積雪を溶かす熱い講座で情報セキュリティを学んだ2日間セキュリティ・ミニキャンプ in 北海道 2016レポート(2/2 ページ)

» 2016年12月20日 05時00分 公開
[谷崎朋子@IT]
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クラウド最新事情からインフラとセキュリティの今を考える

WHERE IoT基盤センター 仲山昌宏氏 WHERE IoT基盤センター 仲山昌宏氏

 「クラウドは登場してまだ10年程度。ベストプラクティスは目まぐるしく変わり、流行も含めて動きが速い。だから面白い」

 2日目の講座に登壇したWHERE IoT基盤センターのインフラエンジニアである仲山昌宏氏は、クラウド領域の楽しさについてこう語った上で、クラウド環境をめぐるインフラやセキュリティの最新状況について解説した。

 今やサービスの安定稼働や品質維持はクラウドで最適化しないと厳しい時代だ。「ペットのように1台ずつサーバに手を掛けるのではなく、家畜のように必要に応じて確保・削除するクラウド」の運用方法について、仲山氏は事例を挙げながら「Statelessサーバ(アプリケーションサーバ)とStatefulサーバ(データベースやログ)の責務を明確に分離し、前者は追加や削除しやすい状態で運用、後者は死ぬ気で守るなど、メリハリをつけて運用することがベストプラクティス」と結論付けた。

 そんなクラウド運用では、人間のミスやアプリケーションの脆弱性というセキュリティ上の課題が付きまとう。仲山氏は、これらに対処するには共通脆弱性評価システム「CVSS v2」による脆弱性の評価、最小権限の原則に基づく運用(ID管理など)、操作ログの記録・保管などが重要だとする。

 さらに講座の後半では、Infrastructure as Code(Terraformなど)、サーバ構成管理ツール(Puppet、Chef、Ansibleなど)、アプリケーションコンテナ(Docker)、アプリケーション開発PaaS(Heroku、Azure Web Appsなど)、サーバレスアーキテクチャ(AWS Lambdaなど)といったクラウド技術の変遷や最新事情を、具体例を交えながら詳説した。

 「クラウドの今を知るには、クラウドサービスの無料枠を利用して手を動かすのがいい。そして、勉強会やブログ、同人誌などでどんどん情報を発信してみよう」(仲山氏)

電子工作でハードウェアの面白さを体感

PDA「ザウルス」で採用されたマルチタスクOS「XTAL」や汎用組み込みLinuxなどの開発に携わる竹岡尚三氏 PDA「ザウルス」で採用されたマルチタスクOS「XTAL」や汎用組み込みLinuxなどの開発に携わる竹岡尚三氏

 北海道ミニキャンプ最後は、セキュリティ・キャンプ講師の竹岡尚三氏が組み込み系やモノ作りの楽しさを感じてもらう講座を行った。ハードウェアは、「Raspberry Pi 1」、USBカメラ、DCモーターなど。ロボットや制御システムなどのソフトウェアインタフェースを標準化した開発プラットフォーム「OpenEL」でモーターを制御しながら、顔認識などを含む総合的な画像処理ライブラリ「OpenCV」を使って、搭載カメラで認識した顔の相手を追尾するロボットを作る。

 最初に竹岡氏は、CMOSなどの各種回路を中心に、ロボット工作に必要な基礎知識を解説。その後、参加者は配線図を参考に抵抗やLEDをブレッドボードに配線し、「Lチカ」(LEDを光らせる)で動作確認を行い、竹岡氏のプログラミング解説に耳を傾けながらモーターを動かすところまで進めた。電子工作に慣れている参加者が不慣れな人たちを手助けする場面も見られるなど、低レイヤーで手を動かす面白さや難しさを各参加者が知る貴重な時間となった。

細かい配線図を見ながら抵抗などをブレッドボードに差し込む参加者 細かい配線図を見ながら抵抗などをブレッドボードに差し込む参加者

広大な北海道全域をカバーするための地域の取り組み

 今回のセキュリティ・ミニキャンプ in 北海道の開催を陰ながら支えたのは、ITイベントの開催や地域コミュニティー活動の支援などを行う一般社団法人LOCALだ。理事を務める三谷公美氏は、今回は企業や個人から協賛金を募り、道内参加者全員に交通費を全額支給することがかなったと話す。

 「北海道はとても広い。稚内から札幌までJRで5時間以上かかる上に、運賃は1万円以上する。参加してみたいのに交通費などの理由で諦める人もいたと思う。そうしたハードルを取り除くことができた」。

 参加者には、函館(JRで約4時間、運賃8830円)から参加した中学1年生の加藤周氏もいた。2017年のセキュリティ・キャンプ全国大会の参加を目標と話す加藤氏は、2015年は「U-22プログラミング・コンテスト」に出場。今はプログラミング言語SwiftでiPhoneアプリを開発するのに夢中だ。「ミニキャンプで学んだセキュリティの考え方や知識を生かし、アプリを開発したい」と抱負を述べる。

 もちろん、交通費支援だけがミニキャンプ成功の理由ではない。北海道の工業高等専門学校の教師陣が取り組みに賛同してくれていることも大きいと三谷氏は言う。「今回は苫小牧工業高等専門学校の先生が5人の生徒を引率して参加してくれた。本イベントはこうした先生方の理解や努力に支えられている。とても心強い」。

 地域事情を理解し、若者の知的好奇心を羽ばたかせるための支援を惜しまない。そうした陰の努力に支えられたセキュリティ・ミニキャンプ in 北海道の取り組みはこれからも続いていく。

参加者と講師陣集まっての記念撮影 参加者と講師陣集まっての記念撮影
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