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» 2016年12月19日 05時00分 公開

ロボットにDeep Learningを導入して画像認識の精度が向上すると、どう便利になるのかロボットをビジネスに生かすAI技術(7)(2/2 ページ)

[神崎洋治,著]
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デモ展示でのPepperのディープラーニング

 「SoftBank World 2015」では、各社の展示ブースが設けられ、新製品や開発中の技術が紹介されていました。ソフトバンクは自社ブース内でPepperによるディープラーニングを使った画像認識のデモを実演していました。基本的には孫氏の基調講演で行ったものと同様ですが、実際に来場者がPepperに商品を見せて体験することができました。

 来場者は予め用意されたいくつかの製品からひとつを選んでPepperに見せると、その製品名等をPepperが音声で応えるというシンプルなものでした(そのデモではIBM Watsonとの連携はされていません)。

Pepperのディープラーニング (左)来場者が目の前に差し出した製品を判別し、製品名や製品の特徴を回答しているPepper。Pepperが見ている映像は後ろのモニタに映し出されている。
(右)Pepperにデモで認識させるために、ブースに用意されていた製品。菓子類や歯みがき剤、シャンプー、石鹸などが並べられている。Pepperに見せると製品名と特徴を解説する。

 前述のとおり、従来であれば製品の写真を様々な角度から撮って画像としてデータベース上に登録しておき、来場者が差し出した画像を検知して、全体像や特徴的なデザイン等、部分的にマッチしたものを該当製品として認識するというのが一般的なしくみでした。

 しかし、Pepperのデモで導入されているディープラーニングでは、商品の映像を認識させることによって自動的に「直線」を見分ける疑似神経細胞や「丸み」を見分ける疑似神経細胞など、いろいろな疑似細胞(形式ニューロン)がソフトウェア的に作られていき、原始的な(基礎的な)形状を見分ける疑似神経細胞を何重にも組み合わせた結果、直線と曲線、色の組み合わせ等から物質の「特徴量」を発見し、例えば「○×クリーン」のハミガキ剤だろう、これは「ワッフル」だろう等と識別できるようになります。もちろん、この解析作業にCGデータのような立体図面データが使われているわけでもありません。

 ディープラーニングをはじめとして人工知能技術の場合は、導入する企業が扱う商品やサービスに合わせて、適切な特徴量がとれるようにトレーニング(チューニング)を行っていくことで、解析や認識の精度(正解率)を上げられることが知られています。また、近い将来は実際にメーカーのホームページから製品の特徴などの情報を収集できる可能性もあり、そうなればロボットは自動的に商品の情報を学習していくので、店舗側の登録の手間も格段に少なくなることが期待できます。

 更に、光の反射が異なったり、てかり方が異なったりして、識別や解析に従来なら悪影響を与える変化も、ディープラーニングでは学習して対応できるようになるだろうと考えられています。

ロボットと画像認識

 ロボットにディープラーニングを導入して画像認識の精度が向上すると、どう便利になるのでしょうか。

 基本的な要素技術について言えば、コミュニケーションロボットにとって、画像と音声の認識や発話の精度はとても重要な鍵となるものです。ロボットは通常、入力用のキーボードやマウス、タッチ画面は持たず、ユーザとコミュニケーションをはかるためのインタフェースはカメラやセンサー、会話によるところが大きいのです。それらの技術が向上することはロボットの利便性や実用化に大きく関わってきます。

 何かを見せたり話しかけたりしても、いつも「ちょっとわからないなぁ」なんて回答を連発していたら興ざめしてしまい、話しかける人はいなくなってしまいます。一方、スムーズにロボットとのやりとりができれば、ロボットができることは大きく広がります。

 次に、もう少し視点をフォーカスしてみて、このデモの「モノを判別して商品の特徴を説明してくれる」機能そのものの利用法を想定してみましょう。

 例えば、大型玩具店のトイザらスや欧米の大手量販店等では、陳列されている商品の販売価格を顧客自身が調べるためのキオスク型(スタンド)の機械が設置されているのを見かけることがあります。商品のバーコード位置をスキャナにかざすと販売価格が表示されるものです。近い将来、バーコードを照らすのではなく、ロボットに商品そのもの、パッケージ等を見せることで商品名と販売価格だけでなく、商品の特徴を解説してくれたり、更にはオススメの商品を紹介してくれたりするといった、ロボット店員やコンシェルジュとして実用化されるかもしれません。

 また、その場合は、店舗が商品名と実売価格などの基本的なデータを用意する必要はあるかもしれませんが、画像の登録作業はPepperに差し出して見せるだけになったり、商品名の登録等も、あたかもヒトに教えるように、ロボットに口頭で行われるようになるでしょう。登録作業もロボットに依存する度合いが高くなるのです。

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