職人はコミュニケーションをとるのがうまいです。
一般的な職人のイメージは、「どちらかというと堅物で、コミュニケーションが苦手な人」ではないでしょうか。「自分、不器用ですから」と言った故高倉健さんのような印象かもしれません。
実は職人は、言葉によるコミュニケーションは苦手でも、「五感」を使ったコミュニケーションがうまいのです。
例えば、料理人や大工さんの仕事のすばらしさは、目で、耳で、舌で、鼻で、手で知らせることができます。口下手でも、料理がうまければそれでOK。それだけで、すばらしいコミュニケーションだと思いませんか。
また、職人は、顧客に最高のサービスを提供するために、相手の表情や声の調子から様子を読み取って行動を変えたり、最も良い状態で商品を提供するために、天候や状況に合わせて商品に加える手を微妙に変えたりもします。料理人や美容師さんがまさにそうです。凍えるような寒い夜、震えながら店に入ったら「暖かいスープをご用意しましょうか」とさりげなく言われたら、うれしいじゃないですか。
一方、エンジニアはどうでしょうか。特にシステム開発は、要件定義では言語化されていない顧客の要望をくみ取ったり、設計・開発では難しいロジックの実装方法を考えたり、トラブルが起こったときには、機器の音や熱、状況から原因を突き止めたりと、感性が求められる仕事です。
それだけに、職人になるためには、「見えないものを、見えるようにする」「伝わらないものを、伝わるようにする」努力が必要なのでしょうね。
職人とエンジニアの違いについて見てきました。
人は、今の仕事の延長で将来のキャリアを考えます。しかし、IT業界の流れは早いので、5年後すらもイメージしにくく、「将来、エンジニアとして働くことができるのだろうか?」と、不安になることが多いでしょう。
筆者もエンジニア時代は、5年後をイメージできず、「できれば、ずっと開発現場で働きたい」というイメージぐらいしか、持つことができませんでした。
今回、他の職人の特徴を見ることで、職人として生涯働くために必要なメンタリティや意識など、必要なことの一部が見えてきました。実際、ここに挙げたことは、私が生涯現役として働く上で、大切にしていることだと気が付きました。
今回挙げた職人の特徴はほんの一例です。きっと他にもあるでしょう。もし、あなたが、生涯「職人エンジニア」として働きたいのならば、他の職業の職人の特徴を見つけてみましょう。そして、その特徴を生かしてみてください。
そうすれば、これからも職人エンジニアとして働くことができるでしょう。
大切なのは、「なるほどね」で終わらせないことです。静かな場所に行って、コーヒーでも飲みながら、紙とペンを取り出して考えてみてください。
あなたの周りにいる、尊敬する「職人」を1人挙げましょう
その人の特徴や生き方を洗い出しましょう
エンジニアと比較し、生かせることがあれば取り入れましょう
しごとのみらい理事長 竹内義晴
「仕事」の中で起こる問題を、コミュニケーションとコミュニティの力で解決するコミュニケーショントレーナー。企業研修や、コミュニケーション心理学のトレーニングを行う他、ビジネスパーソンのコーチング、カウンセリングに従事している。
著書「うまく伝わらない人のためのコミュニケーション改善マニュアル(秀和システム)」「職場がツライを変える会話のチカラ(こう書房)」「イラッとしたときのあたまとこころの整理術(ベストブック)」「『じぶん設計図』で人生を思いのままにデザインする。(秀和システム)」など。
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