キーノート後半には、平野氏と東日本旅客鉄道(JR東日本) 取締役副会長の小縣方樹氏とのトークセッションも行われた。マイクロソフトはJR東日本のビジネスイノベーションの取り組みを、30年にわたってシステム面から支えてきたという。JR東日本のビジネスの第1の柱が鉄道事業だとすると、ショッピングセンターやホテルなどの生活サービス事業という第2の柱、Suica事業の第3の柱、車両製造事業の第4の柱など、新しいビジネスの開拓にも積極的に取り組んできた。そして、ビジネスの拡大に伴い、システムの数も1987年の3個から、2016年には972個にまで拡大したという。
小縣氏は「Windows 95はリリース後すぐに導入した。SQL ServerやMicrosoft Azureの利用も積極的に進めている。先日は短い時間だが、サティア・ナデラCEOと会談を持つ機会も得られた。マイクロソフトとはいろいろな面からご支援いただいている」とマイクロソフトとの関係を説明した。
小縣氏は2015年、世界1300の公共交通機関で作る国際公共交通連合(UITP)の会長に就任している。平野氏が公共交通機関の今後の展望について聞くと、小縣氏はUITPとして現在進めている取り組みとして「自動運転やシェアリングモデルなどのイノベーション」「鉄道やバスなどを組み合わせたドアツードアでの移動時間の短縮」「新しい交通機関との統合」の3つがあると説明。
「公共交通機関もイノベーションに向かっている。マニュアル(手動)運転から自動運転へ、所有から共有へという方向性は、自動車などで進められているイノベーションと同じ方向性にある」と小縣氏は説明。
その上で、小縣氏はイノベーションの考え方について「まずはコア事業での経営革新を常に推進することが大事。そこから、内部イノベーションと外部イノベーションを結合するオープンイノベーションを進める。それらが、新しいビジネスモデルの開発につながっていく」と解説。実際、同社のSuica事業は、まず「改札の自動化」というコア事業でのイノベーションに取り組んだことがきっかけになっている。これは、現在注力している「車両製造」や「海外鉄道事業」についてもいえることだという。
キーノートの最後で平野氏は、安心・安全を最重要視してきた企業でも、新しいさまざまな取り組みに挑戦し、デジタルトランスフォーメーションを成し遂げてきたことを強調。「地球上の全ての個人と全ての組織が、より多くのことを達成できるようにする」というマイクロソフトのミッションと、「革新的で、安心でき、喜んで使っていただけるクラウドとデバイスを提供する」という日本マイクロソフトのミッションを掲げながら「全社員でお客さまのデジタルトランスフォーメーションに貢献していく」と訴えた。
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