Nutanixが発表したクラウドサービスや多数の新機能をまとめてみたNutanix .NEXT 2017

Nutanixが同社イベント「Nutanix .NEXT 2017」で、クラウドサービス「Xi Cloud Services」と、同社プラットフォーム製品における多数の新機能について説明した。本記事ではこれらについて、それぞれの説明を最小限にとどめて紹介する。

» 2017年06月30日 18時43分 公開
[三木泉@IT]

 Nutanixは2017年6月29日(米国時間)、米ワシントンD.C.で開催した同社イベントNutanix .NEXT 2017で、同社プラットフォーム製品における新機能と、クラウドサービス「Xi Cloud Services」について説明した。本記事ではこれらについて、それぞれ説明を最小限にとどめて紹介する。

Xi Cloud Services

 「Xi」は「ザイ」と読む。Nutanixがデータセンターに配置するベアメタルサーバ上で「Enterprise Cloud Platform」ソフトウェアのフルスタックを動かし、IaaSとして提供。2018年第1四半期に、Google Cloud Platformのデータセンターでスタート。他のデータセンターでも提供する可能性があるという。課金形態はハードウェアに結び付かず、一般のIaaSと同様の従量課金。

 当初提供するのはディザスタリカバリサービス。VMwareの「Site Recovery Manager」のようなライブテストや手順を踏んだフェイルオーバー/フェイルバック機能を備えるが、追加のツール導入は不要で、手順も大幅にシンプル化されている。

 基本的には同一のプラットフォームを本番サイトとバックアップサイトで動かしている構成。このため、複数拠点に分散したEnterprise Cloud Platformの運用と同じ感覚で使える。このためディザスタリカバリ構成も対称的で、本番拠点とバックアップ拠点の本質的な違いはない。将来はディザスタリカバリから発展し、従量課金で使えるユーザー企業にとっての新たな遠隔データセンター拠点として、既存アプリケーションをXiに移行し、従量課金で使えるようになる。

Xiの最終的な目的は、既存アプリケーションの運用を変えずに、オンプレミスからクラウドへ移行できる選択肢を与えること

プラットフォームの提供形態

 Enterprise Cloud Platformによるハイパーコンバージドインフラの、現在における最小構成は3ノード。これを2ノードあるいは1ノードの構成にも対応、これによりエッジコンピューティングの役割の広がりを狙う。

 一方、純粋なソフトウェアライセンス提供の取り組みを強化、Cisco SystemsおよびHewlett-Packard Enterprise(HPE)のサーバを対象として、サブスクリプション形式ライセンスおよびEnterprise License Agreement(ELA)の適用が実現する。当然だが、CiscoとHPEの2社にまたがるサーバモデル間のライセンス移行も可能になる。

Nutanix Calm

 別記事ではCalmを「マルチクラウド管理ツール」と表現したが、Nutanixでは「アプリケーション指向の自動化ツール」という表現をしている。まずはオンプレミスのプラットフォームにアプリケーションを導入するために利用してもらいたいからだろう。

 CalmはCliQrに似た機能を備えていて、Nutanixの管理ツールPrismとのインタフェース統合が特徴。

 ユーザーはApp Storeライクな「Application Marketplace」で、使いたいアプリケーションをクリックし、導入先を指定すると、推奨構成で半自動的にこれをインストールできる。導入先の判断では、各種クラウドやNutanixのコスト、パフォーマンスなどの指標に基づく比較検討ができる。

「マーケットプレイス」で、「Microsoft VDI」を選択すると、このような画面が立ち上がり導入先を選ぶなどすれば仮想デスクトップを立ち上げられる

 アプリケーション導入先としては、複数ハイパーバイザー、およびAmazon Web Services(AWS)、Microsoft Azure、Google Cloud Platformといった複数クラウドに対応。Prismの他の機能を援用してその後もパフォーマンスなどを監視、稼働後の別プラットフォームへの移行もできるようになる。

パフォーマンス強化

 近い将来に提供開始のNutanixによるアプライアンス「NX9030」では、ストレージアクセスでNVMeおよびRDMAに対応。さらにAcropolis Hypervisor(AHV)ではアプリケーションとストレージ間の通信をより直接化する「AHV Turbo Mode」を新たに搭載。Enterprise Cloud Platform によるOracle Databaseのパフォーマンスは、2016年には物理サーバで8万IOPSだったが、上記の改善を通じ32万IOPSに向上したとする。

一方、GPUの仮想化に対応。デスクトップ仮想化の仮想マシンなどに論理的なアタッチができる。TensorFlowの利用ではGPUパススルーができるようになる。

ネットワーク関連の強化

 Nutanixは本格的なネットワーク運用の自動化に乗り出した。これまでネットワークの可視化にとどまっていたが、自動化機能が登場。新規ノードの立ち上げに連動して、トップオブラックスイッチにおける仮想ネットワークセグメントの構成や、負荷分散の自動再構成、ファイアウォールの自動再構成などができる。Arista Networksをはじめとしたサードパーティーのネットワーク/セキュリティ製品と連動、いわゆるサービス挿入ができる。

 マイクロセグメンテーション機能も加わる。コンセプトは、VMware NSXのような製品を必要とせずに、AWSの「セキュリティグループ」をより細かく運用するイメージで使えるようなネットワーク分割機能。仮想インスタンス間のネットワークフロー可視化に基づき、ホワイトリストの適用によって不要な通信を遮断するなどがシンプルにできる。

ネットワークの仮想化および細かな分割を、シンプルかつ安価に実現するのが目的

 パブリッククラウドとのVPN接続については、Aviatrixという企業と組んで、Enterprise Cloud PlatformからAmazon VPCへのVPN接続設定作業がシンプル化できることをデモした。

運用関連の強化

 データ運用関連で目立つのはレプリケーション機能の強化。次バージョンでは、「Near-Sync Replication」、すなわち、「同期に近いレプリケーション機能」を搭載し、1分単位の複製を実現する。これを15秒に短縮できる可能性もあるという。

 アプリケーションの移行については、ESXiの仮想マシンからAHVへの移行機能が既にある。さらに物理サーバや仮想マシン、パブリッククラウドで動いているSQL Serverを、アプリケーションレベルでAHVに移行するプロセスを、ウィザードで行える機能を提供。この際、データは自動的に暗号化する機能が加わる。

 また、インテリジェントな日常運用の自動化およびトラブルシューティング支援機能を強化するという。

 例えば各仮想マシンのパフォーマンスを時系列グラフで示すとともに、今後のトレンドを予測して表示。対処が必要な問題に発展した場合には、警告を発するとともに、考えられる根本原因を提示できるようになる。

 さらに、リソースを過大に消費している仮想マシンを別のノードへ移動する、特定クラスタにノードを追加する、などを自動的に行えるようになるという。

 リソース利用を効率化するためのアドバイスを提供する機能も加わる。例えばメモリや仮想CPUが必要以上の構成となっている仮想マシンを自動的にリストアップ、リソースサイズを自動調整するなどができるようになるという。

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