AI/コグニティブでビジネスを変革する開発者となるためには何が必要なのかIBM Watson Summit 2017(2/2 ページ)

» 2017年06月05日 05時00分 公開
[唐沢正和ヒューマン・データ・ラボラトリ]
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コグニティブ時代の開発は「技術をデザインする」ことがポイント

ジェナ 取締役 Chief Creative Officer 鈴木勝則氏

 次に紹介されたのは、ジェナの取締役 Chief Creative Officer 鈴木勝則氏。同社は、Watsonを活用したチャットbotサービス「hitTO」を提供している。

 ジェナは2006年に創業し、2009年からスマートデバイスアプリの開発事業に着手。現在は、AIやIoT、ロボティクスなどの先端技術にも積極的に取り組んでいる。その中で、Watsonを用いたソフトバンクの社内向けサービス「ソフトバンクブレーン」のUI/UXデザイン開発を担当。この経験を踏まえ、2016年から自社ソリューションとしてチャットbotサービス「hitTO」をリリースした。

 「さまざまなAI関連ソリューションの開発を通じて、課題を解決するのは最終的には人間の役割であることが分かった。そこで、hitTOでは、人間の課題解決をAIがサポートすることをコンセプトにサービスを開発した」(鈴木氏)

 具体的なサービス内容としては、知りたい情報や聞きたいことをテキストフィールドに口語で入力して送信する。これだけで、質問に対する最適な回答をWatsonが返してくれるという。ここで注目なのは、「質問を口語で入力する」点。「WatsonのNatural Language Classifier APIを活用することで、フランクな聞き方や曖昧な聞き方をしても、それに対して適切な回答を返すことが可能になった」(鈴木氏)

 またhitTOでは、テキストでの回答だけではなく、PDFやExcel、PowerPointなどの外部データやWebサイト、地図などさまざまな形式でのフィードバックにも対応。さらに、LINEやSkype、Pepperとのサービス連携も行っており、今後もさまざまなサービスと連携を広げていきたい考えだ。

 「コグニティブ時代に向けて、次世代デベロッパーにはどのような要素が求められるのか」とのテハダ氏の質問に対して、鈴木氏は次のように回答した。「コグニティブ時代では、ターゲットに対して最適な機能と体験をデザインする“UI/UX First”が重要になる。UI/UX Firstでは、単純に見た目をきれいにする、使い勝手を良くするだけではなく、『技術をデザインする』ことがポイント。先端技術を1つのツールとして捉え、顧客のビジネスの課題解決を図るために、さまざまなサービスや技術をマッシュアップしていくことが大切である」

 さらに、先端技術を活用して最高の製品を開発するためには、「素早く見せる」「素早く作る」「素早く試す」という3つのサイクルを回し、トライ&エラーを繰り返すことも重要なポイントだという。「最先端分野においては、何が正解なのか誰にも分からないのが現実。だからこそ、失敗を恐れず、何度もトライ&エラーに挑戦していく必要がある」(鈴木氏)

三菱重工グループの情報システム子会社が社内ハッカソンを実施した効果

MHI情報システムズ 事業推進部 技術・品質管理グループ 主席 沖健次氏

 最後にテハダ氏は、MHI情報システムズ 事業推進部 技術・品質管理グループ 主席の沖健次氏を紹介。同社は、2013年に設立した三菱重工100%出資のICT企業で、製品情報管理のPLM(Product Lifecycle Management)システムや生産ライン管理のMES(Manufacturing Execution System)、経営資源管理のERPシステム、顧客情報管理のCRMシステム、さらにはIoT、AIなどを活用し、顧客が抱える課題に対して最適なITCソリューションを提案している。

 MHI情報システムズは、三菱重工グループの情報システム子会社として、約4年弱ビジネスを展開してきたが、「今までは非常に保守的な事業体質だった」(沖氏)。こうした状況を打開するべく、Bluemixを利用した社内ハッカソンを実施。ハッカソンのテーマは、BluemixとPepperを組み合わせて、新たなロボティクスのアイデアを発案するもの。「このハッカソンを通じて、将来のイノベーションを起こすための人材育成を目指していく」(沖氏)

 ハッカソンの実施プロセスとしては、まず、全社向けに遠隔説明会を開催。その後、ハッカソンの本番実施に先立ち、テストも兼ねて支社単位のアイデアソンを実施した。社内ハッカソンを実施するのは初めての試みだったこともあり、まずは説明会を通じてハッカソンの趣旨や進め方について社員に周知を行い、全社的な合意を得るところからスタートした。

 いきなりハッカソンを実施しても、成功できるか不安だったため、簡易版のハッカソンとして支社単位でのアイデアソンを実施。アイデアソンには5支社が参加し、技術的な部分は抜きにして、純粋なアイデア勝負を行った。このアイデアソンが社内から好評価を得たことを受け、本格的にハッカソンの準備を進めた。「手探りでのスタートだった」と沖氏は振り返る。

ハッカソンのスケジュール

 また同社では、ハッカソンの本番実施前に事前勉強期間を設置。期間中には、「Pepperハンズオン」「Bluemixハンズオン」「Pepper+Bluemixハンズオン」の3回の勉強会を行い、PepperやBluemixについて、それほど知識がない社員でも同じスタートラインでハッカソンに参加できるように工夫している。

 そして、本番のハッカソンでは、各支社の代表チームが本社に集結し、業務時間の範囲で1日8時間、合計3日間のスケジュールで実施。最終日のプレゼン発表会には、社長と支社長も参加し、優勝チームを決定した。「最初の全社説明からハッカソンの実施まで、約4カ月間のプロジェクトとなったが、結果的に、経営層も含めた全社的なイベントとして大成功に終わった」(沖氏)

 今後は、社内ハッカソンを「スキル向上3か年計画」の中で展開していく計画で、2年目となる2017年は成長フェーズと位置付け、新入社員からもハッカソンの参加者を募り、新入社員教育につなげていくという。

 今回の社内ハッカソンにBluemixを活用した効果について、テハダ氏が問うと、沖氏は次のように回答した。「短期間でのハッカソンでは、発案したアイデアを基に、作って、失敗して、やり直すことを素早く繰り返す必要がある。Bluemixは、開発がしやすく、開発した後も調整が簡単で、すぐに作り直すことができる。この点で、Bluemixはハッカソンに適したツールであると実感した」

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