AWS re:Invent 2016における発表を、勝手に予測してみたセールスフォースとの提携はIoT?

日本時間では11月30日に、Amazon Web Services(AWS)の年次カンファレンス「AWS re:Invent 2016」が開幕する。原稿執筆時点ではプレス向けの情報発信も全く行われていないが、今年はどんな発表やメッセージが考えられるか。筆者の勝手な予想をお届けする。

» 2016年11月29日 08時34分 公開
[三木 泉@IT]

 米国時間では2016年11月29日、日本時間では11月30日に、Amazon Web Services(AWS)の年次カンファレンス「AWS re:Invent 2016」が開幕する。原稿執筆時点ではプレス向けの情報発信も全く行われていないが、今年はどんな発表やメッセージが考えられるか。筆者の勝手な予想をお届けする。

1.これまで取り込みきれなかったオーディエンスおよび用途の取り込み

 これまでAWSは、「新しいITのあり方を主導するリーダー」として振る舞ってきた。その吸引力が衰えていないことは、AWSの売り上げの急速な伸びが継続していることでも伺い知れる。

 だが、特に一般企業のITニーズを包括的に取り込む、あるいはこれまで説得しきれなかったオーディエンスの支持を獲得するために、これらの人々に歩み寄り、「慎重に扱いたいアプリケーションやデータに関しても安心して扱えますよ」「その上で、新しいアプリケーションをAWS上で存分に動かせますよ」と言えればそれに越したことはない。

 このように、慎重な一般企業に対して歩み寄るべき時期が来たという考えが、特別対応をしてまでヴイエムウェアと組み、「VMwware on AWS」を発表したAWS側の動機だろう。

 そしてAWSの責任者であるアンディ・ジャシー(Andy Jassy)氏にあらめてこのことを質問すれば、「顧客の喜ぶことであれば、できることは何でもする」という答えが返ってくることだろう。

 今後AWSは、さまざまな分野あるいはレベルで、従来はリーチしきれなかったオーディエンスの獲得に向けた動きを強めていくことが考えられる。

2.セールスフォース・ドットコムとの新たな提携

 新たなオーディエンスを獲得するには、自社がリーチしたいオーディエンスを獲得している企業と提携するのが手っ取り早い。ヴイエムウェアとの提携を、このように表現することもできる。AWSが今年に入って協力関係を深めているもう1つの巨大エンタープライズITベンダーにセールスフォース・ドットコムがある。

 セールスフォースは、AWSを自社にとって優先クラウドインフラプロバイダーだと発表した。AIエンジンのEinsteinも、AWS上で動かしているという。だが、これではセールスフォースがAWSの顧客になったというだけであり、AWSがこれまで近寄り難かったユーザーや用途に直接リーチできるようにはならない。もう一段の深い提携が必要になる。

 日本では、AWSとセールスフォースが共同でHerokuを推進すると発表している。その際に、グローバルでも新たな提携があり得るとしていた。しかも今回のre:Inventで、セールスフォースは最高位のダイヤモンドスポンサーとなっている。何らかの大きな発表を期待したとしても乱暴ではないだろう。

 その提携の内容だが、筆者はHerokuに関する両社の提携に関する記事で書いたとおり、IoT関連ではないかと予想している。モノとのデータのやり取りやデータの蓄積と、ビジネスプロセスとを融合させた、エンド・ツー・エンドのIoTサービスだ。セールスフォースの顧客ができるだけ早くIoTビジネスを展開できるようにするためには、足周りの構築作業が、抽象化されなければならない。

3.新たなIoTサービスはAWS単独でも発表?

 上記のセールスフォースとの連携は、AWS単独で抽象化されたIoTサービスを提供した上で、深い統合を実現する最大のパートナーとしてセールスフォースを紹介することになるのかもしれない。

 現在、AWSはAWS IoTというサービスを提供しているが、その抽象度は高くない。IoTをやろうとする人たちは、結局AWSの関連サービスに関する知識を持たなければならない。IoTの仕組みを抽象的な形で構築し、利用できるサービスへの潜在ニーズは高いと考えられる。こうしたニーズに応えることが重要だとAWSが認識するなら、セールスフォースとの提携に限定されることなく、自社単独の新たな抽象化されたIoTサービスを提供しなければならない。

4.コンテナ関連でも抽象度を高めたサービス?

 抽象度つながりでいえば、AWSのコンテナオーケストレーションサービスであるElastic Compute Service(ECS)は、インフラ(仮想マシン)レイヤを完全に意識しないで済むものではない。

 とにかくコンテナベースのアプリケーション開発・運用環境が欲しい、他のことはできるだけ考えたくないという開発者に向けて、より抽象度を高めた(だがサーバレスほど抽象度の高くない)サービスを発表する可能性がなくはないのではないか。

5.AI/機械学習関連の次の手は?

 機械学習で、AWSはAmazon Machine Learningというサービスを提供している。一方、他のメガパブリッククラウドベンダーはAI/機械学習関連のサービスを急速に充実させてきている。例えばグーグルは、日本データセンターの設立に際し、筆者の質問に「データアナリティクス/機械学習が他社との競合における最大の武器だ」と応えている。

 中途半端なサービスでは、他社の後塵を廃するイメージが拭えないかもしれないが、AWSがこの分野で、できるだけ早く次の手を打つ必要があると考えたとしても不思議ではない。

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