2016年5月18日から開催されたGoogle I/Oで、Android Studio 2.2 Preview 1が公開されました。本稿では、大きな機能更新があったAndroid Studio 2.2の魅力を解説します。
2016年になってAndroid Studioのバージョンアップが頻繁に行われています。
Android Studio 2.2は、2.0から2.1のバージョンアップのようなパッチの提供ではなく、プログラム全体が置き換えられます。2.1のプロジェクトが2.2でそのまま利用できる保証はありませんが、新規プロジェクトで2.2を利用するのはPreview版であっても検討に値します。それほどの改善がなされています。
まずは、Android Studio 2.0と2.1で機能改善についておさらいしておきます。
Android 2.0〜2.1での機能で特に大きなものは、Instant RunとAndroid NのJack Compiler&Java 8のサポートです。これらの詳細は下記をご確認ください。
Android 2.2 Preview 1では大きくは以下のような改善が加えられました。
以降、これらについて解説していきます。
Android Studio 2.2では、新たなレイアウトが追加されました。それがConstraint Layoutです。
このレイアウトは、従来は複数のLayoutをネストしなければできないような複雑な配置を簡単に生成できるレイアウトです。ウィザードで生成したActivityなどのデフォルトのレイアウトに採用されています。
Relative Layoutと似ている印象ですが、Relative LayoutがView同士の相対関係でレイアウトを構築するのに対し、Constraint LayoutはViewに制約を課してレイアウトを構築します。制約には以下があります。
ガイドラインは特に優秀です。全てのViewにデフォルトの余白が利用可能で、等間隔に配置可能です。また、複雑なレイアウトがフラットになることで、描画が高速になることも期待できます。
Constraint LayoutはAndroid 2.3以上と互換性のある新しいサポートライブラリに用意されていますが、Constraint Layoutを使用可能なLayout EditorはAndroid Studio 2.2 Preview以降です。
レイアウトエディタにもさまざまな改善が加えられました。
これまで複雑なレイアウトを構築するにはLayoutを入れ子にする必要がありました。Android Studio 2.2以降はConstraint Layoutを使用することで複雑なレイアウトをGUI上で簡単にフレキシブルに、しかもフラットに構築できます。
ここでは新しいレイアウトエディタについてConstraint Layoutを利用する前提で解説します。
通常のレイアウトプレビューの横に、Blueprintが追加されています。レイアウトの制約がひと目で分かるようになっています。プロパティも改善されていて、制約の詳細がひと目で確認できます。Viewに制約を課すにはViewをエディタ上でドラッグするだけです。所定の位置にドラッグすると、アンカーやガイドラインが表示され制約が課せられます。
さて、これまでの開発では、レイアウトを調整するのはGUIエディタではなくXMLエディタを利用することが多かったのではないでしょうか。
XMLエディタからプレビューが確認可能ですが、Constraint LayoutはXMLエディタで編集するには複雑過ぎること、GUIエディタが強力になったことから、XMLエディタの利用は警告を修正する用途ぐらいで抑えておくことをお勧めします。
上図はGoogle I/O 2016のプレゼンですが、XMLの直接編集が必要ないことが強調されています。
C/C++の実装をJNI経由で用いるプロジェクトにとっては朗報です。
これまではC/C++のデバッグはデバッグプリントを用いるぐらいしかできませんでしたが、Android Studio 2.2では、ブレークポイントを設定して、Javaと同様のデバッグが可能になりました。ウォッチポイントも利用可能です。
また、CMakeやNDKBuildのファイルをIDEに含め、IDEからビルドすることが可能です。Android Studioを用いたC/C++のデバッグが非常にはかどります。
Android Studio 2.1でEmulatorが刷新され、Android Studio 2.2では、そのEmulatorが実機よりも高速になりました。
これまではEmulatorは遅くて使いづらいものでしたが、Instant Runに加えAndroid Studio 2.2でFaster than Device、Sensor Controlsが加わり、今後は積極的にEmulatorを利用した開発が行えそうです。
グーグルが新興国市場を重要視しているためか、アプリサイズの解析ツールがAndroid Studio 2.2に搭載されました。これは、新興国市場では回線速度は速くはなく、またスペックが低い端末も多く、アプリのファイルサイズが大きいとダウンロードに時間がかかる他、実行速度にも影響が出やすいためです。
APKファイルサイズ解析ツールを使用すれば、上図のようにAPK内の何がどれくらいのサイズを占めているのかが簡単に把握でき、ファイルサイズを抑える際に役立ちます。
Android Studio 2.2には今回紹介した以外でも、さまざまな改善が加えられています。
上図以外には以下のような改善が加えられています。
今回は紹介しきれなかった「Firebase Test Lab」「Espresso Test Recorder」は、開発現場のこれまでのテストのプロセスが変わる可能性があります。Android Studio 2.2が正式版になったら、取り上げてみようと思います。
Firebaseについては、下記記事を参照してください。iOS向けの記事ですが、Firebaseがどいうものかのイメージがつかめると思います。
株式会社ゆめみ所属のエンジニア。Applet、デスクトップJava、サーバサイドJavaの業務開発を経て、ケータイJava、組み込みJavaから現在はAndroidを中心にJavaに関わる。他の執筆記事は「Androidで動く携帯Javaアプリ開発入門」「携帯アプリを作って学ぶJava文法の基礎」など。iOS開発もたしなみ、Java以外ではHaskellやC/C++、Luaを好む。
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