マイクロソフトは、同社の年次開発者会議「Build 2017」で、開発者向けのクラウド新機能やサービスを多数発表。「Mac版Visual Studio 2017」や「MySQL on Azure」、大規模NoSQLデータベース「Cosmos DB」などがリリースされる。
米マイクロソフトは2017年5月10日(米国時間)、同社の年次開発者会議「Build 2017」で、技術者、開発者向けのクラウド新機能、ツール、サービスを多数発表した。
マイクロソフトのサティア・ナデラCEOはBuild 2017で、「ほぼ無限のコンピューティング能力を利用でき、データが爆発的に増大する今日の世界において、マイクロソフトはあらゆる開発者がインテリジェントクラウドとインテリジェントエッジを活用する新時代に向けたアプリケーションを構築できるよう支援することに力を注いでいる」と述べた。
発表の概要は以下の通り。
クラウドコンピューティングで得られる知見をエッジデバイスにまで拡張する「Azure IoT Edge」のプレビュー版、ビジネスの世界の洞察とデバイスの世界の洞察とを組み合わせられる「Microsoft Graph」、デジタルの世界と同じように「現実世界を検索できる技術」をリリースする。
パブリッククラウドの「Microsoft Azure(以下、Azure)」と、ソフトウェア開発環境「Visual Studio」の新たなサービスとツールを多数発表。これらは既存アプリのモダナイゼーションと、ほぼ全てのプラットフォームに対応したインテリジェントアプリの迅速な構築を支援することを目的に、機能がより強化される。
Azure Cosmos DBは、IoT(Internet of Things)、AI(Artificial Intelligence:人工知能)、モバイルといった、地球規模のクラウドサービスとデータ集約型アプリケーションをサポートするために一から設計されたNoSQLデータベース。高いパフォーマンスと耐障害性を備え、グラフを含むあらゆるデータタイプをサポートする。
マイクロソフトはAzure Cosmos DBを、「グローバルに分散したマルチモデルのデータベースサービスとして業界初」とうたう。保証されたアップタイム、スループット、データの一貫性、99パーセントの処理において10ミリ秒以下のレイテンシを実現できる水平スケーラビリティを提供する。開発者は、明確に定義された5種類のデータ一貫性と業界標準のNoSQL APIをサポートしつつ、全てのデータに自動的にインデックスを付与できるスキーマフリーのデータベースサービスによって、高い柔軟性が得られるようになる。
Azureで、オープンソースデータベースの「MySQL」と「PostgreSQL」サービスが提供される。これらはマネージドサービスとして展開され、ユーザーは運用管理や障害対応、バックアップなどを任せられる。データ維持と自動回復機能などを提供し、クラウドでのMySQLとPostgreSQL運用においても高い可用性とスケーラビリティを実現するよう支援できるという。
また、Oracle DatabaseやSQL Serverを利用するユーザー向けに、データベース移行を支援するサービスの初期プレビュー版も公開された。
「Azure SQL Database」には、SQL Serverとのインスタンスレベルの互換性を提供する「Managed Instance(プライベートプレビュー)」が提供される。Managed Instanceによって、SQL Serverと連携した既存アプリケーションからAzure SQL Databaseへの移行がさらに容易になるとしている。併せて、「Threat Detection」の一般提供開始と「Graph」のプレビュー版も発表された。
Mac版の「Visual Studio 2017」が提供される。開発者は、Windows環境とMac環境を横断してシームレスに作業できるようになる。Mac版の提供とともに、Dockerツール、Azure Functions、Xamarin.IoTサポートのプレビュー版も公開されている。
Windows Server Containerでは、ほぼ全てのタイプのコンテナがAzureで提供する全てのプラットフォーム上でサポートされる。例えばVisual Studioツールと、Docker Composeの「Service Fabric」を連携させ、Service Fabricへコンテナ化したアプリを展開することなどが可能になる。
マイクロソフトはこの他に、「Office 365」の顧客と開発者をより強く結び付けるための新たな計画も発表した。
1つ目は、開発者がOffice 365のチャットベースのワークスペース「Microsoft Teams」向けアプリを容易に開発し、公開できるようにしたこと。ユーザーはMicrosoft Teams向けアプリを容易に見つけられるようになり、開発者はアクティビティーフィード、Compose Extensions、Actionable Messagesにおける第三者の通知機能など、開発するMicrosoft Teamsアプリへ新しい機能を容易に追加できるようになった。
2つ目は、「Microsoft Graph API」のサポート。これには、SharePointとMicrosoft Plannerと連携するAPIも含まれる。Microsoft Graphは、人、会話、プロジェクト、スケジュール、プロセス、コンテンツといったOffice 365のデータを、それぞれの連携を分析した上で、開発者にアクセスを提供する。これで得られる洞察を基に、開発者はさらにスマートなワークスタイルを実現するためのアプリを開発しやすくなるとマイクロソフトは述べている。
3つ目は、データ連携の拡張性の向上。本番向けSaaS(Software as a Service)アプリケーションをAzure上でホストし、Azure Webサイトからサインアップしている開発者は、PowerAppsとMicrosoft Flowの標準コネクターを経由して、アプリのデータやワークフローを自動的に承認されたOffice 365ユーザーに拡張できるようになった。
マイクロソフトは、「人間の創造力をインテリジェント技術で強化し、クラウドとAIのユニークな組み合わせを通じて、全ての開発者にAI機能を提供する」というビジョンも示した。
新しいコグニティブ(認知)サービス、Microsoft Bot Frameworkにおけるプラットフォームの革新、ディープラーニングツールの進化、製品やサービスへのAIの継続的組み込み、Microsoft Graphが提供する高度な洞察獲得機能などによって、開発者に多くの機会を提供し、ビジネスに新たな成長シナリオをもたらすとしている。発表概要は以下の通り。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.