1年半となった。そのため、延長サポートの終了時期である2020年1月までWindows 7を使い、その時点で新システムへの移行を想定していたユーザーにとっては、大幅な計画変更を余儀なくされることになった。
だが以上の方針変更は早急すぎるという顧客の声などに応えて、その2カ月後、該当するPCのサポート終了を「2018年7月17日までにする」という変更(発表1からすると1年間の延長)が行われた。
その後、2016年8月になってサポート期限に関する方針変更がまた行われ、Skylake CPU搭載PCのサポート終了を「元々の延長サポート期限の終了時までにする」と発表された。これにより、Skylakeとそれ以前のCPUを区別せず、全て同じサポート期限が適用されることになった。
何度か方針変更があったものの、結局は「Windows 7やWindows 8.1のリリース当初から決まっていたサポートプランに戻る」ということである。ただし「CPUの種類(世代)によってサポートされるOSが変わることがある」のは注意する必要がある。具体的には、使用しているCPUに対して次のような区別を行う。
以上の発表内容をまとめて、Windows 7/8.1/Windows 10のサポートの終了時期などを図にすると次のようになる。
具体的には次のようになる。
■現行CPU搭載PCでWindows 7/Windows 8.1を使う場合
■次世代CPU搭載PCでWindows 7/Windows 8.1を使いたい場合
■現行CPU搭載PCでWindows 10を使う場合
■次世代CPU搭載PCでWindows 10を使う場合
サポート方針の変更が二転三転したが、結局、既に最新の第6世代CPU(Skylake)搭載PCを購入してWindows 7/8.1を使っている場合でも、以前の世代のCPUを搭載したPCと同じ期間だけサポートされることになった。
これにより、Skylake搭載PCだけ早期にリプレースしたり、Windows 10にアップグレードしたりする必要がなくなった。
Skylake搭載PCだけサポート期限が短縮されるため、PCベンダーによっては、旧世代のCPUを搭載したシステムを新たに販売するようなこともあった(次のリリース参照)。
執筆時点では、上記リリースのPCを選ぶ必然性は薄まった。だが前述の通り、Kaby Lake以降を搭載したPCではWindows 7/8.1がサポートされないことになった。そのため、リースアップや故障によってPCのリプレースが必要になった場合、Windows 7/8.1を使い続けるにはSkylake以前を搭載したPCを調達しなければならない。Kaby Lake以降も、上記リリースと同様に旧世代CPU=Skylake以前を搭載したPCが提供されることを期待したい。
なお、Skylake搭載PCにWindows 7をクリーンインストールしようとすると、デバイスドライバの不足により、うまくインストールできないことがあるので注意が必要である。詳細は次のColumn「SkylakeシステムへのWindows 7のインストールは難しい!?」を参照していただきたい。
IntelのSkylakeシステムでは、新たに「Intel 100シリーズ」のチップセットが使われているが、このチップセットにはUSB 2.0のEHCIコントローラが含まれておらず、代わりにUSB 3.0のxHCIのみが用意されている。このようなシステムにWindows 7をインストールしようとすると、途中でUSBデバイスやキーボード、マウスなどを認識できなくなってインストールが中断することがある。Windows 7のインストールメディアにはUSB 3.0のxHCIドライバが含まれていないからだ。
これを解決するには、DVDドライブを直接SATA経由で接続してインストールするか、USB 3.0用のドライバを組み込んだインストール用のUSBメモリを作成する、などの対策がある。具体的なインストール方法については次の記事を参照していただきたい。
Windows 10をインストールする場合は、このようなドライバの不足などの問題はほとんど起こらないので、新しいPCでは、やはり新しいOSを利用するのが望ましい。
マイクロソフトは、最新CPU搭載PCに対してWindows 7やWindows 8.1のサポートを短縮した理由を、先のブログで幾つか記している。
まず、先のブログページでは、「Windows 7 を最新のチップで実行すると、割り込み処理、バスのサポート、電力状態などの Windows 7 の想定環境をデバイス ドライバやファームウェアでエミュレートする必要があり、Wi-Fi、グラフィック、セキュリティなどの面で問題が生じます。」としている。
だが、方針変更はSkylakeシステムの発売から半年以上経過してから行われたため、既にWindows 7用に購入済みのユーザーも少なくなかった。本当に問題があるなら、Skylake搭載PCの販売前にユーザーに対して告知したり、問題を解消するようにシステム側で対応すべきことだ。
また「Skylake と Windows 10 を組み合わせると、Windows 7 PC と比較してグラフィック性能が最大 30 倍、バッテリー駆動時間が最大 3 倍に向上し、チップのサポートによる仮想化をベースとした Credential Guard によってこれまでにないレベルのセキュリティが実現されます。」ともしている。つまりSkylakeでWindows 7を使うと不具合が想定されるというよりは、Skylake搭載PCならWindows 10の方がその性能をより発揮できると想定し、誘導しているようにも見える。
だが、ノートPCユーザーでなければバッテリーは関係ないし、高いグラフィック性能は必要としない用途も多い。
Credential Guard(サインインに必要な特権情報を、OSカーネル内で高度に隔離する技術。Windows 10の新機能)に至っては、64bit版のWindows 10 Enterprise+ドメインのような企業環境でしか使えない機能である。個人ユーザーやSOHO、WindowsプリインストールPCを活用している中小企業にはあまり関係がない(通常、Enterpriseエディションは市販PCにプリインストールされない)。
Windows 10への無償アップグレード期間が終了した途端、サポート期間の短縮を止めて、元通りのサポート期間にするというのは、ユーザーに対してとても不誠実だろう。今後はこのような無理な予定変更(特に既存ユーザーにとっていくらかの不利益が生じるようなこと)は、その影響もよく考慮してから決断してほしいものだ。
■更新履歴
【2016/08/19】最新状況を反映して、内容を更新しました。
【2016/05/25】初版公開。
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