セキュリティ担当者が用いる「言葉」や「説明の仕方」にもまだ課題がある。医者が患者へ症状や治療方針などを説明する場合、専門用語をずらずら並べながら説明するのでは、患者はその内容が分からないために、治療方法への理解も、そして信頼も得られない。
同じような「ギャップ」が、セキュリティ担当者と経営層の間にも存在する。セキュリティ担当者は専門用語でまくしたてるのではなく、「自社の資産や顧客情報、評判にどのような影響があるか」を分かりやすい言葉で伝えなければ、経営層には届かない。改善度合いが分かる明確な評価指標を立てた上で、適切にツールや技術を使いこなして対策していくということになる。
最後にガイ氏は、先進的医療の目的は「病気や症状をどのように直すか」から、「たとえ病気になっても、どのようにフィジカルやメンタルを満足できる状態に保つか」へと変化していることも紹介。セキュリティ業界もそれと同じで、「“侵入されないようにするための脅威マネジメント”から、“リスクを可視化し、管理し、より安心できる状態を保つためのリスクマネジメント”へとフォーカスを変化させるべきだ」とガイ氏は強調した。これからのセキュリティ対策は、こういった「リスクにフォーカスしたアプローチ」が肝要になってくる。
基調講演では、アジア太平洋地域の各国が「Thailand 4.0」や「Singapore Smart Nation」といった形でデジタル技術を活用した戦略を進めており、ASEAN地域全体のサイバーセキュリティ強化に向けた「Asean Cyber Capacity Programme(ACCP)」といった取り組みが始まっていることへの言及もあった。
こうした取り組みの成果か、ITU(国際電気通信連合)が発表した「2017 Global Security Index」でシンガポールが1位に。また、マレーシアやオーストラリアもトップ10に入った。日本は11位だった。
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