計画から運用保守までを効率化――IBMが「IBM Watsonを活用した次世代超高速開発」を発表Watsonがアプリケーション開発を支援

日本IBMは2017年4月24日、「IBM Watsonを活用した次世代超高速開発」を発表した。アプリケーション開発の計画から運用保守の効率化を支援するという。

» 2017年04月24日 20時10分 公開
[中尾太貴@IT]

 日本IBMは2017年4月24日、プロジェクト管理とアプリケーション開発、アプリケーション保守の3つの領域で高速化と高品質化を“AI(Artificial Intelligence:人工知能)”/コグニティブ技術を使って支援する「IBM Watsonを活用した次世代超高速開発」を発表した。併せて、この次世代超高速開発環境をサービスとして提供するサービス「コグニティブPMO」と「統合リポジトリー&ツール」の提供を同日に開始した。

 IBM Watsonを活用した次世代超高速開発は、同社のコグニティブコンピューティング技術「Watson」をアプリケーション開発で活用して、短納期、高品質、低コストなアプリケーション開発を支援するというもの。昨今のアプリケーション開発は、非構造データの活用やアプリケーションの適用範囲が拡大している背景によって、その状況はますます高度化、複雑化している。一方、企業においては、品質のよいアプリケーションの迅速な開発を促進したり、働き方改革を背景に、開発者の労働環境を改善、改良したりすることが求められている背景がある。日本IBMは、IBM Watsonを活用した次世代超高速開発で、これら問題の解決を目指しているという。

日本IBM 専務執行役員でグローバル・ビジネス・サービス事業本部 クラウドアプリケーションイノベーション担当の山口明夫氏

 「これまで“高速開発”というと要件定義や設計、テストなど特定の分野を効率化する製品が多かった」と日本IBM 専務執行役員でグローバル・ビジネス・サービス事業本部 クラウドアプリケーションイノベーション担当の山口明夫氏は話す。IBM Watsonを活用した次世代超高速開発は、プロジェクト計画や管理、構築、保守、運用といった、アプリケーション開発の一連のフローをクラウド型のサービスとして提供し、いっそうの効率化を支援するのが狙いだ。

 IBM Watsonを活用した次世代超高速開発は、前述した2つのサービスで構成されている。1つ目はプロジェクトの計画と管理を支援する「コグニティブPMO」サービス。もう1つは、要件定義、設計、作成、ビルド、デプロイ、テストなどのアプリケーション構築と、アプリケーションの運用、保守を支援する「統合リポジトリー&ツール」だ。

IBM Watsonを活用した次世代超高速開発の全体像

プロジェクトの計画と管理を支援する「コグニティブPMO」

日本IBMで理事を務めグローバル・ビジネス・サービス事業本部 アプリケーション開発・保守推進の上坂高志氏

 コグニティブPMOは、自然言語を理解する「Corpus」(WatsonのAI知識ベース)を使い、IBMの持つこれまでの開発の経験と、ユーザー企業が登録する開発状況を分析し、この分析データを基にして情報の検索やプロジェクトの可視化、レポート作成、リスク予測など行うサービスだ。ちなみに、PMOとはProject Management Officeの略で、プロジェクト管理のための組織、チームのことを指す。コグニティブPMOは、その活動をコグニティブ=認知して自動判断できる機能を提供するという意味になるだろう。

 日本IBMで理事を務めグローバル・ビジネス・サービス事業本部 アプリケーション開発・保守推進の上坂高志氏は、「このサービスを使うことで、検索やプロジェクトメンバーへの質問などで解決していたアプリケーション開発での疑問をチャットBotに質問するだけで回答を得られるようになる。またアプリケーション開発の進捗(しんちょく)状況を集めてレポートを作成したり、過去のプロジェクトデータをAIが分析しアプリケーション開発で起こり得るリスクを予測したりできる」と話す。コグニティブPMOを使うことで、プロジェクト管理の効率化でき、管理に伴うコストを約30%削減できると日本IBMはいう。

アプリケーション構築とアプリケーションの運用、保守を支援する「統合リポジトリー&ツール」

日本IBMで技術理事を務めグローバル・ビジネス・サービス事業本部 アーキテクト統括の二上哲也氏

 一方、統合リポジトリー&ツールでは、設計情報やテストケースなどを収集分析する「統合リポジトリー」を活用してアプリケーション構築とアプリケーションの運用、保守を支援する。

 アプリケーション構築では、要件や設計仕様をデータとして統合リポジトリーに登録することで一元管理できるようになる。併せて、登録した要件や設計仕様間の整合性やトレーサビリティを自動でチェックするという。さらに登録した要件や設計仕様からソースコードを自動で生成したり、ビルドとデプロイを自動で実行したり、整合性の取れたテストスクリプトを自動で生成し、実行したりすることも可能だ。これらの機能を活用することで、アプリケーションをリリースするまでの期間を短縮できるという。

 「アプリケーションの運用、保守において、統合リポジトリー&ツールは、Corpusを活用して影響分析や障害予測を支援する」と日本IBMで技術理事を務めグローバル・ビジネス・サービス事業本部 アーキテクト統括の二上哲也氏は述べる。統合リポジトリー&ツールを使うことで、保守工数を削減できたり、影響分析の時間や障害の原因特定までの時間を短縮できたりするという。

 これまで、アプリケーションを変更する場合は、手作業でコードを分析して、影響範囲を確認しながらコードを書き換える必要があった。それに対し、統合リポジトリー&ツールがあれば、プログラム全体を可視化し、アプリケーション変更が及ぼす影響を分析するため、アプリケーション変更を迅速に対応できるようになるという。今後は、これまで蓄積された稼働実績や障害履歴のデータをWatsonが分析し、障害予測や障害の原因特定、アクション策定などの機能を提供していく予定だという。


 今後は、日本IBMは下記のリリースマップに沿って、Watsonが持つ他のAI技術と連携しながら、コグニティブPMOと統合リポジトリー&ツールの機能を拡充させていくという。

コグニティブPMOと統合リポジトリー&ツールのリリースマップ

 サービス利用料金は、システムに応じて個別見積もりとなる。参考価格として、コグニティブPMOはベースモデルが20万〜30万円/月(税別、以下同)、統合リポジトリー&ツールは数十万円/月とする予定だという。

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