ソニー銀行の福嶋達也氏が、3年半にわたる同社社内システムのAmazon Web Servicesへの移行について、あらためて説明した。そのポイントは、IT運用の考え方をこれまでとは大きく変え、パブリッククラウドの特性を生かすことで、コスト効率をはじめとするメリットを得ようとしていることにある。
ソニー銀行は、2013年末より、帳票管理やリスク管理、管理会計などの周辺系システムと開発環境の一部、および一般社内業務システムを、ITコストの最適化と俊敏性の向上を目的として、Amazon Web Services(AWS)へ段階的に移行してきた。ソニー銀行執行役員(システム企画部担当)の福嶋達也氏は同社のAWS利用について、2017年5月30日、AWS Summit Tokyo 2017のDive Deep Dayで語った。
「3年半経ってAWSをどう思うかといえば、『なぜもっと早く使わなかったのか』というのが率直な感想。また、日常に溶け込んでいて当たり前過ぎる存在になっており、『どうですか』と言われても答えにくいくらいだ」(福嶋氏)
ソニー銀行では、2017年度末までに、一般社内業務システムおよび銀行業務周辺系システムのAWS移行を、概ね完了する見込みという。また、基幹系システムでのAWS採用の「可否」について、具体的検討に着手したと福嶋氏は話している。
ソニー銀行におけるAWSへの移行のポイントは、単に既存の社内業務システムや社内ITサービスをAWSへ動かしたということではない。IT運用の考え方をこれまでとは大きく変え、パブリッククラウドの特性を生かすことで、コスト効率をはじめとするメリットを得ようとしていることにある。福嶋氏は、AWSの機能や課金体系への継続的な最適化を進めてきたことを説明した。
個別のシステム移行事例で、福嶋氏が最初に説明したのは管理会計システム。ソニー銀行は2016年にこれをAWSに移行した。
従来オンプレミスでは、本番環境で「アクティブ/スタンバイ構成で」(福嶋氏、以下同)最低でも2台、加えてテスト環境で2台と、4台以上のサーバを運用していた。これをAWSでは、通常動かすサーバは1台とし、サーバがダウンした場合には即時に別のサーバで再起動する方式に改めた。これにより、サーバのハードウェアに加え、ソフトウェアのライセンスコストを、大幅に減少することができたという。
ただし、再起動型のHA(High Availability)によるソフトウェアライセンスコストの節約は、オンプレミスでもできるはずだ。ソニー銀行におけるコスト節約ためのもう1つの工夫は、「必要なとき以外はサーバ(仮想インスタンス)を止める」ということ。「周辺システムは年中テストしているわけではない」ため、必要なときだけテスト環境を起動する。さらに本番環境についても、「国内銀行なので夜間・休日はインスタンスを停止している。緊急でユーザー部門が使いたい場合は事前申請してもらうようにしている」という。
このシステムに限らず、ソニー銀行ではAWSに移行したシステム全てについて、それぞれの利用状況を監視し、稼働する必要のない時間帯は停止するようにしているという。一方、常時稼働する必要のあるシステムについては、事前に利用をコミットすることで割引の受けられる「リザーブドインスタンス」を、可能な限り利用しているという。
福嶋氏はまた、別の「節約テクニック」について、市場系リスク管理システムを例に説明した。
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