プロジェクトが頓挫したので、18億円請求します「訴えてやる!」の前に読む IT訴訟 徹底解説(35)(1/3 ページ)

IT紛争解決の専門家 細川義洋氏が、IT訴訟事例を例にとり、トラブルの予防策と対処法を解説する本連載。今回は「基本契約」と「フェーズごとの個別契約」を結んでいたプロジェクトが頓挫した場合の支払いについて、判例を基に解説する。

» 2016年12月20日 05時00分 公開

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「訴えてやる!」の前に読む IT訴訟 徹底解説

連載目次

契約を「基本」と「個別」に分けるのはIT開発の主流

 IT開発プロジェクトでは「基本契約」と「個別契約」に分けて契約を取り交わすことがよく行われる。

 基本契約には費用やスケジュール、成果物の詳細は記さず、とにかく「開発全体を受注者であるベンダーに任せる」ことを記して締結する。

 個別契約では、基本契約で記した作業を分割し、おのおのの「費用」「成果物」「詳細なスケジュール」などを決める。ウオーターフォール型の開発であれば、「要件定義」「設計」「開発」「テスト」と言った開発工程ごとに契約を結ぶ例が多いし、アジャイル型開発ならば、「人事・給与」「生産管理」「販売管理」など機能ごとに契約を締結する場合が多いようだ。

 この方法には、それなりのメリットがある。例えば「要件定義してみたら、当初の予定よりも開発規模が膨らんだ」というような場合、設計以降の費用やスケジュールを要件定義終了後に行う個別契約であれば、既存の契約を変更せずに、次の契約を結ぶだけだ。

 開発中の契約変更は、ユーザーとベンダーの双方の大きな手間である。ときに「約束が違う」と紛争の源になることもあるため、「プロジェクトの状態を見ながら、順次契約を結んでいく」個別契約方式は、ある意味、安全な方式だ。

 基本契約があれば、「ユーザーとベンダーが、システムの完成まで責任を持って作業する」ことは約束される。

 個別契約だけであれば、要件定義終了後にベンダーが突然抜けてしまったり、逆にユーザーが次のフェーズを他ベンダーに発注して元のベンダーが困ったりする危険がある。しかし基本契約と併用することで、それらを防止できる。

 こうしたメリットがあるので、基本と個別に分けて契約を行う方式は、IT開発プロジェクトでは主流になりつつある。

契約は細かく分けよう(画像はイメージです)
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