スペイン・バルセロナで開催されているOpenStackのイベント「OpenStack Summit Barcelona 2016」。初日の基調講演では、OpenStackの利用が一般企業の間で大きく広がってきており、導入の80%がテクノロジー企業以外であるとの調査結果が示された。
スペイン・バルセロナで2016年10月25日に開幕したOpenStackのイベント「OpenStack Summit Barcelona 2016」。初日の基調講演で、OpenStack Foundation COOのマーク・コリアー(Mark Corrier)氏は、OpenStackの利用が一般企業の間で大きく広がっていることを説明した。
新たな成熟段階に入ったと印象付けるかのように、ロゴを一新したOpenStack。451 Researchの調査によると、OpenStack導入の80%は非テクノロジー企業だという。1000 CPUコア以上の大規模な導入は、7割以上に達する。用途は、導入数の多い順に「インフラサービス」(64.7%)「NFV(Network Functions Virtualization)」(64.9%)、「ストレージ/バックアップ/アーカイブ」(61.3%)、「ビジネスアプリケーション」(59.5%)、「ビッグデータ分析」(58.8%)、「ソフトウェア開発」(58.4%)などとなっている。
これらのうち、OpenStackの用途として特徴的なのはやはりNFV、ビッグデータ、ソフトウェア開発(コンテナ)環境。コリアー氏は、OpenStackにおける各機能の進化、および複数の機能の連携によって、それぞれの用途における目的が達成しやすくなってきたことをアピールした。
コンテナについては、管理ポータルから、少ないステップで迅速にKubernetesのクラスタを構築し、さらにネットワーク構成を含めてアプリケーションを一括デプロイできるというデモを実施。
NFV関連では、通信事業者の求める99.999%といったレベルの可用性に対応する取り組みをデモで示した。
具体的には、OpenStackの障害原因分析を行う機能(Vitrage)、ポリシーに基づいてアクションを実行する機能(Congress)が、他の機能と連携して、通話サービスソフトウェアの本番系につながるケーブルが切られても、瞬時に待機系に切り替わり、通話が途切れないという内容。このデモには、OpenStackなどと連携してNFVのレファレンス実装を策定するOPNFVで、障害管理のフレームワークを構築するDoctorプロジェクトのリーダーを務めるNECの壬生亮太氏が参加している。
スペイン最大の商業銀行であるBanco Santanderは、OpenStack上にHadoop基盤を構築、ビッグデータを活用する取り組みを進めていることを説明した。1.8PBのデータを蓄積、不正取引防止、マネーロンダリング検知から、顧客のプロファイリング、アルゴリズム取引など、さまざまな用途への活用を進めているという。
背景には、「FinTech」という言葉に象徴されるような、金融機関のビジネスの大きな変化がある。
同社はITの基本方針として、APIを社内外に提供できるクラウドネイティブなアプリケーションの開発、ビッグデータ/リアルタイム分析技術の活用、オンプレミスインフラとパブリッククラウドの積極的な使い分け、そしてオープンソースの活用を定め、これに基づいてオンプレミスのITインフラにOpenStackを選択した。
なお、今回のサミットでは中国企業が存在感を見せている。
Huaweiに続き、China Mobileと99 CloudがOpenStack Foundationのゴールドメンバーとなった。8億3500万の契約者を抱えるというChina Mobileは、OpenStackを採用してアプリケーション投入サイクルを半年から1カ月に短縮、さらに2381行のコード、513のパッチをコントリビューションしたとして、スーパーユーザーアワードを受賞した。今回のOpenStackリリースNewtonには、23の中国企業がコントリビューションしているという。
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