IT開発・運用に一層の柔軟性やスピードが求められる中、ストレージの在り方にもまた変化が求められている。そうした中で、オールフラッシュストレージをどのように使いこなしていくべきなのか。最後に@IT編集長の内野が司会役を務め、参加者から寄せられた疑問に答える形でパネルディスカッションが行われた。
Nimbleの川端氏は「大体、どのフラッシュも10万IOPSは出るようになっている。耐久性についても可動部品がない分、SSDの故障率はHDDよりも低い」とコメントした。ただし、「SSDも、セクターエラーなどの部分故障はある。そこも含めて分析し、対処していくことが必要だろう」と回答した。
ティントリジャパンの八木下氏は「ちょっと前までは、パフォーマンスや書き込み制限回数に関する質問が多かったが、最近はそうした質問が減っている。代わりに、仮想環境における運用や可視化にきちんと適用できるかといった、運用を想定した具体的な質問が増えてきた」という。そうした部分はツールを含めてソリューションとしてもカバーしていきたいとした。
EMCの山原氏は、ワークロードパターンに合わせた構成を見極めるため、まずは「サイジングツール」の活用を呼び掛けた。HPEの高野氏も、「パフォーマンスはワークロードによってかなり変わるので、まずはテストを実施してほしい」と回答し、さらに、「耐久性や上書き回数については、もうあまり気にしなくてもいい。フラッシュの容量が倍々になっていることを考えると、5年以上使い続けるのはナンセンス。むしろ、新しく買う考え方を採るのがいいだろう」と付け加えた。
再度、ティントリジャパンの八木下氏は「ここに登場したベンダーの皆さんが、『フラッシュファースト』を言うように、2016年現在、今後数年のトータルコストにおいてSSDはもうHDDを逆転している。それに重複排除や圧縮を活用し、どこまで行けるかということになるだろう」と述べ、さらに「いずれにせよ、今、見積もりを取らないのは損」と断言した。
オールフラッシュと並んで注目を集める「SDS(Software-Defined Storage)」については、まだ慎重な姿勢を示すスピーカーが多い。
EMCの山原氏は「SDSでは管理を自分でやる必要があり、障害時の切り分けが困難になるため、ある程度スキルがないと難しいだろう」と指摘。Nimbleの川端氏も「ソフトウェアとハードウェアが別々に提供されるため、何かあったときのサポートを考えておく必要がある」と述べた。
HPEの高野氏はフラッシュとSDSとの住み分けについて、「今は過渡期だ。しかし、今後はレイテンシを1つの指標とし、明確にすみ分けられていくだろう。2年後(2018年)ぐらいには、センサーから得られたデータをリアルタイムに分析して、他へ送り出すといった、超低レイテンシを前提としたフラッシュネイティブアプリが出てくるだろう。ぜひこうしたアプリを作ってほしい」と呼び掛けた。
逆に、フラッシュ化があまり向いていない領域はあるのだろうか。「Hadoopやファイルサーバなど、データ削減効果があまり効かないデータもある」(ピュア・ストレージ・ジャパン シニアシステムズエンジニアの岩本知博氏)、「仮想環境を想定してはいるが、ここはある程度以上の規模でないと難しい」(ティントリジャパンの八木下氏)、「バックアップのようなシーケンシャルな処理は、そこまで速くはならない」(EMCの山原氏)などがあるようだ。
こうしたワナにはまらないためには、HPEの高野氏が前述したように「どんなワークロードなのか、アプリケーションの要件をつかんだ上で導入しないと、思ったより速くならない……と嘆くことになるかもしれない。既存環境のワークロードを把握し、サイジングツールを使うべき」ということに尽きる。合わせて、運用やファシリティのコストも盛り込んで検討すべきだろう。
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